記事

芸人・松本ハウスが語る統合失調症からの社会復帰

1/6

かつて「ボキャブラ天国」などで活躍したお笑いコンビ「松本ハウス」のハウス加賀谷さん。 人気絶頂の中、突然の活動休止を発表したハウス加賀谷さんですが、その理由は「統合失調症」でした。 表舞台から姿を消したハウス加賀谷さんは、その後、10年間、統合失調症と向き合い、入院、リハビリなどを経て、再び芸能界に復帰。今回、統合失調症から復帰する10年間を、相方松本キックさんの視点を交えながら綴った著書「統合失調症がやってきた」を発表しました。

日本人のほとんどの人が多かれ少なかれ、心の苦しみや悩みを抱える現代。この「統合失調症」も、日本人のおよそ100人に1人がかかる病気で、決して珍しいものではありません。

そこで今回は、松本ハウスのお二人に、統合失調症にかかって芸人として社会復帰するまでの闘病生活を伺いながら、国立精神・神経医療研究センターで社会復帰研究部の部長を務める、伊藤順一郎先生をお迎えして、最新の精神医療や、就労支援、周囲の支え方について専門的なご意見をいただきました。(10月4日収録)

◆番組アーカイブ

大谷広太(BLOGOS編集長)
須田慎一郎(ジャーナリスト)
ハウス加賀谷・松本キック(松本ハウス)
伊藤順一郎(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部部長、NPO法人地域精神保健福祉機構・COMHBO共同代表理事)

中2から発症した統合失調症

大谷:ハウス加賀谷さんに統合失調症の症状が最初に現れたのはいつ頃だったのでしょうか?

加賀谷:明確に覚えているんですけれども、中学2年生の1学期の終わりの頃でした。
初夏で暑かったんですけど、先生が僕のすぐ後ろに座ってた女の子に「おい!◯◯、どうしてそんなにふてくされた態度をとってるんだ?」と言ったんですよ。「どうしたんだろう?」と思って振り向いたら、彼女が下敷きを団扇代わりに扇いでたんですね。それを見て、“この人、前の席に座ってる僕が臭いから、こうやってニオイをごまかしてるんだ”というのがピッと入ってきまして。

松本:「そういう風に認識しちゃった」わけだよね?

加賀谷:そうなんです。その授業の間中、後ろの方から、誰か特定できるほどの声で「加賀谷くさいなあ」というのが聞こえてきたんですよ。今までとは変わったところは何もないのに、いきなり聞こえてきて、もう何がなんだかわからなくって。振り返って、その声のするほうの友達を見るんですけど、普通にノートをとっている。でも、明らかにその友達の声が聞こえるんですよ。 最初は授業中だけだったんですけど、いつしかその声が、体育館とか工作室とか、電車の中とか、ある程度、密閉された空間になるとひっきりなしに聞こえてくるようになりました。それで、「僕が臭いせいで、みんなに迷惑をかけているんだ」とドンドン暗くなってしまいまして。

松本:自分の中に閉じこもっていっちゃったんだね。

加賀谷:そうなんです。

須田:実際にしゃべっている声と、幻聴の区別がつかないものなんですか?違いはないんですか?

加賀谷:違いはないですね。僕が一番前の席にいるということがあるかもしれませんけれど、区別はつかなかったです。僕にとってはそれがずっと現実だったので、ドンドンドンドン落ち込んでいきました。しかも、思春期だったので、そういうことを両親にも相談しづらいんですよ。それで、母親に「"臭い"って言われるんだけど」と告白してみても「どうすればいいの?」と。まあ、わからないんですよね。

松本:お母さんもやっぱり「臭くないわよ」ってなる。

加賀谷:そう言うんですけど「いや、臭いから」って。このやり取りをその後、色々な大人とすることになるんですけど、僕にとっては現実なので。

大谷:伊藤先生、周りの人に相談することにはハードルがあると思いますが。

伊藤:ハードルは高いと思うんですよね。加賀谷さんにとっては現実だったわけだから、自分がおかしくなっちゃったというよりも、きっと周りが自分に対して、いじわるしているんじゃないかってことがあったわけですよね。

加賀谷:声のトーンとして、みんなが困っているという感じで。「僕の存在がいけないだ」という風に思ったんですよね。

伊藤:医学的に言うと、脳の中でドーパミンという物質の伝達がかなり過剰になっている時に、そういう声が聞こえてくると言われるんです。ドーパミンという物質は、緊張したりとか、疲れてるけど、がんばらなきゃって時に出たりします。自分が疲れていると感じていない場合もあるから、本人からすると、ある日突然感じることがあると、みなさんおっしゃいます。

グループホームを勧められる

大谷:そこから、解決に向かおうとされるまで、どのぐらいの期間があったんですか?

加賀谷:まず、中学時代は「申し訳ない」という気持ちで、ずっと縮こまっていたんですね。
進学するにあたって、三者面談があったんです。ずっと思っていたことを言おうと思ったんですよ。先生から「加賀谷、中学を出たらどうするんだ?」って聞かれた時、「僕は高校には進学せずに、ホームレスになりたいと思います。」って正直に言ったんです。そうしたら、「どうしたんだ!?」「大丈夫か!?」となったんですけども、僕の気持ちとしましては、僕がこの社会にいたら、みんなに迷惑をかけ続けると。ドロップアウトと言うと、失礼な言い方かもしれないんですけど、別の社会に行きたかったという気持ちがあって。だから、精神科に行くという考えはなかったです。

松本:当時は情報も少なかったんですよね。

加賀谷:それで、みんなが僕のことを臭いというのは、ワキガだからじゃないかと思って、じゃあ、脇の皮膚を切り取っちゃえば、全部治るんじゃないかと思ったんです。そういう解決の仕方があるんじゃないかと。

それで、近所の病院に行って皮膚科の先生に、「すいません、僕臭いんで、脇の皮膚を切り取ってください。」と言いましたら「いや、臭くなんか無いよ」と。だから「いや、臭いです」「いや、臭くないよ」と、また同じやり取りになっちゃって。

そうしたら先生から、神経科を勧められて行ったんですけれど、そこでも臭い、臭くないっていう同じやり取りの繰り返しなんですよ。僕としては、真剣に向き合って話をしてなかったところもあると思うんですけれど、また皮膚科に戻りまして、先生に5回も6回も「皮膚を切り取ってください、切り取ってください。」と言いましたら、先生が根負けしまして。「加賀谷君がそこまで言うならやりますよ」と。

松本:ある意味ストーカーだよな(笑)

加賀谷:ストーカーですよ(笑)先生の診察時間を狙って行きましたからね。そうしたら、「手術します」ってことで、手術室に入って、マーカーみたいので脇に印をして、そこを切り取ってもらったんです。それが痛いんですけど、これで悩みは全部解消だということで、僕はもうルンルンなんですよ。

その後、抜糸を終えまして、やむを得なく進んだ高校に行ったんですけど、僕は治ったと思っているので、とにかく楽しくて仕方ない。でも、授業が始まった途端に「加賀谷君、臭い」という声が聞こえて、気分がドーンと沈みこんでしまいまして。それから帰り道もよくわからないような感じで、家に帰りました。また、その出来事と並行して、母親が探してきた「思春期精神科」というところで診察していただいていて、お薬を飲むようになりました。

松本:でも、本人は「こういう症状だよ」ということを聞かされてないので、よくわからず出された薬をとりあえず飲んでいた。

加賀谷:でも相変わらず、声は聞こえていたんです。ある時、学校の廊下を歩いていたら、前の方から、声が波打って、バウンドして、ウワァーっと声が来たんです。僕は怖くて、その場にピタッとへたり込んでしまうということがありました。そんな時期に、社会になかなか適応できない方が、社会復帰を目指してみんなで共同生活をするグループホームに入ったほうがいいよと言われていたんです。

でも、そういった施設に対して、僕の中にも偏見があってお断りしていたんです。だけど、こんなに具合が悪いんだったら、グループホームにお世話になったほうがいいかなと思いまして、父と母に相談すると、「加賀谷家は、今、家庭として機能していないので、潤くん(ハウス加賀谷氏の下の名前)は入ったほうがいい。」と言われまして。ちょうど海外赴任とかがあって、家族がバラバラの時期だったんですね。

あわせて読みたい

「精神疾患」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    田原氏「麻原彰晃はマジメな男」

    田原総一朗

  2. 2

    「ドラクエ式」が被災地で大活躍

    中妻穣太

  3. 3

    川上量生氏 五輪事業辞任を説明

    川上量生

  4. 4

    小室圭氏留学 皇室パワー利用か

    NEWSポストセブン

  5. 5

    飲食経営の美談に隠れた労働問題

    東龍

  6. 6

    セブンの生ビール販売中止は正解

    ヒロ

  7. 7

    山本太郎氏の品位欠く罵声に呆れ

    早川忠孝

  8. 8

    橋下氏 エアコン検討より実施を

    橋下徹

  9. 9

    中国の反日戦略を封じた米ロ会談

    MAG2 NEWS

  10. 10

    LGBT支援を批判 自民議員に苦言

    足立康史

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。