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武器輸出問題は完成品の輸出より、今も行われている汎用品に目を向けた方がいいんじゃね?

先日、こんなニュースがありました。
川崎重工業が製造する海上自衛隊艦船用エンジン部品を、英海軍艦船向けに提供することを日本政府が認めたことが分かった。政府関係者が14日、明らかにした。同部品は民生用としても広く使用されていることから、政府は紛争当事国やその恐れのある国への兵器売却を禁じた武器輸出三原則には抵触しないと判断した。

出典:英軍に海自艦部品提供へ=「武器に当たらず」―政府判断
政府判断により、英国海軍に川崎重工が製造するエンジン部品を供給を、武器輸出三原則に抵触しないとして許可したという報道です。その判断の鍵となったのが、当該の部品が民生用としても広く使われている部品であることでした。

ここで、武器輸出三原則とは何かを整理してみましょう。

武器輸出三原則は1967年に佐藤栄作首相が表明したもので、次の3点の場合に武器輸出は認められないとした規定のことです。
  1. 共産圏諸国向けの場合
  2. 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
  3. 国際紛争当事国又はそのおそれのある国向けの場合
この3条件を厳格に適用した場合でも、かなりの国(西側諸国はほぼOK)への武器輸出が可能と解釈できますが、1976年に三木武夫首相が三原則について追加で以下の政府方針を表明しています。
  • 三原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない。
  • 三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
  • 武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
現在言われている「武器輸出三原則」は佐藤首相が示した原則より、三木首相が示した方針の方に沿った運用が今もなされており、経済産業大臣の許可を必要とする事で、いくつかの例外(米国向け技術供与、ミサイル防衛等)を除いて武器輸出は行われてきませんでした。

最近は武器輸出三原則を巡って、国際共同開発への参画や航空宇宙産業の振興などの観点から、三原則を緩和しようという動きが出ています。2011年の野田内閣で三原則の一部が緩和され、武器の国際共同開発に道が開かれました。これにより、航空自衛隊の次期戦闘機に内定しているF-35の部品製造に日本企業が参加するため、F-35の部品輸出を三原則の例外にする事や、海上自衛隊の救難飛行艇US-2のインド向け輸出の検討、航空自衛隊のC-2輸送機の民間型輸出などの構想が浮上しています。

民間型のインドへの輸出が検討されている、海上自衛隊の救難飛行艇US-2

しかし、武器輸出の問題は、政府によるコントロールがしやすい上記のような完成品よりも、コントロールが難しい製品にあると言えます。例えば、武器とそうでないものの区別が難しい輸出品がそれです。自動車がその代表で、チャド内戦は政府軍と反政府軍双方がトヨタ製ピックアップトラックに武装を施して戦闘をしている様子が報道されたために「トヨタ戦争」と呼ばれていましたし、アルカイダの指導者だったウサマ・ビン・ラディンはランドクルーザーで移動し、それを捜索する側の米軍もハイラックスの北米仕様であるトヨタ・タコマを使っていました。これらの乗用車やトラックは、軍用と民間用に差がほぼ無く、現在も世界各国で日本製自動車が軍用として使われています。紛争地への小型武器輸出が国際的な問題になっていますが、しばしば紛争地で主力兵器として日本製車両が使われている事実は、あまり好ましいことではありません。



このように、元々武器との区別が曖昧だった製品もある中、近年はさらに問題が複雑化しています。それは、武器開発分野において、標準化・汎用化された民生の汎用品を用いてコスト低減を行う、COTS(Commercial Off The Shelf:商用オフザシェルフ)と呼ばれる開発手法が広まったことです。従来、武器開発では信頼性等の問題から専用部品が多く使われていたのですが、武器開発へのCOTSの普及により、全く武器を連想させないような民生品でも、武器部品として使われる恐れが出て来ました。これに絡んで、先日はこんな報道もありました。
トルコが中国の「紅旗9型(HQ-9)」長距離地対空ミサイル(輸出型FD2000)の購入を決定したというニュースに世界中が注目する中、ネット上でその画像を見た海外のネットユーザーから「HQ-9には、日本製のAZ8112型リミットスイッチが採用されている」との指摘が上がっている。29日付で環球網が伝えた。
出典:中国の「HQ-9」ミサイルに日本製の電子部品、海外ユーザーが指摘―中国メディア
中国製の地対空ミサイルに日本製の電子部品が使われていたという、中国メディアの報道です。ロケット・ミサイルにも使われる部品のうち、経済産業省が定める仕様にあるものは輸出貿易管理令で大臣の許可が必要になりますが、汎用品である場合はそれに引っかからない物も多くあると考えられます。しかし、武器輸出三原則に照らしても、共産圏諸国の中国(今もそうかは議論があるでしょうが)で日本製品が武器部品として使われる事態は、好ましくないものです。

ここで問題になったリミットスイッチを含め、スイッチ・センサーはあらゆる機械製品に使われている部品であると同時に、日本メーカーはこの分野で大きな市場シェアを持っています。他にも、日本メーカーが大きなシェアを持つ半導体や無線通信、光学機器、発動機、バッテリーといった分野の製品が、海外で武器の部品として使われている可能性がありますが、それらの汎用品の武器転用を規制するのは実際には困難でしょう。汎用品とは、言い換えれば何にでも使える部品なのですから、武器開発で汎用品が使われるようになった以上、武器転用される事は避けられません。

では、このような日本製品や汎用品が、紛争地や軍事的緊張下にある国で武器に転用される恐れに対し、日本はどのように臨めば良いのでしょうか。民生品や汎用品として輸出される以上、その武器転用を規制するのは困難です。武器転用する恐れのあるユーザーへの販売に制限をかけるような、従来からの武器輸出規制のスキームをより洗練させる方式にはおのずと限界があります。

むしろ、単純に規制で出口を絞るのではなく、日本製部品の武器転用の事実を把握したなら、その使用者を日本のコントロール下に置くようなアプローチが必要になってくるかもしれません。例えば、継続的メンテナンスが必要となる消耗部品が武器転用されていた場合、その部品の流通をコントロールすることで武器の稼働率に影響を与えられます。また、使われている部品が判明することで、武器の性能や生産数を推測する手がかりになります。使われている部品一つで、武器をコントロール下に置くことが可能になり、武器転用したのが日本と軍事的に緊張関係にある国であった場合、日本の防衛にとっても大きなメリットとなります。そういった事から、これからは輸出規制に加え、輸出された製品の監視・追跡を行い、最終製品が何であるかを把握するトレーサビリティーシステムの構築が、より重要になってくるのではないでしょうか。

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