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ニコ動を埋め込んだら著作権侵害等になる?

ニコニコ動画にせよYouTubeにせよ、埋め込みタグによって自分のWEBページに動画を貼り付けることができる。このブログでも散々やってきたことなのだが、改めて考える素材として、貼りつけた動画が著作権者以外の者の手になる場合に、著作権者から公衆送信権侵害が主張された事件が現れた。

大阪地判平成25年6月20日PDF判決全文

事案は、簡単に言うと、Xが上半身裸で店に行き、警察に事情を聞かれるという一部始終を自らニコニコ生放送で配信したところ、何者かがその動画をニコ動に転載し、ロケットニュースがそのニコ動の動画を記事に貼り付けて批判的に取り上げ、さらに批判的なコメントが集まった。そこでニコ生に配信したXがロケットニュース運営会社のYに対して、法的責任を追及したというものである。

争点は、ニコ動の埋め込みタグを使って貼り付けた行為が、著作権(公衆送信権)侵害になるか、著作者人格権(公表権)侵害になるか、そして批判的な取り上げ方とコメント不削除が名誉毀損となるかである。

この種のトラブルの多くの争点が集まっているので興味深いが、裁判所の判断は至極常識的なものであり、請求は全て棄却された。

まず一番注目される埋め込みタグを使った貼り付けが公衆送信権侵害になるかという点だが、以下のように判示して、公衆送信権侵害にならないと判断した。

この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。

すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。


要するに動画をコピーして貼り付けたのとは異なり、リンクを張っただけであり、閲覧者はリンクされた再生ボタンをクリックしてニコ動サイトからの動画配信を受けたのであるから、送信も送信可能化もしたのはニコ動であってロケットニュースではないというわけである。
事態の正確な認識に基づく常識的な判断といえる。

なお、元の動画が著作権侵害を構成していれば、これにリンクを張るのは幇助となるのではという問題もあるが、判決は以下のように判示して否定した。番号は引用者が付加した。

しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた(1)本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして,被告は,前記判断の基礎となる事実記載のとおり,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき,(2)原告から抗議を受けた時点,すなわち,「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。

このような事情に照らせば,被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは,原告の著作権を侵害するものとはいえないし,第三者による著作権侵害につき,これを違法に幇助したものでもなく,故意又は過失があったともいえないから,不法行為は成立しない。


ポイントは二点。
(1) 著作権者の許諾があるかどうか不明の動画にリンクを張るのは、直ちに違法になるわけではない。
(2) 著作権者から抗議があるなどリンク先の動画が著作権侵害物だと認識し得た時点で削除すれば、過失も否定される。

これまた情報の再利用者のできることを正確に理解した上での正当な判断である。

著作者人格権侵害については、その主張自体が「はあ、何いってんの」ともいうべき判断で一蹴されている。

名誉毀損の主張については、事実ではなく論評による名誉毀損と捉えた上で、確かに本件動画の報道はそれ評価Xの社会的評価を低下させるという、Xにとっても不名誉な話を認めた上で、公共性・公益目的については「インターネットを通じて不特定多数の者に動画配信を行うことを目的に,公道や飲食店などといった公の場で上記(1)記載のような撮影をした原告の行動」を報道する記事には公共性・公益目的が認められると判断した。
そして真実性についても争いはないので、名誉毀損は成立しないとした。

コメント欄削除義務違反の主張については、どれを削除するかをXが特定しようとしないし、訴訟中の弁論準備手続中にも特定されたら削除してもいいとYが述べたのに、Xが特定しないので、削除すべき段階にあったとはいえないとした。
これまた、地味だが、貴重な判断と言える。

以上のように、至極常識的な判断をしたものだが、著作権侵害物かどうか明らかでない動画を埋め込みタグを使って貼り付けた場合には、著作権者と名乗る人物からの抗議があれば、直ちに削除しないと著作権侵害の幇助責任が問われる可能性ありというところを、改めて自戒しておきたい。

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