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「パブリック」--新しいP2P

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ジェフ・ジャービス著「パブリック」。ずっと積んであった331ページの大著ですが、めくり始めたら一気に最後まで行きました。

 印刷機以来のメディア進化によって生まれたパブリックとプライベートの概念がネットで破壊され再構築される、という分析です。

 ぼくは筆者の位置に近い。PrivateからPublicへ。「新しいP to P」の時代だと思います。その視点がオーバーラップした部分を抜き出し、紡ぎつつ、頭を整理します。

●プライバシーとパブリック


  本書は、プライバシー過保護への警鐘と、個人によるパブリック・コントロールの重要性を説きます。情報をいかに秘匿するかより、パブリックにしないデメリットとコストを考える場面が来たということです。

  まずは
「プライバシー擁護派は、僕に慎重になるべきだと言う。何もかもオープンにすべきでない、と。」
でも、
「僕はパブリックな存在だ。僕の人生は、オープンな物語なのだ。」
なのに、
「口を開けばプライバシーが議論され、未だかつてないほど僕らのプライバシーは保護されているように思える--おそらく過保護なほどに。」
そこで
「プライバシーについての感情的な表現や、根拠のない恐れや、漠然とした言い回しを避け、プライバシーについて語るときにそれがどういう意味なのかを検証してみたい。」
と説きます。そして、
「プライバシーに固執しすぎればこのリンクの時代にお互いにつながり合う機会を失う」
と指摘します。ボストン大学のN・ヴェンカトラマン教授
「かつて企業とは、顧客や商品と呼ばれる資産をもつ事業部の階層だった。今ではそれが、つながりと能力という資産をもつユニットのネットワークへと変化している。」
そう、それは個人と国家の関係だけでなく、企業を含む全ての社会構成員の問題です。

 ただ、それはコミュニティにより相対的なものでもあります。
「たとえば、グーグルのストリートビューに近所の通りを移されるのを嫌がるドイツ人もいれば、みんなに見てもらおうとグーグルの車に写真を撮ってほしがるアメリカ人がいるのはなぜだろう?」
「アメリカでは個人の財務情報は、おそらく医療情報の次に隠したいことだ。ノルウェーとフィンランドでは、国民の収入と税額が公開される。」
「アメリカでは、被疑者の身元を公開し、ウェブに写真を載せ、プレスのカメラの前で連行する。ドイツでは、有罪になった犯罪者の写真にも、目の部分にグーグルマンが使ったようなモザイクがかけられる。」
「2010年に、ドイツの連邦食糧・農業・消費者保護大臣であるイルゼ・アイグナーは、位置特定テクノロジーに顔認識機能を組み入れることを今後いっさい「タブー」とした。」
「2011年の日本の地震と津波といった災害で、被害者の行方をたどったりできるのでは?それもトレードオフだ。」

 日本でようやく成立したマイナンバー法も、ドイツ型、北欧型、アメリカ型と制度を比べればかなり違う。それはプライベートとパブリックの認識が各地でさまざまだからです。
「社会はパブリックになればなるほど安全になる。こう言うと、多くの人が不安がる。テクノロジーが政府を助けて、弾圧的な政権でさえも、僕らを監視し、僕らの行動を利用し、僕らの意に反してパブリックになることを強制するような恐怖を呼び起こすからだ。」
ただし、
「同時多発テロの日、僕はワールドトレードセンターにいた。・・・監視に対する僕の許容範囲は広い。今僕らは社会として許容できる共通の範囲を探っているところだ。」
ぼくも9.11にはマンハッタンにいました。その筆者との共通体験がパブリックに対する認識を近づけているのかもしれません。

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