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もんじゅ君の「ズバリ聞きますだよ!」第4回 - 【中編】じぇじぇ!大友さん、『あまちゃん』にジャズやブルースを取り入れたのには、どんな背景があるんですか?

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ドラマや音楽が、観た人のモチベーションになってくれたら

【前編】はこちら大友:俺ね、いまやってる朝ドラって自分にとっても、すごくいい舞台だったんだと思う。『あまちゃん』って、震災復興のためにつくったものなわけじゃないでしょ。『八重の桜』だってきっかけはどうであれ、復興目的のドラマではないと思うんです。
 たとえばドラマの目的が直接的に「震災復興のために!」とか「放射能に負けないために!」みたいなことになると、見えなくなっちゃうことっていっぱいあると思うんだ。ドラマでも音楽でもそうだけど、そういった実用的な目的がさきにきてしまうものには、たぶん俺、乗れないと思う。それがたとえ立派な目標を掲げていたとしても。というか、立派そうに見えたらなおさらかもしれない。

 本来、俺らの仕事っていうのは、ドラマをつくる、音楽をつくる、それがすべてだと思う。それが結果的に、観た人の未来のビジョンなり、生きていくモチベーションなりになっていくんだとは思うけど、生きていくモチベーションを生むことを目的にしているわけじゃない。そう考えたのが、2011年の秋にいろいろと疲れ果てたあとだった。

もんじゅ:大友さんは2011年初夏から『プロジェクトFUKUSHIMA!』を立ち上げて、福島から文化的なメッセージを発信するってことを実現しようと全力疾走でしたよね。

「笑い」が必要だと考えていたときに、『あまちゃん』のオファーが来た

もんじゅ:2011年の12月にお会いしたときに「俺、ミュージシャンなのに、なにやってんだろうね。こんなことばっかりして」っておっしゃってましたけど、批判のなかでも突き動かされるように、福島市や福島県も巻き込んでフェスティバルを開催されたんですよね。

 たぶんあのころの大友さんは、肉体的にも精神的にも疲れのピークにいたんじゃないかと思うんです。そのときに、ご自身の本業であるミュージシャンっていうお仕事と、福島や東北のことを考えて発信していく、っていうふたつが交差するものがやってきた、それが朝ドラの『あまちゃん』というお仕事だったんじゃないでしょうか。被災地への思いと、ミュージシャンの本分、それらがリンクした。

大友:うん、そうなのかもしれない。でも、だからといって、そのために朝ドラを受けたわけじゃないですよ。ただ、オープニングテーマにはじつはそういう思いも込めてるよ。
 あれは2011年の福島の夏を通過しなきゃ生まれなかったものだと自分では思ってる。だけどじっさい、現場ではみんな、どんなにしんどくても笑っているんだよね。「生きてくには笑いがないとダメなんだ」って身に染みたのが2011年だった。あの年の5月にDOMMUNE(*ユーストリームチャンネル。震災直後から義援金を集めるなど、復興支援にも力を注いでいる)で発表した段階でも、俺は「福島からコメディがでてこなきゃダメだ」っていったけど、これは福島だけじゃなく東北全体にも通じることかもしれない。

 やっぱり、つぎへと進むのに最初に必要なものは「笑い」なのかもしれない、そう思っていたときに、ちょうどこの『あまちゃん』の話がきたから、自分の中では全部つながっている感じがしてる。しかも、宮藤官九郎さんの脚本って現実をごまかすような笑いじゃなくて、シリアスというか、けっこう厳しい笑いなんだよね。

『あまちゃん』はちょっといつもの朝ドラとはちがう

もんじゅ:ボクは大友さんから「『あまちゃん』、ほんとにいいから!」って聞いていたので、初日から観ることができたんですけど、最初の週に思ったのは、ちょっとこれはふつうの朝ドラとはちがうな、っていうことで。

大友:どういうこと?

もんじゅ:NHKの朝ドラの枠って、女性の成長物語じゃないですか。女性の、それもいたいけで強い女性の、ひたむきなビルドゥングスロマン(*教養小説。主人公がさまざまな経験を経て成長していく)なわけです。それが思春期から成人、あるいは老年期まで駆け抜ける、という……。

大友:そうそう、基本はそうだよね。

もんじゅ:でも『あまちゃん』は、母・娘・孫の3代に渡る親子関係が入れ子になった物語なんですよね。
 あたらしいと思ったのは、お母さんである春子さん(*小泉今日子演じる主人公の母親)が親になりきれてないし、娘としても卒業できていない、親離れできていない、という葛藤があるということ。成長するんじゃなくって、うまく成長しきれなかった、そこが序盤でていねいに描かれている。

いまの40代のかかえる等身大の悩みを描いている

もんじゅ:その「思春期の積み残し」を春子さんは親を憎んだり非難したりすることじゃなくて、自分自身がきちんとアキちゃん(*能年玲奈さん演じるドラマの主人公)の親になることで乗り越えていく、という入れ子構造になっているわけですよね。そこがすごくいまっぽい。

大友:そうだよね。たぶんこれって、いまの40代の人が抱えているリアルな部分でしょ?

もんじゅ:そう思います。いまは超高齢社会だから、40代、50代の人たちは、その親世代もずっと元気で生きているわけじゃないですか。だから思春期のときの「宿題」がそのままの人は、それが終わらないんですよね。
 これってけっこう文学でもテーマになっている気がします。去年、大佛次郎賞を受賞した水村美苗さんの『母の遺産』という小説も、50代の女性が母親を介護しながら葛藤に悩む物語だったり、映画化やドラマ化もされて大ヒットした角田光代さんの『八日目の蝉』も親子の物語だったり、女性作家の描く母娘ものって、現代のおおきなテーマのひとつだなって思うんです。

 それを男性である宮藤さんがさらっと書いていて、しかも深いんですよ。

大友:うん。あの人、どこまで意識してるかわからないけど深いんだよねぇ。あの帽子野郎が(笑)!って思うんだけど、ほんとに脚本読むとそう思うもの。こっちが脱帽です(笑)。

方言ひとつにも、じつは「中央と地方」の関係性が込められている

大友:方言ひとつとっても、東京から来た主人公の天野アキちゃんがとつぜん東北弁になって、対照的にずっと三陸に暮らしてきた足立ユイちゃん(*橋本愛さん演じる主人公の親友)が訛っていない。じつはこれってすごくふしぎなことでしょ? 俺みたいな地方出身者には、そのねじれがよくわかるんだ。

 それもさ、そこを理屈で説明しないで、足立家の家族みんなの方言の度合いなんかを描くことで、さらっと説明しちゃうんだよ。小泉今日子の訛りのなさ、あるいは訛りの出し方に、心境の変化が全部出ているじゃない? そういうのがちゃんとていねいに台本に書いてあるんだよね。「ここで訛る」とか「ここは標準語で」とか。宮藤さんの脚本は、じつは相当細かいの。

 この訛りの問題ってじつはすごく深くて、そこには地方と中央の関係が全部入っている気がするの。俺、深いところではこれって原発問題にまでつながるものが入っている、とすら思っていて。だから1冊目の台本を読んだときに、「なんだよ、この深さ」って思って。ジェームズ・ブラウンとか、フレディ・マーキュリーとか、ぽんぽん出てくる小ネタにだまされちゃうんだけど、おそろしいよ、あの人は。

もんじゅ:週に何回も泣いちゃいますね。

大友:泣くよね。俺、自分で演奏した音楽に泣いてるってどうよ、って思うんだけど、映像観てボロボロ泣いちゃって(笑)。

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