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儲けすぎの調剤薬局の問題点

調剤薬局は儲かりすぎだ、という批判が業界内外でかまびすしい。

今年の中央社会保険医療協議会(中医協)で鈴木邦彦日医常任理事は「既に国民医療費の6分の1が営利企業の多い調剤薬局で使われていることは大きな問題だ。調剤薬局の数はコンビニエンスストアの数よりも多く、5万5千軒くらいある。また調剤薬局一軒あたりの収入は診療所の平均よりも多い。」と批判している。
(薬業時報104号より)

 また、東洋経済の12/21号でも「膨張を続ける調剤バブル。誰がツケを払うのか。」と題した特集を組み、現行の調剤報酬の仕組みを批判し、結局は国民がツケを払うことになる、と結んでいる。

中医協とマスコミの両者で批判対象になっているのが、大手調剤チェーンである。

この批判の根本には、調剤ビジネスでは規模の拡大が利益の拡大に結びつきやいこと、他の市場と異なり、イノベーションや多角化が収益に貢献する確率が低く、優良な店舗が儲かる仕組みになっていないこと、などの理由が見出せる。

平成25年の第19回医療経済実態調査によると、同一法人の店舗数別収益は14,774(1店舗)、22,251(20店舗以上)と大きく変わらないが、税引き後損益差額はそれぞれ169、1,485と大きく差が出る。

細目を見ると、大規模チェーンでは1人当たりの人件費や業務委託費を比較的効率よく抑える(うまく回す)ことができている。

考えてみれば当たり前のことで、全く同じビジネスモデルなら、数が多いほど、効率は上がる。調剤薬局の市場は常に競合しているわけではなく、真っ新な市場も比較的簡単にできるので、いわゆる収穫逓減といったものも発生しにくい。

しかし、真の問題はこの点ではない。

問題は、より優れたサービスを提供するため、多角化やイノベーションを進めようとすると、効率が悪くなり、行政リスクが大きくなる点である。

例えば、高度医療機器や水質検査、在宅サービス、在宅の医療機器、あるいは高額な難病患者を扱うことは薬局としての水準を高めることになるが、煩瑣な書類が増えるうえに、行政のチェックも厳しくなる。

こういったイノベーティブな業務は必要とされる投資の割に、店舗の利益には貢献しない。

店舗の利益と安全性だけ考えれば、よく流行る眼科や整形の横でひたすら単純な調剤をしているのが一番だ。

中医協はこのような単純な門前薬局=集中度の高い薬局の報酬に負のインセンティブを与えているが、効果は限定的なものにすぎない。

報酬総額5億9000万と言われる日本調剤の三津原社長はかつて「市場競争だから勝者が儲けるのは当然だ。」という発言をしていた。

彼の言う「市場経済」は生産的活動によって生じた余剰の原因を「自然の恵み」とした18世紀のフランスの経済学者ケネーの説と似ている。
無論、ケネーのような重農主義は現代の経済構造から見ると、荒唐無稽だが、「自然の恵み」を「税金と保険料」と翻訳すれば、案外、三津原社長的な経済学では優れたモデルなのかもしれない。

蛇足

生産性の向上によって余剰(貯蓄)が生まれ、余剰(投資)がイノベーションを起こし、新しい市場をつくる、といった現代的なモデルは少なくとも医療業界には当てはまらない。

イノベーションを起こすより、同じような市場に同じように投資した方が効率が良いからだ。

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