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避難者への慰謝料と風評被害について(震災6)

「原子力損害賠償紛争審査会」が本日(4/15)に開催された様子。この審査会で福島原発における『原子力損害』に関する指針を公表することになっている。

本審査会がどのような指針を打ち出すかは判らないが「原子力損害の賠償に関する法律」の『原子力損害』に関して、今後大きな争点となろう。

この問題について簡単な感想を述べ、順次原子力損害に関する判例などを時間が許す限り紹介する予定。

原子力被害への賠償問題はJCOにおける平成12年3月29日の『原子力損害調査委員会』の最終報告が、今のところ一番詳しい。
http://www.hiroi.iii.u-tokyo.ac.jp/index-genzai_no_sigoto-JCO_jiko-songai-chosa.pdfh
この報告書は次の損害について検討している。

1 身体の傷害



本件事故により放出された放射線障害でるあると認めれた場合は賠償の対象になるが、それ以外の請求は本件事件と請求者の被害が立証された場合に限り賠償が認められる   

2 検査費用



平成11年9月30日午前10時35分から避難要請の解除(10月2日午後6時30分)までの間に茨城県内でいた者で同年11月末まで検査費用を支出した者は認められる。

3 避難費用



退避する為の交通費、宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した費用。但し過度に遠方に避難した場合や高額な施設に宿泊した費用は全額でなく、合理的、平均的な費用に減額する

4 検査費用(物)



本件事故当時茨城県内にあり、当該財物の性質から検査を要求された場合に、必要かつ合理的な場合はOKだが、それ以外は認めない

5 財物汚損(略)



6 休業損害



屋外退避勧告がなされた区域内に住み又は勤務先がある労働者、アルバイト等で就労不能となった場合は10月2日から合理的期間経過までの減少分はOK

7 営業損害(風評被害)



平成11年10月から平成11年11月末までの減少分は損害と認める。それ以降の分の減少分はダメ

8 精神的損害



身体被害を伴わない精神的苦痛は特段の理由がない限り認めない

この最終報告書の最大の欠陥は

1   原子力被害のうち避難等に関して精神的苦痛に関する損害を認めていない点である。

JCOの事件は避難指示がわずか2日であったことも影響しているのであろう。しかし、今回の福島原発事件は避難指示や屋外退避期間は相当長期になる可能性がある。自分の家で住めず、慣れない避難地、避難場所で住む精神的苦痛は、交通事故で、重症で入院した時と同等か、それ以上に慰謝料を支払う必要があろう。ちなみに交通事故の場合は1カ月につき20万前後の慰謝料を払うのが判例の水準でる。交通事故は相互互換性があるから損害を控えめにするという論理が働くが、原発事故は相互互換性がない。この点の違いがあるので交通事故基準より高額にすべきだろう。


2 風評被害についても極めて短期間しか認めていない。

 最終報告書は安全宣言をしてからわずか2カ月の期間しか損害と認めていない。この提言後、これに沿う判例もあるが、平成11年10月から平成12年2月までの5カ月間の風評被害を認めている判例もある。

しかしこのJCO提言や両判例は普通の消費者の行動を誤解している。

風評被害と呼ぶべきか、正常な消費者の行動と呼ぶべきかは別として、一般的に食品に安全性を求めるのは健全な消費者であればあるほど要求水準が高くなるのが常識である。安全宣言があったからと言って2カ月や5カ月で大丈夫と思う消費者もいるが、相当なパーセントの消費者は、安全性を求め、それを追及する消費者も多い。子供、妊婦などはより厳しい安全性を求める。よし悪しは別にして政府、電力会社の安全宣言等を完全に信頼できない体質になっている消費者も多い。一度、食品にマイナスイメージを与えられると一般の消費者はそれを購入することを控える行動に出るが、それが特別異常な行動とも思われない。安全宣言後であっても売上が事故前の状態に回復するのが、1年や2年の相当期間要求されることは特別不思議でもない。これが普通の消費者の一般的行動の表れでもある以上、何でもかんでも風評被害で根拠がないという上記報告書や判例の論理こそ問題であろう。

3 裁判所は風評被害をはじめ、原発被害者には実に冷たい態度をとっている。これは次回に書く予定。

東京電力福島第一、第二原子力発電所事故の賠償の指針を定める「原子力損害賠償紛争審査会」の初会合が15日夜、文部科学省で開かれた。
 委員の互選で会長に選ばれた能見善久・学習院大教授は、政府の指示に基づいて避難した住民に関する指針案を22日の次回会合で示す方針を明らかにした。その後、出荷制限で収入が減少した農家などに関する指針も段階的に策定し、7月中には指針の大枠を示したい考えだ。
 委員からは「避難住民などへの指針から作るべきではないか」「風評被害をどうするかは大問題だ」などの意見が出た。能見氏は終了後、記者団に、「個人的な見解だが、福島第一原発から20キロ圏内の住民に対し、避難費用、よそで暮らす費用、精神的損害などについて(指針を)早急に示せるのではないか」と述べた。「損害類型(の全体の指針)は、大ざっぱなものかもしれないが、7月中には示したい」とも語った。
(2011年4月15日22時47分読売新聞)

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