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「絶対してはいけないのは、鼻が詰まることと目を充血させること」~元フジテレビアナウンサー・長谷川豊氏インタビュー~

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「とくダネ!」のプレゼンターして知られる元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏(撮影:野原誠治)
「とくダネ!」のプレゼンターして知られる元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏(撮影:野原誠治) 写真一覧
先日、自身が退社に至るまでの経緯をブログで公開し、大反響をよんだ元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏。そんな長谷川氏に、「アナウンサー」「テレビ局社員」という仕事の実態や今後の活動について語ってもらった。【取材・執筆:永田正行(BLOGOS編集部)】

ブラック企業のような”アナウンサーという仕事”


――「テレビ局のアナウンサー」というと、華やかなイメージがありますが、その具体的な仕事の内容というのは知られていない部分が多いと思います。最初に普段アナウンサーとして、どのような仕事をしていたのかを教えてください。

長谷川豊(以下:長谷川):アナウンサーと一口に言っても局によって違いますし、色んなタイプがいます。

僕が担当していたのは情報番組ですが、その中でもスタジオ回しなのか、それともプレゼンテーションをするのか、でまったく仕事が違います。スポーツ実況担当のアナウンサーなどもまた仕事内容が違います。

また、バラエティ担当のアナウンサーもいます。バラエティ番組をどのように盛り上げるのか。一リポーターとして関わるのか、メディア担当として参加するのか、司会進行としてやるのか。これらによって、また業務内容が違うんです。スポーツ番組のキャスターは、基本的にはスタジオ回しもするし、現場の取材もする、という人が多いですね。それぞれかなり違いがあります。ナレーション担当の人間はもうナレーションブースに入りっぱなし、という人もいますし、アナウンサーはそれぞれ本当に仕事が随分違います。

僕の場合、平日は情報番組のプレゼンター、かつ取材者という立場で関わっていました。大体毎朝4時半起きで、5時半には出社していました。なので、5時ぐらいに家にタクシーあるいはハイヤーといった、その時一番安い交通手段が迎えにきます。出社すると、前日の夜に打ち合わせた内容を最終確認します。その時には、朝の“早刷り”という新聞が届いているので、その新聞の論調と照らし合わせながら自分たちが、視聴者にお伝えするニュースの中身を精査します。

さらに、6時からスタッフたちとの打ち合わせ、画面に出すマルチ画面の打ち合わせ、最終確認とチェックを行い、朝7時ぐらいからはMC打ち合わせ、と打ち合わせが続きます。僕の場合は朝の「とくダネ」という番組をやっていましたから、小倉さんなどと打ち合わせをするわけです。こうした流れを経て、朝8時からは生放送です。生放送には原稿などが一切ありませんので完全にニュースの中身、スタジオの流れを頭に入れた状態でフリートークをしていました。

――番組は2時間ですよね。放送が終わった後は何をしているのでしょうか?

長谷川:番組終了後、もしくはプレゼンが終わった直後に「飛び出し」といって次の取材に向かいます。そして、車、新幹線、飛行機などで移動する最中に厚さ2~5センチほどの資料を読み込んで、頭の中に全部叩き込みます。そして、現場で取材するわけです。

こうした取材も事件現場なのか事故現場なのか、それとも政治の現場なのかで取材の方法が全部変わります。こうした取材は基本的に他局さんがいる間はずっと続きます。「とくダネ」の場合は自分たちが先に帰るということはなかったですね。こちらが帰った後に、事態が動く可能性というのも否定できませんからね。

そして、だいたい20~22時には帰ってきて、そこから翌日のプレゼンテーションの打ち合わせをします。ニュースも「1,2,3,4,5」の順番で伝えるのか、「5,1,2,3,4」の順番で伝えるのか、「1,3,5,2,4」の順番で伝えるのかによって伝わり方や見え方がまったく違いますから、そうした見せ方の打ち合わせをします。

それからマルチ画面の作成に入ります。「マルチ画面もこういう風にした方がプレゼンしやすい、分かりやすい」というものを作ります。こうした作業は、大体0時に終われば随分早い方で、1~2時まで掛かることもあります。そこから数時間の仮眠をして振り出しに戻るわけですね。

――3時間寝られれば良い方といった働き方なわけですね。

長谷川:色んな空き時間に寝られますね。移動の時間に資料を速読して読み切って頭に叩き込めば、後は寝られますしね。

――休みはいつ取っているのでしょうか?

長谷川:月に一日あるかどうかでした。ただ、僕は特殊でしたよ。フジテレビでも働いている日数が飛びぬけて多いアナウンサーでしたからね。普通の人たちは週に一日か二日は最低でも休みますよ。

――「アナウンサー」というとスタジオで喋るのがメインの仕事というイメージがあるのですが、どちらかというと移動時間に資料を読んだり、実際に現場に取材に行ったりという画面に映らない業務も多いわけですね。

長谷川:僕の場合はそういう特殊なリポーター業でしたね。一昔前まではフリーのそういうリポーターの方々、例えば日本テレビの「スッキリ」の阿部さんたちのような方がいました。彼らと同じ仕事をやっていたので僕はやや特殊です。

一般的なアナウンサーの方々は、夕方のニュースを読んだりしますので、朝、電車で通勤して、報道局で打ち合わせをして、原稿が出てくるのを待ちながら新聞を読んで、原稿の下読みをして、スタジオで原稿を読んで、反省会をやっておしまいという流れです。

――朝の情報番組であれば、経済学者や外交の専門家など「識者」と呼ばれるような方もスタジオにいますよね。そういう方と抜き打ちでフリートークするということは、ご自身の知識・見識も問われるわけですから、そこは非常にプレッシャーだと思うのですが。

長谷川:ニュースを伝える以上は、そのニュースについては少なくとも日本で一番詳しい人間でいなければいけない。同率1位はいても良いのですが、自分が2位であってはならない。そういう気構えで臨んでいたので、準備には時間が掛かりましたけどね。

――ですが、視聴者にはそういう努力は余り伝わらないですよね。どちらかというチャラいイメージをもたれていると思うのですが、そうしたストイックな部分がないと生き残っていけない世界なのでしょうか。

長谷川:そうですね。みんな好きでやってますしね。視聴者の皆さんの為にそれぐらいはやりますよね。ただそれを僕がやってしまうと、今度はMCが消えるんですよね。なので、「偏った感情の注入」という言い方をするのですが、出来るだけ僕が偏った意見を言ったりして、それを小倉さんが是正するという形にする。

これによって番組というのは美しく見えるんですよね。絵に汚い色がないと美しく見えないのと同じように、そういう演出というのはそれぞれ役割を持ってやってましたね。

――単純に意見・見識だけではなく、番組内におけるご自身の役割みたいなものも意識しながらやっていたわけですね。

長谷川:そうですね。「現場ではこういう温度感なんですよ」というのは小倉さんとのMC打ち合わせの時にちゃんと伝えておいて、その上で僕たちが道化役を引き受けるというのがプレゼンターの役割でした。

他にも、出来るだけ語尾を強めて話すことでキツイ印象を与えることができる、といったことを意識していました。自分がそうすることで、直後に話す笠井信輔アナウンサーが柔らかく見える。そういう演出も考えた上でやっていましたね。

――そういう見えない努力があるわけですね。花粉症の季節でも、テレビでアナウンサーがくしゃみしているところは見たことがありませんしね。

長谷川:僕たちが絶対してはいけないことは、鼻が詰まることと目を充血させることです。熱が38度あろうが39度あろうが、一気にテンションを上げればその瞬間は乗り切れますから。終わった瞬間ぶっ倒れますけどね。

――ブラック企業みたいですね。

長谷川:ええ、ブラック企業ですよ、本当に。

時給換算すると、多分マクドナルドのアルバイトと同じぐらいじゃないですかね。それぐらいの時間は働いていますね。僕は5~6年の間、残業が150時間以下だったことはほとんどないと思いますよ。僕は毎月200時間ぐらい働いてましたから。

――ちなみにネット上においては、「フジテレビは韓流推しがヒドイ」という認識があるのですが、内部にいた人間としてご存知のことはありますか?

長谷川:僕がニューヨークにいた時期と重なるので、まともにわからないんですよね。だから、デモがあったことをYahooニュースで知りましたよ。

――そもそもフジテレビはフジサンケイグループですし、産経新聞の論調は右よりですよね。

長谷川:そうですね。どちらかと言うと、右傾化の傾向はあると思います。でも、ネット見ていると「フジはまるで左」みたいなことが書いてある。だから、Yahooのニュースでそういうデモが行われているというのを見て、本当にピンと来ませんでした。

僕はその時日本にいなかったので確かなことはいえませんが、フジテレビが韓流とか左ってことはないと思いますけどね。僕がアメリカに行っている1年の間に急激に何かが変わったのかもしれませんが。

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