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ローマ法王が差別表現「キャリア主義はハンセン病」

カトリック・ヘラルドの6月6日付記事によると、ローマ法王フランシスコが「キャリア主義はハンセン病だ。(Careerism is leprosy, leprosy! Please no careerism.)」と語った。カトリック聖職者や教皇庁スタッフの育成機関Pontifical Ecclesiastical Academyで行われた演説のなかで、聖職者らの過度なキャリア主義を批判する文脈で使われた言葉だ。その演説内容自体に問題はないが、ハンセン病を悪いもの、ばかげたものの象徴という意味合いで使っていることは明らかに差別表現だ。

今年3月に新ローマ法王に就任したばかりの法王フランシスコは、史上初めての南米アルゼンチン出身で、貧者と共に清貧生活をしてきたことから高い評価を得てきた。「清貧の聖者」アッシジの聖フランシスコの名を使ってもいる。聖フランシスコといえば、ハンセン病患者と出会ったことで改心し、以降、患者に尽くし生きてきたことで有名な聖人だ。フランシスコの名をもらった新法王も、旧約聖書の時代から歴史的に差別され、虐げられてきたハンセン病患者の悲しい歴史、そして完全に治る病気となった今もなお差別に苦しむハンセン病回復者の気持ちを理解しているものと思っていた。

それが今回の表現には落胆させられた。それほど意識していなかったことは想像されるが、世界10億人の信者と、それらの人々に強い影響力を持つ聖職者を指導する立場であることを考えると、あまりにも軽率だったのではないかと言わざるを得ない。私の友人である米国のハンセン病回復者も、この表現には強いショックを受けていた。せめて、教皇庁のスタッフがこういった不適切な表現は修正なり、注意書きをして公表すべきだったと思う。

現在、ハンセン病に新たに罹る患者は年間約20万人だが、世界には1千万人近くのハンセン病回復者が生活している。感染力は弱く、完全に治る病気になったにも関わらず、世界中で多くの方が今なお残る差別と偏見で苦しんでいる。その問題の深刻さから、2010年には国連総会でハンセン病差別撤廃決議が全会一致で採択された。そこで決議されたガイドラインにもハンセン病の差別的表現を使用しないことが明記されている。私も日本財団の仕事として、この決議の周知と実行のために世界各国を回っている。2009年にはローマ教皇庁を含む世界の宗教指導者から賛同を得て、差別撤廃のグローバル・アピールも発表した。だからこそ、今回のことは残念でしかたがない。

「言葉狩り」をするつもりはないが、影響力のある立場にある方だからこそ、正しい理解をしていただきたい。自分はなんともないと思っていても、軽率な表現でつくられるイメージが根強い差別の原因にもなってしまう。今回の発言はインターネットをみるかぎり、まだ国際的な問題にはなっていないようだ。そこにこそ、この問題の深刻さ―声を挙げられる人がいない、マイナー問題として見過ごされる―という課題が垣間見られる。

個人的にはローマ法王を尊敬しているが、だからこそ、この問題について深刻に考えていただき、世界中の信者や聖職者たちにも正しい知識と理解を広めていただきたいところだ。

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