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2000年以降の為替と貿易の推移の関係性を眺めてみる

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通貨の交換(外国為替)はモノの貿易に伴うもの以外に、投資やその他の支払や受取によっても発生し、今日では貿易以外の要因による通貨交換額の方が貿易伴う通貨交換額よりもはるかに大きくなっています。しかし、当然のことながら、通貨の交換比率(為替レート)は貿易にも少なからず影響を与えます。そこで、ドル円レート(東京市場17時月中平均)と貿易(通関統計概況品別通関実績数量・金額・単価)について、2000年1月から2013年4月までの160ヶ月間の月次推移を比較してみることにします。

日本の輸出総額のうち6割以上は「機械類及び輸送用機器」が占めており、また自動車関連だけで輸出全体のほぼ4分の1を占めています。具体的な構成は下のグラフのようになっています(2012年暦年ベース)。

2012輸出blog.png

「機械類及び輸送用機器」(通関統計概況品コード 7)の輸出通関金額と前年同月比増減とドル円レートを、関連性を検証しやすいように倍率を調整してグラフに描いてみました。それが下のグラフです。



2004年1月ころからリーマンショックの2008年9月ころまでの90ヶ月以上の間にわたって、「機械類及び輸送用機器」輸出通関金額の前年同月比増減とドル円レートは非常に似通った推移をしているように見えます。言い換えると、輸出額は為替レートときわめて相関性が高かったということが推定できます。ところが、リーマンショック以後、すなわち2008年10月以後は、その関係性には大きな変化が生じているように見えます。言い換えると、輸出額と為替レートの相関性は薄くなったのではないかという推定がでてきます。

リーマンショックの前月の2008年8月から2009年11月までの16か月間も前年同月比減が続き、輸出額はピークの2007年3月の4兆9,467億円からボトムの2009年2月の2兆1,247億円まで約6割(57%)も減少しました。このような貿易額の急激な縮小は世界経済の危機に直面したと言っても過言ではありません。1年半近く経過した2009年12月にようやく輸出額は前年同月比増に転じましたが、2011年3月に2008年3月の7割の水準に回復したところで頭を打ち、2011年4月以降は再び概ね前年同月比減の傾向を続けています。

他方で、為替レートの方を見ると、リーマンショックの1年3ヶ月前の2007年6月に円安のピーク(月中平均122.6円)をつけた後、何度か揺り戻しはあったものの、2011年10月のボトム(月中平均76.7円)まで52ヶ月も円高ドル安進行の基調が続きました。そしてその間に円は37%も切り上がったことになります。輸出額の回復がピークの7割の水準で頭を打った原因のほとんどはこの円高の急速な進行によるものだと推定することができます。

さて、為替レートは、2011年11月のボトム以降、行き過ぎた円高ドル安の是正の方向に動こうとする気配が感じられますが、本格的で急激な是正が始まったのは2012年12月からです。2013年4月の月中平均は97.7円ですから2013年6月時点現在の推移とほぼ同水準にあります。これによって円は2011年10月の水準から27%切り下がったことになります。しかし、貿易額の方は2011年10月の水準から3割近く増えているようには見えません。

あえてその理由を推定すると、円安ドル高進行の期間は円建て輸出価格が上昇し輸出数量も横ばいないしは増えましたが、円高ドル安進行が長く続いたために円建て輸出価格が低下し採算性の悪化が続いて輸出数量が減少してきたと考えられます。輸出数量の減少は生産拠点の海外移転などによって進んだと考えられ、したがって、急に円安に振れて輸出採算性が改善しても直ちに輸出数量が回復するようことになっていないと考えられます。

問題は、円高是正によって「機械類及び輸送用機器」の輸出企業が日本国内に生産増強投資をどんどん進めるかどうかにあります。しかし、為替水準は輸出が好調に推移していたときの122円に対してはまだまだ円高の水準にあり、生産投資先を海外から国内に戻す動機としてはまだまだ十分ではないように見えます。

数量ベースの通関データを見るにはもっと品目を絞らなければなりません。そこで、最大の輸出品目である「自動車」(通関統計概況品コード 70503)の動向を見てみます。それが下のグラフです。



「自動車」の輸出価格は細かいところでは概ね為替レートに連動しています。これはドルベースの価格を円高に連動して上げることはできないからです。また、リーマンショックまでは、為替の動向(円安・円高)に関わらず、輸出数量は一貫して増加を続けていました。これは円高による採算性の悪化を生産性の向上である程度カバーできてきたので、生産能力を増加するための日本国内への投資も行われていたと推定できます。

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