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ホリエモンが語る刑務所からの"社会復帰"~堀江貴文×岡本茂樹対談

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「平成24年版犯罪白書」によると、同じ人間が犯罪を繰り返す再犯率は43.8%と過去最悪を記録している。こうした状況の背景の一つに、多くの受刑者が刑務所から出た後に就業の機会を得ることができず、経済的に困窮して「生きるために」再び犯罪に手を染めざるを得なくなる、という悪循環の構造がある。現在の刑務所の問題点や受刑者の更正のために必要なものについて、収監経験を持つ実業家の堀江貴文氏と立命館大学教授の岡本茂樹氏が話し合った。(構成:永田正行【BLOGOS編集部】)

刑務所は更生するための機関としては機能していない


大谷:今回のテーマは、「刑務所からの社会復帰」です。この問題について、法務省などにより住居の確保や就労支援といった対策もされているのですが、そもそもそういう実態があることを私たちは日常の中で認識していませんし、話をする機会もありません。

堀江さんは今年3月に出所され、現在はニュースやグルメのアプリの開発、宇宙事業などを中心に活動されています。一方、岡本茂樹先生は、刑務所での累犯受刑者の方のケアに当たられ、その実態もよくご存じです。まずは堀江さん、実際に刑務所の中を体験されて、どのように感じたかなどからお話いただければと思います。

堀江:「刑務所なう。」という本にほとんど書いてあるのですが、肝心のところは書けませんでした。何故なら、検閲が非常に厳しかったからです。僕が入所した時の長野刑務所の首席矯正処遇官が非常に厳しい人で、最初に釘を刺されました。「ノートの『宅下げ』はいけない」と。「宅下げ」ってわかりますかね?

僕は、刑務所の中でメルマガや書籍などの執筆活動をしていたんですね。それで、ノートを面会に来た人に渡したり、郵送で送付していたりするのですが、こうした行為を「宅下げ」といいます。ノートの宅下げは、私信を送るのと同じ効果を持つのでダメだ、というようなことを言われたのですが、OKの刑務所もあったはずなので、「あれ」と思いました。でも、反抗するとろくなコトがないと思って何も言わずにいたんです。それが入所から1年くらいたって首席処遇官が変わると、こうした締め付けがメチャクチャ緩くなりました。担当刑務官に相談したところ、ざっくばらんな人だったので、やってみたらOKだったみたいな感じでした。

受刑者の処遇などを規定する監獄法は、2001年に名古屋刑務所で起きた刑務官が受刑者の尻にホースを突っ込んで死に至らしめた事件をきっかけに、2006年に改正されました。改正された内容は、先進的というか受刑者の人権保護などが謳われていて、法律的にはかなりマシになったはずなのですが、実際の運用ルールは厳しくなりつつあるようです。

例えば、本の差入れは法律上制限がなく原則自由のはずなんです。それなのに、内部ルールで「1ヶ月1人あたり10冊まで」などと決まっている。言い訳なんでしょうが、検閲をする人員が足りないからと。

1人あたりというのは、受刑者1人あたりではなく、差し入れ人1人につき10冊までということです。なので、事実上、無限に差し入れできますが、最初の処遇官に言われたのは、「だからといって、何人もの差し入れ人から差し入れてもらったりするなよ」ということでした。適当にごまかしていましたが、要はそういう恣意的な運用がされているということです。

ただ、僕の場合は手紙や面会を通して、Twitterとかメールマガジンで発信し続けたことが影響したのかもしれませんが、比較的マシな方で待遇などもだんだん改善されたと思います。例えば、長野の冬はメチャクチャ寒い。外の温度はマイナス15度くらいで、北海道並に寒いにもかかわらず、1年目は暖房が入りませんでした。手がかじかんで作業できなくなると困るので、工場にはストーブがありますが、居室にはストーブがない。

「寒くて死にそう」とずっと手紙に書いていたら、次の年から暖房が極寒期の2週間だけですが、入ったんです。1年目は、65歳以上の高齢者は2枚だけど僕らは毛布1枚だけで、メチャクチャ寒かった。中にメリヤスっていうトレーナーのようなものを2枚重ねで着て、その上にパジャマを着て、靴下二重にしてなんとか眠れるくらい寒いです。2年目からは毛布が2枚になったので、靴下を脱いでも布団に入れるようになった。こういうのは主張したもん勝ちだなと思いました。

高齢者は極寒の中を行進させられるのですが、体調を崩して死んでしまう人もいたりします。体調が悪いなら、休んで病舎に入れば良いじゃないかと思うかも知れませんが、これは一番最悪なことです。病舎に昼間いると、ただ寝てるだけ。ラジオもつかないし、読書もできない。これは、メチャクチャ苦しい拷問みたいなことなんです。まだ、刑務作業をしていたほうが、ましです。

心臓が悪そうなおじいちゃんが、苦しそうにしていたので、「行かないほうがいいですよ」と休ませたら、そのまま見かけなくなって、1か月後くらいに担当者から「どうも亡くなったらしいよ」と聞かされて切ないなと思いました。

大谷:堀江さんは刑務所の中から書籍も出版されました。そういう中から情報発信したことの影響もあって、担当者や待遇に変化があった、という可能性はあるのでしょうか?

岡本:堀江さんが言ったから変わったということはないと思いますよ。2006年の法改正で、受刑者の人権などの必要性が叫ばれた結果、規則が比較的緩やかになりました。

それによって矛盾がでてきたのです。つまり、手紙の発信など受刑者の自由が増えてくると、管理がしにくくなるという矛盾です。自由の範囲を増やすことで、受刑者が規則に従わなくなるのではないか、意見を言ってくるんじゃないか、ということを恐れるのです。

刑務所が最も恐れるのは、受刑者が問題を起こしたり、外部にスキャンダルが出ることです。なので、法改正によって規則が緩くなる一方で、内部の統制は反比例するように厳しくなっている現状があります。

でも、こうした状況は担当者が代わると、ガラッと変わることがあるんです。なぜかと言うと、幹部になればなるほど、1~2年の周期で担当が変わるんですね。人間なら誰でもそう思うでしょうが、自分の任期中は問題を起こしたくないという心理が働きます。そのため、受刑者が問題を起こさないように、それなりの処遇をする。その一方で、自分の信念を貫こうとするような刑務官もいますから、受刑者に対する処遇がコロコロ変わるということがあるんです。刑務所や年度によっても受刑者の処遇が異なってくる、というのが実情ですね。

堀江:僕は処遇首席がかわったから待遇が多少良くなったんでしょうね。それは可能性としてはありますよ。

前任の人は、ペペさんなんかも嫌いだったみたいで、呼ばれませんでした。刑務所内にミュージシャンなんかが慰問に来た時、原則拍手しかできないんですけど、ぺぺさんの場合だけは、拳を挙げたりすることができるんです。「元気だせよ」という歌があるのですが、歌にあわせて拳を挙げるのがOKなんですよ。他の慰問の人には絶対無理なんですよね。

そんな風に、とにかく属人的でしたね。僕は刑務所内で「社長」と呼ばれていたのですが、少女時代などの韓流ミュージックが流行していたときに、同じ受刑者の人から「社長、少女時代呼んでくださいよ、慰問に」なんて言われて、頼んでみるか、といって手紙に書いたら、処遇本部というところに呼び出しくらいましたからね。僕はそこの呼び出し回数がメチャクチャ多かったんです。それで手紙を出されて、「なんだこれは。こんなこと書いちゃダメだ」みたいなこと言われて、「うわっ、めんどくさ」と思いましたよ。

これは過去にヤクザの親分なんかが自分の権勢を誇示するために自分の人脈を使って大物演歌歌手を慰問に呼んでいたことが問題視されるようになったという理由があるみたいですね。でも、どうやって決めているんですか。慰問する人の基準というのは?

岡本:幹部の好みかもしれませんね。

今、堀江さんが指摘されたことは、実は受刑者の社会復帰を考える際に非常に大きな問題をはらんでいます。「上司が替わるごとに規則が微妙に変わる」「それまではよかったことがダメになる」。こういう状態が続くと、上司の顔色をうかがいながら、生活しなければならなくなります。つまり、自主的な気持ちが抑圧されていくパターンにはまっていくのです。

受刑者が目指しているのは「早く外に出る」ことです。仮釈をもらいたい、仮釈をもらうためには、上の者に逆らわず、言われたことに従わなければならない。刑務官の言われたことにそのまま従わないと懲罰になってしまう。懲罰になるかどうかの基準も年度ごとによって異なるのであれば、それにあわせて自分を殺して刑務官に従っていくことが賢いやり方になるわけです。

こうした態度の中に、本来的な意味での反省や、出所後に必要な人とつながって社会で働いていくといった視点はまったく欠落しているのです。はっきり申し上げると、刑務所は罰を与えるところとしては機能していても、更生するための機関としては機能していない。自分の気持ちを押し殺したり、人の顔色をうかがいすぎるようになったりするので、社会に出て人とつながって生きていくという側面を奪われている。その点において、「更生する場」にはなっていないというのが、実態だと僕は考えています。

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