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  • Lilac

グローバル化を前提としたキャリア設計

以前からこのブログでも書いているように、私は日本に一人当たり生産性の高い、高機能移民を呼び込むことに賛成だ。インドからエンジニア、フィリピンから看護師、介護士や英語教師、中国・台湾から優秀な留学生を呼び寄せて就職させればよいと思っている。また、日本のグローバル企業が、次々と外国人や留学生を採用する「グローバル採用」が増えているが、これはあるべき姿だと思っている。こうならなければ、日本が経済力を維持し、日本企業が成長し続けることは難しくなると考えているからだ。

そういう時、必ずコメントされるのが次の内容。「Lilacさんは、優秀な中国人が流入しても自分は絶対勝てると思ってるから言えるんです。中国人に採用を奪われて職に就けない今の若い人の立場を考えて下さい。絶対に言えないと思います」

本当にそうだろうか?仮に、私が中国人に職を奪われるからグローバル採用をやめるべきと論じ、日本企業が呼応したとしよう。それで日本や日本企業が競争力を維持出来るのか。タイタニックが沈んでしまったら、短期的に雇用を維持できても仕方が無い。

世界は確実にグローバル化に向けて動いている。そして日本企業は熾烈なグローバル競争の中で自らが生き残れる道を模索するし、日本のためにもそうであるべきだ。

2000年代の初め頃、アメリカでもこういう論争があった。当時、IBMやマイクロソフトなどの企業がSIやソフトウェア開発分野をインドへ大量にアウトソースし、かわりに米国国内のレイオフを行った。

その結果、米国じゅうのメディアがこれらの企業をつるし上げた。CNNなどの大手メディアは「IBMは米国の雇用(US Jobs)をインドに売り渡している」というような挑発的な見出しで報じた。CNetやZDNetなどネットメディアのコメント欄炎上(Flaming)ぶりはすごかった。「マイクロソフトはアメリカから技術を流出させ、雇用を出す売国奴だ」「パルサミーノ(IBMのCEO)は自社の業績のために米国の雇用を売りに出した」というように。この流れは多少和らいだが続いており、今でも大きなオフショアがある度にたたかれている。

しかし、世界はグローバル化し、すべての職業は国を超えて流動化している。かつて米国で起こり、今日本で起こっているように。このグローバル化の動きをまとめたのが、トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」だ。


フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
トーマス フリードマン
日本経済新聞出版社
フラット化する世界 [増補改訂版] (下)
トーマス フリードマン
日本経済新聞出版社


今世界中で、業務のアウトソースが起こっている。しかし、インド人が如何に優秀でも、全ての仕事をインドにアウトソースすることは出来ない。現実的には、切り分け可能な作業がアウトソースされ、アメリカ人はより付加価値の高いプロセスだけに集中して取り組まざるを得なくなる。具体的には人間どおしの触れ合いが必要な営業や高度な分析、提案などの考える作業だ。

結果として、実際アメリカ人はより付加価値の高い仕事をし、高い給料をもらうようになった。アメリカの一人当たりGDP(国民総生産)は、日本人の約1.5倍だ。さらには、米国の白人の中でも大きく二極化した。付加価値の高い仕事が出来る人は高い生産性で働き高い給与をもらう。キャリア設計を誤って出来ない人たちはレイオフの繰り返しだ。

例えばシステム開発分野では、一部の人しか習得していない複数の言語が扱えたり、アナログ設計などが出来る技術者は引っ張りだこで、誰でも出来ることしか出来ないエンジニアは、レイオフされて職を変えたり、雇用が不安定になった。前者は、オフショアで仕事が効率化され、付加価値の高い仕事に集中できることを喜び、後者は、不安定な職をふらふらしながら、ネット上でインド人に文句を言っている。

日本企業による「グローバル採用」は、米国のアウトソース事例よりもシビアだ。事業開発や製品開発など、単純作業以外の仕事も流動するからだ。それでも、中国の市場開拓の仕事が中国人の仕事となり、日本人の手には日本人にしか出来ない仕事が残る。企業文化の強みを生かして、グローバルな組織に伝達し、商品開発から販売まで一貫した組織を作ること、各分野での専門的なスキルなどだ。

世界は確実にグローバル化に向けて動いている。だったら世界が動く方向を見据えて、それに向けて自分が勝てる方向にキャリア設計をしたらどうだろう?日本にいながら、グローバルに強みを発揮し、勝てる分野は何か?(私は素材と部品とB2Bの電機、つまり重電系だと思う)企業が中国人を採用することを批判するのではなく、そのうち中国人やインド人に奪われかねない、付加価値が出せない仕事は選択しなければよい。(専門性をつけるのが鍵だと私は思っている)

自分がなんとなく目指すキャリアを前提として、世界の動きを批判しても意味が無い。世界の動きを前提とし、「攻め」の姿勢で自分のキャリアを設計しよう。そうでなければ二極化の下の方に追いやられてしまう可能性もあるだろう。

参考記事



日本でも転職を前提とした就職が当たり前になる時代−My Life After MIT Sloan (2011/01/29)
今年成人を迎える人たちって大変な時代に生きてると思う−My Life After MIT Sloan (2011/01/10)

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