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「メジャーレコード会社は、もう新曲を作るべきじゃない」〜音楽業界の"今"と"これから"

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年の瀬を迎え、様々な特番や音楽ランキングとを通して、この1年の音楽を耳にする機会が増えている。一方で、ミリオンヒットは少なくなり、かつてのような、老若男女問わず口ずさめる音楽が減ってきていることも事実だ。

そこには、どのような背景があるのか。また、音楽との接し方も、年代によって大きく異なっている。音楽を取り巻くこの複雑な環境に対し、関係者はどのように立ち向かって行けば良いのか。

その一つの解決策として、「CDショップ大賞」や「ミュージックソムリエ」資格などを通じ、リスナーと音楽を結びつける役割を担う人材を育成することで、再び価値を創出しようとしている音楽業界関係者たちがいる。「NPO法人ミュージックソムリエ協会」だ。今回、代表の鈴木健士氏に、音楽業界の実態と、鈴木氏らが育成を目指す「ミュージックソムリエ」について話を聞いた。【編集部:田野幸伸、大谷広太】

音楽業界の”政治”

—紅白歌合戦の放送がもうすぐですが、毎年、出演者や受賞者の顔ぶれに”政治色”を指摘する声もあります。

鈴木健士(以下、鈴木):NHKはディレクターがどんどん人事異動で替わるので、なるべく業界との癒着がおきないようになってるはずなんですけど、逆に経験がないディレクターが増えて業界政治が不慣れになって、全部上に任せているのかもしれません。

まだ紅白って地方営業に影響力がありますから、出られるか出られないかは大事なんでしょう。だけど、紅白はさすがにもうどうでも良くなってきましたね(笑)。

—昔の若手はレコード大賞を受賞すると泣いてしまって歌えない、という場面がよく見られたと思うのですが、最近ではほとんど見られません。アーティストから見ても、場としてのステータスが薄れたということはあるのでしょうか?

鈴木:レコード大賞こそ、どうでもいいと思ってるんじゃないですかね。誰それ?みたいな人が沢山出ますよね。それでも何となく、今年は去年よりは優秀作品が色々変わってきて、珍しいアーティストが出ているなと思ったりしましたけれども。ただ新人賞は毎度のことながら”持ち回り”ですね、完全に。

—ラジオの世界でも、例えば番組で放送する曲の枠が5曲分あるとしたら、3曲は”政治”で最初から決まっていたりします。聴取者に聞いて欲しい曲だけを放送することはできない。

鈴木:私どものやっている、「ミュージックソムリエ」資格(後述)の規約の中に、「レコード会社からの金銭的インセンティブをもらってレコメンドした際は資格を剥奪する」という項目があります。1度でもやったらダメですよと。

かつては一般のリスナーも、騙されることにある種の快感を覚えていたんです。パワープレイを何十回も聞いて「ああ、今コレが仕掛けられている曲なんだな。じゃあ聞かなきゃ」と動いた。雑誌でもテレビでもラジオでもそれが成立しました。しかし今は「ステマでしょ?」の一言で嫌われてしまう。

それを容認していたこと、そんなことやってるから音楽業界はダメになったんだという人たちもすごく増えてきています。

ただ、業界政治となると、いろいろな「言葉では言えない勢力」ってありますよね。そことの関わりは持ちたくない。事務所にケンカは売れないわけです。テレビ局にしろ広告代理店にしろ社員はエリートたちですよね。

僕なんて事務所のマネージャーから竹刀で叩かれるというような時代を通り越してきたので、脅しに対してはぜんぜん怖くないんです。だけど最近の人たちはそういうのを経験していないから、ちょっと怒鳴られるだけで萎縮してしまう。

結局、”飴と鞭”なんですよ。接待攻勢かけて、何かあった時は呼び出される。これを繰り返すと「もういいか」となる。

それが通じていた頃は良かったですけど、受け手側、視聴者側がそれをすべて見抜いて「こんなもんに何で興味を持てますか」と言い始めちゃった。だから一気に瓦解してきたんだなと思っています。

いまinterFMがやっている取り組み(ラジオに魔法をかけた100曲)なんかは、それに対するアンチテーゼですよね。自分の持っている番組で自分の作品はかけちゃいけないとか、そういう番組も出てきていると聞きますが。

—現場のディレクターも、レコード会社のプロモーターが事務所に怒られるのが可哀想だからオンエアしてしまう。「これはあの事務所の作品で、どうしても流さないといけない。頼む」と言われれば、「大物ゲストに出てもらうために貸しを作っておくか、そこそこ売れるだろうし、聴いている方もそこまで悪い気はしないだろう」ということになってしまうわけですね。

鈴木:それで売れて、商売が成立していた時代は良かったんです。だけど、もう”笛吹けど踊らず”。なかなか言いにくいことではありますが、日本の音楽出版社って本当に腐りきってるんです。

事務所が持っている音楽出版社は、自分のアーティストの作品を大事に二次使用して、いずれ他の人に歌わせてさらなるヒットを狙ったりします。そうじゃなくて、ただの利権でやりとりされている「出版権」というものがあるんですよ。ラジオでこれだけオンエアされたら、このうち何%はおたくの出版社に差し上げますよ、とかね。アーティスト達は何も知らされていない。どれだけ自分の貰えるべき権利を搾取されているのか。

テレビ局も同じですよね。どういうわけか大手広告代理店も音楽出版社を持って力を持つようになって、お金儲けの道具になっている。

だから昨日・今日で作詞作曲を始めたような連中にも曲を発注するんです。それで集まってきたカス曲の中から、売れそうなものを音楽も聞かないA&Rが決めているというのが実情なんです。そのため、しょっちゅう盗作騒ぎが起こるし、似たようなメロディばかりになってしまう。

—複雑ないわゆる”原盤権ビジネス”なんですが、そこが音楽業界の根っこというか、権利を持っているところが強いという構造がありますね。放送局が音楽出版社を持っていれば、自然と出演者のパワーバランスも変わってきますよね。

鈴木:番組に出るだけでCDの売り上げが変わるから、癒着が生まれてTVプロデューサーが億単位で着服するような事件が起きるんですよ。

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