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「PCメールを送受信できない」が7割~『若年無業者白書』が示す「働きたくない若者」の実態

若年無業者白書——その実態と社会経済構造分析』と題された本が出版された。若者への就労支援を行っているNPO法人「育て上げネット」がまとめたものだ。同書から見えてくる「働いていない若者」の実態とはどんなものなのか。彼らにはどんな支援が必要とされているのか。出版記念イベントを訪れ、執筆者たちに内容を聞いた。(取材/撮影:渡邉一樹)

『若年無業者白書』について説明するNPO法人「育て上げネット」の工藤啓理事長

同書は「白書」と銘打っているが、その内容は、育て上げネットが支援対象者に行ったアンケート調査をまとめ、分析したものだ。元となった調査は2012年1月から2013年6月までの期間、東京・神奈川・埼玉・大阪などの都市部で、約2300人を対象に実施したという。

主題となっている「若年無業者」とは、いったいどんな人たちなのだろうか。同書は、「15歳〜39歳で、学校に通っておらず、収入を伴う仕事をしていない、独身の人たち」と定義し、さらに、この若年無業者を、現在求職活動を行っている「求職型」、仕事はしたいと思っているが求職活動はしていない「非求職型」、そもそも就職を希望していない「非希望型」の3パターンに分類している。

電子メールよりスーツが先?

こうした分類によって、どんなことがわかったのだろうか。

まず、生活面では、「非求職型」や「非希望型」は、「求職型」に比べて集団活動をすることが少なく、家で過ごす時間が多いが、家の中でも活動的ではない、というデータが浮かび上がった。

意識面では、「非求職型」は不安・緊張が高い一方、働く自信をつけたい・社会性を身につけたいという意欲が高かった。「非希望型」は不安・緊張は薄いものの、気持ちは停滞しており、意欲も不明瞭だった。一方、「求職型」は自己肯定感があり、自分に合った仕事を見つけたり、スキルを身につける意欲が他よりも高かったという。

就職活動面もタイプによって違いがでた。「非希望型」は、メールを送受信するPCスキルがないと答えた人が7割に及び、「求職型」や「非求職型」の45%程度と、大きな格差があった。一方、就活用のスーツは、「非希望型」でも47%が所有していて、「非求職型」では67%、「求職型」は77%。どの型でもスーツの所有率の方が、メールが使える割合より多かった。

若者の「無業期間」を短縮する要素とは?

同書ではまた、若者が働いていない期間、いわゆる「無業期間」の長さに、どんな要素が影響を与えているのかという分析にも大きくページが割かれている。

分析を担当した社会学者の西田亮介氏(立命館大学大学院・特別招聘准教授)によると、特に影響が大きかったのは「求職活動をしているかどうか」と「求職する意思があるかないか」で、この2つは他の要素にも大きく作用していたという。

これは、言い換えると、「非希望型」から「非求職型」に、さらに「求職型」へと、意識を変化させること自体が、無業期間を減らすことに結びつくという、結論だ。

具体的に変化した項目でいうと、たとえば「非求職型」では無業期間の短縮につながっていなかった「車の免許を持っている」「集団でいることが多い」といった変数が、「求職型」では無業期間を減らしていた。一方、「非求職型」では無業期間を増加させていた、「退職理由:精神的不調」や「最終学歴:短大卒」といった要素が、「求職型」では悪影響を及ぼしていなかった。また、「1年以上続いた仕事がある」など、求職活動を行うことで、他の項目と代替可能となるものもあったという。

なお、就職を希望しない「非希望型」では、無業期間の短縮に結びつく要素が極端に減り、多くの変数が無意味になってしまったようだ。

西田氏はこうした点を踏まえ、就職したいと思うことや、求職活動によって、「過去の社会経験や現在の生活が持つ意味は変化する」と指摘。「常識的で、直感的に理解しやすい結論かもしれないが、これまで現場の暗黙知とされてきた内容を、データの定量分析によって裏付けた点で意味があった」と話していた。

出版費用の90万円はクラウドファンディングで捻出

なお、「育て上げネット」の工藤啓理事長によると、同書は調査研究の助成費を受けられず、クラウドファンディングで集まった約90万円を元手に、やっと出版にこぎ着けることができたそうだ。『若年無業者白書』は11月13日時点ですでに品切れ状態だが、予算の都合上増刷の予定はないという。現時点で入手するには、Amazonで電子版(Kindle版)を購入するしかない状態だ。

今回、同書に掲載されたデータは、あくまで一つのNPO法人が自らの活動のために収集したもので、執筆者たちも「内容に偏りがあることを割り引いたうえで参考にしてほしい」と話していた。今回の出版をきっかけに、さまざまな現場で蓄積されたデータが、このような調査研究報告としてまとめられるようになっていけば良いのだが……。

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