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反中、反日のエスカレートの悪循環を断たなければならない

 反中、反日の大衆運動の拡大は、きわめて危険である。いかなる犠牲を払っても止めなければならない。

 各報道機関の中国特派員の報告によれば、10月16日に中国各地で起きた「尖閣」反日デモは、日本国内の反中国的な動きが、中国のインターネットを通じて中国国内に伝えられ、これが刺激になって国内の不満に引火し、動き出したとのことである。

 日本国内における反中国運動を推進しているのは民間団体「頑張れ日本! 尖閣侵略糾弾 全国行動委員会」(田母神俊雄会長)。「中国大使館包囲 尖閣侵略糾弾! 国民大行進」と題した集会も開かれた(産経新聞10月17日朝刊)。それに、度重なる前原外相らの反中国の言動。これらの動きが中国の大学生を刺激し起ち上がらせた。この意味では、日本の反中国派の挑発は成功したと言えるかもしれない。

 もしも、これから、両国民が興奮して、日本の反中国運動と中国の反日運動がエスカレート合戦を演じれば、日中友好関係は瞬く間に崩壊するであろう。経済関係も悪化するだろう。中国で働いている日本人も引き揚げざるを得なくなるだろう。日本と中国との政治、外交、経済その他すべての両国関係が崩壊することは、両国にとって大損害をもたらす。日中両国を対立させようと画策している者たちは、それでいいと考えているのかもしれない。しかしこれは罪悪である。平和が壊されたとき、日本の存在自体が危うくなる。この対立の流れは止めなければならない。

 知人の外交関係者によると、問題は少なくとも(1)曖昧領域、(2)最悪の時期、(3)日本の外交体制の三つあるという。一つ一つ検討してみたい。

 第一。1972年の日中国交回復と1978年の日中平和友好条約締結のとき、領土問題は事実上棚上げにした。つまり、両国間の曖昧領域を残したまま、国交回復を実現し、平和友好条約を締結したのだ。日中両国間の平和友好関係は「曖昧領域」の存在によって、保たれていた。両国政府と両国民が、以心伝心で「曖昧領域」を認め合うことによって平和友好関係が保たれてきたのである。

 ところが菅内閣は、この「曖昧領域」を否定し、中国に対して領土問題には曖昧さがないことを強引に認めさせようとした。少なくとも、中国側には、そう理解されている。これを行ったのが、菅内閣の実力者で、アメリカ国務省と特別の「信頼関係」をもっている前原誠司氏である。前原氏は、日本の海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突したときは、海上保安庁長官を指揮できる国土交通相の立場にあった。前原国土交通相は中国漁船船長の逮捕を指示した。小泉政権時代は強制退去だった。前原氏はこのやり方を変えた。事件直後の内閣改造で外相になった前原氏は、日中平和友好関係の前提になってきた「曖昧領域」を否定し続けている。日中対立の仕掛け人は前原氏である。菅首相も仙谷官房長官も岡田幹事長も、前原外相の対中強硬路線を支持している。

 つまり、日中間の今回の紛争は日本側(主として前原外相)が仕掛けたものである。この前原外交の日中対立路線をアメリカ国務省が裏側から支えている。最近のアメリカ政府は日中対立を願っている。 今日の日本国内の日中対立か否かの路線上の対立の底にあるのは、前原流の曖昧領域なしを力ずくで中国に認めさせる強硬対立路線と曖昧領域を残しても平和友好関係を守るかの路線対立である。私は、平和のために「曖昧領域」を以心伝心で認め合うべきだと考える。

 いまのところ、菅政権内部では前原強硬路線が絶対的優位に立っている。この原因の第一は菅政権に平和を守るという確固たる信念がないことにある。第二はアメリカ国務省の日本担当者たちが前原強硬路線を支持していること。第三は日本のマスコミが前原強硬路線を支持し応援していること。第四は融和路線の主張者が政界、マスコミにより魔女狩りにあっていること、である。大マスコミが日中対立を扇動している。危険である。

 だが、私は、いかなる犠牲を払っても平和は守るべきであると主張する。前原外相のように「曖昧領域」を明確に否定することは、結果的に中国側にも同じ態度をとるよう求めることになり、紛争は避けられなくなる。前原外相のように紛争が生じても1972年の国交樹立時と1978年の平和友好条約締結時の日中関係を否定するのがよいか、平和を守るために1972年と1978年のやり方を守り続けるか、がいま日本国民に問われているのだ。私は1972年と 19078年の日中外交のやり方を変えてはならないと思う。

 私は、前原外相の存在はきわめて危険であると考えている。菅内閣は前原外相と心中するのか、前原外相を切るのか、明確に決断すべきである。いまの日本には、戦前の松岡洋右外相のような外相は有害である。前原氏は松岡洋右外相に似ている。

 第二。紛争が起きた時期が、最悪の時期だったことだ。2年後の中国国家と軍と共産党の指導体制の交代を決める時期が2010年秋である。この時期に日中間のトラブルが生じた。

 中国政府内の親日派が日本寄りの発言がしにくい時期に紛争が起きたのだ。このため、本来は日本を擁護すべき人が沈黙し、不必要にこじれてしまった。

 第三。民主党政権誕生後に日本の外交体制はほとんど崩壊してしまった。民主党の「政治主導、脱官僚」改革が強引に行われた結果、日本の外交当局はほとんど機能不全に陥った。とくに、外交には素人の指導力なき民間人を大使に登用したことによって、北京駐在日本大使館の外交機能は事実上崩壊してしまっていた。今回の危機にあたって、大使館は無力だった。

 責任感がなくリーダーシップに欠けた事なかれ主義の菅内閣は前原氏に外交をまかせ続けるだろうが、おそらく前原外相では日中外相会談はできないだろう。日中外相会談すらやれないような露骨な反中国主義者を外相の地位におく菅首相の不見識が問われることになろう。

 それにしても、どうかしているのがマスコミである。大新聞もテレビ局も、前原外相では日中外相会談ができないことを知っているはずである。それでもマスコミは何も言わない。マスコミは何を恐れているのか?! 前原氏がとくに信頼されているアメリカ国務省の日本担当者たちを怖がっているとすれば、もはや日本の大新聞はジャーナリズムとは言えない。マスコミは前原外相を擁護しているが、松岡洋右外相を英雄にした戦前のマスコミと同じ轍を踏んではならない。

 もう一度、菅首相に問う。前原過激外交でいいのか?!と。「曖昧領域」を残しても平和友好の道を進むのが平和憲法をもつ日本の生き方でなければならぬ。仙谷官房長官に問う。君は平和憲法を裏切るのか?!と。

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