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出版社は自社の出版物に対する著作権にはうるさいが、他者の著作権には甘い

 またまたネット画像をトレースした著作権侵害の疑惑。
 出版社も著者も、他者の著作権にはルーズなんだよね。

「昆虫交尾図鑑」はネット画像の模写? 出版社「昆虫をリアルに描けば似るのは当然」と侵害否定 - ITmedia ニュース
 昆虫が交尾する姿をイラストで描いた書籍「昆虫交尾図鑑」に掲載されたイラストが、ネット上に公開されている写真を無断で模写したものではないかと指摘されており、これに対して出版社の飛鳥新社は12月10日、「書籍中のイラストは著作権を侵害するものではないと考えております」という見解を公表した。

(中略)

 だが出版後、ネット上に愛好家らが公開している写真にそっくりだという指摘が相次ぎ、写真とイラストを比較した検証画像が公開されるなどして、ネット掲示板で“炎上”する騒ぎになっていた。

 飛鳥新社が公表した見解によると、「(写真とイラストの)類似性とは、主として昆虫の姿と交尾の体位によるものといわざるをえません」「昆虫の姿をリアルに描いた場合に、写真における昆虫の特徴と類似するのは当然」「昆虫の交尾の姿に個性的体位がないのは自明」であるため、「イラストが写真に類似するという理由だけで著作権侵害とならないこともまた明らか」として、著作権侵害ではないと主張している。
 検証まとめを見ると、あきらかに模写だよね。
 基本的な交尾の形は似ていたとしても、構図や脚の位置まで同じということはありえない。
 ちょっとアングルが変われば、脚の位置も変わるわけで、ここまで同じになることはない。

 出版社側の言い分が最悪。
 逆の立場で、自社の出版物が模倣されたら、猛然と告発するはずだが、自分たちが著作権侵害を疑われると開き直る。
 誰が見てもあきらかなのに、出版社の人たちには「見えない」らしい。
 その神経がおかしい。
 そんなことで著作権を尊重できるのか?

 私は仕事がら、出版社や広告業界とつきあいが長いが、こうしたことは日常茶飯事だ。
「これを参考に、ここんとこ、ちょっと変えて描いてください」
「これに似せて作ってください」
「これ、パクってください」
 ……等々、きわどい指示はよくあるのだ。
 オリジナリティの意識が低い人は少なくない。
 真似と盗作の境界線は曖昧だが、オリジナリティを追求すると時間とコストもかかるから、安易な真似や盗作に走る。

 この昆虫の交尾図鑑も、それぞれの昆虫の交尾の瞬間を、自ら撮影しようと思ったら、膨大な時間と手間がかかる。そうそう簡単には、このような場面には遭遇できない。元となったオリジナルの写真があるのなら、それを公開して疑惑を否定すればよいのだ。
 それをしていないから、主張に正当性がない。

 自称フォトグラファーでもある私(^_^)の撮影対象は、おもに自然、それも植物と生物が主体だ。
 昆虫も重要な被写体だが、見つけることはもとより、いい写真を撮るのは容易いことではない。
 交尾の瞬間を撮影できたのは、ここ5~6年の間に、数回しかない。
 たとえば、トノサマバッタ……

トノサマバッタ(褐色型)の産卵(下が♀、上が♂)

 これは交尾であると同時に産卵シーンでもあるが、こういう絶好の場面に遭遇するのは、運次第(笑)。しかも、かなり接近して撮っているので、バッタが逃げてしまわないか、ヒヤヒヤものの撮影だ。
 「トノサマバッタ 交尾」で画像検索してみればわかるが、ひとつとして同じものはない。
 問題の図鑑のように、アングルや脚の位置が同じになるシーンは、ほぼありえないといってもいい。奇跡のような偶然なのだ。

 著作権に敏感なはずの出版社が、自らの過ちを認めないの、著作権なんかどうでもいいといっているのに等しい。
 出版物を出すのなら、手間と時間と資金を惜しまずに、オリジナリティを追求して欲しい。
 この問題は、ホテルの食材偽装と似たような空気がある。
 それは、「プロ意識」の欠如だ。

 プロフェッショナルとはなんなのか?

 そのことを自問自答してもらいたいものだ。

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