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僕が「特定秘密保護法案」成立に反対する理由

僕はいま、あることで、日本がたいへん危ういと感じている。「特定秘密保護法案」だ。安倍内閣が閣議決定し、おそらく今国会で成立することになるだろう。

第一次安倍内閣の頃から、安倍首相はこの法律を制定したがっていた。それは、なぜか。「スパイ防止法」の類(たぐい)の法律は、いま、日本にはない。世界の主要国のなかで、そういう法律がない国は日本ぐらいのものだろう。だから、アメリカに言わせれば、「そんな国では、たとえ同盟国であっても、怖くて重要機密を共有できない」というわけだ。

たとえば、国家公務員が重要な機密を漏らす、つまり守秘義務に反したとする。アメリカでは最高で死刑に処せられる。ところが、日本では最高でも懲役1年、50万円の罰金が課されるのみだ。だが、特定秘密保護法案が成立すれば、最高で懲役10年と刑が厳しくなるのだ。おそらくアメリカからの要請もあっただろう。安倍政権が、この法律の成立を急ぐ気持ちも理解はできる。

ただ、その内容があまりにも危ない。「知る権利」「取材の自由」は守られる、と言いながらも、その規定がどうにも曖昧なのだ。まず、特定秘密の対象となるのは、防衛、外交、スパイ活動、テロ活動の4分野だ。しかし、その定義は解釈によってどうにでもなる。

取材の自由については、取材活動を「著しく違法・不当でない限り、正当な業務行為と位置づける」との趣旨を盛り込むという。だが、「著しく違法・不当」とはいったいどこまでを指すのだろうか。例えば、政治家の家やマンションの敷地内に入っただけで、「住居侵入罪」で「違法」とされる可能性もある。政治家や官僚に強引に取材すれば、「不当」とされる可能性もある。どうにでも、政権に都合よく解釈できてしまうのだ。

さらに、もうひとつ気になることがある。現在の法案には、次のように書かれている。「5年ごとに更新可能。30年目に内閣の承認があればさらに延長できる」。国会ではなく「内閣」だ。政権の意向でいくらでも延長できるのだ。

僕は、戦時中から戦後にかけて、国家が平気でウソをつき、戦争に負けると、その主義を簡単にひるがえした様子を目の当たりにしてきた。体制とはウソつきなのだ。

このことで、僕は「沖縄密約事件」を思い出さないわけにはいかない。沖縄返還直前の1971年の事件だ。ことの起こりは、毎日新聞の西山太吉記者が、外務省の女性職員から外交文書を手に入れ、スクープしたことだ。沖縄返還の条件として日本側からアメリカへ、400万ドルが渡っていたというものだった。ところが裁判では、西山記者が女性職員と「情を通じて」機密を手に入れた、という不倫問題へと論点がすり替えられたのだ。

判決は、西山記者は懲役4か月執行猶予1年、女性職員は懲役6か月執行猶予1年の有罪になった。単なるスキャンダルと報じられ、世間を多いににぎわせただけだった。さらに、今回の特別秘密保護法案が成立すれば、同様の事件はもっと厳しい刑が言い渡されることになる。

安倍さんには、「知る権利」を制限するつもりは毛頭ないだろう。だが、安倍さんにそのつもりがなくても、後の政権が解釈次第で、いかような罪も作り上げてしまう可能性がある。そんな法律は危なすぎる。

そして、もうひとつ苦言を呈したい。メディアは、この問題をもっと真剣にとらえ、とことん議論を尽くすべきではないのか。言論の自由を守ることが、ジャーナリズムの原点である。だからこそ僕は、この問題にもっと斬り込んでいきたいと思うのだ。

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