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社会が豊かになると投資リターンが小さくなっていく逆説と、それが個人にとって意味すること。

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ネットの発達で、逆説的に田舎化してるよねーという昨日の記事に関連して、ロイター本社で経済記者をやっている友達(@reutersNatsukoW)から面白い論文を紹介してもらいました。

THE PARADOX OF WEALTH AND THE END OF HISTORY ILLUSION
by William J. Bernstein

わずか19ページのレポート(PDF)なので、英語が出来る方はぜひ。

著者は、ウィリアム・バーンスタイン(William J. Bernstein)。アメリカの投資理論家、歴史研究家で、著作が日本でも数冊翻訳されています。





さて冒頭のレポートに話を戻して。

論旨は、「技術革新により、どんどん豊かになる社会においては、投資へのリターンは逆にどんどん小さくなるという逆説がある」というもの。

スクリーンショット 2013-11-24 21.00.22

論拠は色々と(株式の希薄化など)あるので詳細はレポートで直接確認頂きたいのですが、一番分かりやすい点が「社会が貧しければ超過資本は非常にわずかである=高い、逆に豊かであれば資本が余る=安い」ということ。要はそもそも貧しかったら将来の(リターンを見込む)投資になんて誰もリソースを回せないってことです。

土地が痩せてていつも腹ペコの農家の人がいたとして、わずかに取れた小麦は備蓄したり貸したりせず、自分で食べちゃいますよね。だからもし少しでも余った小麦を誰かに貸したり、あげたりするとしたら、めちゃくちゃ高い見返り(=リターン)を要求するはず。余剰のものはとても貴重なため、高いリターンが見込めたわけです。

一方、豊かになるとリターンが減るというのは、この逆のことが起きていくということ。

レポートの最後に彼はこう書いています。

”投資に対するリターンが高かった古代や中世の時代が羨ましいかも知れないが、もしタイムマシーンがあったとして、現代社会の快適で安全で知的な生活を諦め、高いリターンを求めて過去に向かいたいとは、まともな神経の持ち主なら思わないだろう。

争乱、疾病、高い乳幼児死亡率、劇的に短い平均寿命だった過去の世界において、仮に投資で成功したとしてその果実を何に使うというのか。技術革新によって過去に比べて遥かに豊かな生活ができる現代において、リスクの多寡に限らず投資によるリターンは必然的に小さくなっていくのだ。”

”While we might envy the high rewards to capital in the ancient and medieval eras, who in their right mind would willing step into a time machine and give up the comfort, safety, and intellectual rewards of our modern society just to improve their portfolio return?

Of what use is investment success in a world of mayhem, disease, high infant mortality, and drastically shortened life expectancies?

As technology makes the world ever more wealthy, the returns on both riskless and risky assets will of necessity fall. Pray that the naysayers are wrong, and that both processes continue.”

現代を生きる我々個人にとってどういう意味があるのか?

勘違いして欲しくないのは、投資の意味がなくなると言いたいのではありません。

複利の力を利用した長期運用だけでなく、短中期で情報のアービトラージを狙う人、起業家などのリスクテイカーにはそのリスクに応じたリターンはあるでしょう。

あくまで超長期で俯瞰してみたときの歴史の大きな流れ、全体的な方向性としてそういう傾向だということです。

いやー、面白い!

以下、私見を書きます。

投資というのは、直接的には資本(ヒトモノカネ)を投下することですが、そのリターンが下がるということは、裏を返せば、資本を調達するコストが下がっていく、ということでもあります。

誤解を恐れず言えば、投資をするということは「誰かに力を貸す」こと、投資をされるということは「誰かから力を借りる」こと、とも言い表せます。

豊かになれば周囲に力を貸す余裕ができる。社会全体が豊かになれば、他者に何かをしよう/できる人数も増えるから、需要と供給のバランスで、人の助けを借りるためのコスト自体は下がっていく。

そして、コストが下がるということは、敷居が下がるということなので、今までより「多様な」人から、より「様々な」力を借りることができるということです。



実際にその流れは、まだ萌芽ではありますが少しずつ顕在化し始めています。

KickStarterなどの不特定多数の人から金融機関やファンドを介さず直接資金を調達できる「クラウドファンディング」。

カーン・アカデミーiTunes Uなど、小学校レベルから大学院レベルまでの授業が無料で受講できる「オンラインでの無料学習プラットフォーム」。

◯格安で世界中の現地の家や部屋を借りられるAirBnBCouchSerfingのような「ルームレンタルサービス」。

◯Square CashやBitcoinなど、ネットを介して個人間で超少額の送金や決済が可能になる「マイクロペイメント」や「仮想通貨」。

などなど・・・

企業に限らず、「個人」がヒトモノカネを調達する際のコスト低減と調達できるものの多様さは、近年確実に進み始めています。

2013年のクラウドファンディングの市場規模は51億(約5,000億円)ドルに : ihayato.書店

稀代の教育改革者は、学びを楽しむ達人だった――サルマン・カーン カーンアカデミー創設者に聞く

現地の人から借りる家・アパート・部屋・バケーションレンタル – Airbnb

メール1本で送金できる「Square Cash」、米国でスタート – ITmedia ニュース

ビットコインが500ドルに乗せたので、これを機会に整理してみる – Market Hack

仮想通貨「Bitcoin」とは一体何か、どういう仕組みかが一発で分かるまとめ – GIGAZINE


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