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わたなべ美樹氏「離職率や平均残業時間といったデータを開示することには大賛成だ」

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先日、7月に行われる参議院選挙に自民党から立候補することを明らかにしたワタミグループの創業者・わたなべ美樹氏。この立候補会見直後のわたなべ氏に話を聞くことが出来た。同氏のブラック企業に対する考え方や政治家として取り組みたい分野などについて、ノーカットでお届けする。【取材・執筆:永田 正行(BLOGOS編集部)】

ワタミのような企業の「どこがブラックなのか?」

先ほど記者会見で、「若者に対する支援」という部分で質問が出た際には、ベンチャーや起業家支援を行っていきたいというお話でした。しかし、ほとんどの人はサラリーマンであり、労働者です。安倍政権では、解雇規制の緩和などが議論されており、「労働者がクビにされやすくなってしまうのではないか」という指摘もありますが、この点についてわたなべさんのご意見をお聞かせください。

わたなべ美樹氏(以下、わたなべ):昨今、「終身雇用」「年功序列」といった経営姿勢が、「近代経営ではない」「アメリカ的ではない」と批判されています。ただ僕は、これらは非常に日本的な経営だと思っていて、終身雇用も年功序列もあって良いと考えているんです。

僕は企業というのは一つの家族的な集合体だと思っているんです。だから、社員は家族だと思っています。ただ、その中でやはり努力した人が報われる、一方で努力しない人の給料が上がらないというのが、平等であるというのも確かだと思っています。その兼ね合い、バランスというのが経営にとって一番重要です。

例えば、ワタミの場合、年功序列ではなく職務給制度なのですが、家族手当などの福利厚生を厚くすることによって、長く務めていれば給料はしっかり上がるという、両方のバランスをとりながら給与体系を組み立てています。だから僕は単純に「クビをきりやすくすれば実態経済の成長に寄与する」とは思いません。しかし、かといって「ただ守ればいい」というのも違うという風に考えています。

―また、先程の記者会見で「若者が夢をもてない」という指摘がありました。就職活動が上手くいかなかったり、入社してもすぐにやめてしまったり、という問題もありますし、ワタミ自身「ブラック企業」という批判も受けています。自民党は比較的、高齢者の支持が強い政党というイメージもあって、「俺らのことも考えてくれるのか」と不安を感じている若者も多いと思うのですが。

わたなべ:もちろん、若い人のことも考えていますし、若い人が元気がないと元気な日本はできません。それは間違いないでしょう。

ただ、「ブラック企業」ということにあえてコメントさせていただくと、何をもって「ブラック企業」なのでしょうか。仮にワタミが法律に違反しているのであれば、それはブラックでしょう。しかし、法律には違反していません。では、離職率の高さなのか。これは業界平均より高くないわけですから、ブラックではありません。では、給与が低いのか。これも平均よりも高いので、ブラックではありません。さらに、メンタルヘルス不調により休職している人間が多いのか。これも平均を下回っています。

僕は、様々な企業の数字をオープンにすることで、それこそ新入社員が入ってすぐやめてしまうような事態を防ぐことには大賛成です。例えば、先日共産党の議員が安倍首相に「離職率などの数字をについて企業はディスクローズするべき」と意見していました※1が、僕は賛成です。大賛成ですよ。

しかし、ワタミのような企業の「どこがブラックなのか?」と。おそらく一部の人の気に障ったんでしょう。何が気に障ったのはわかりません。それは僕の存在かもしれない。それでブラックだブラックだといわれる。ただ、うちで働いている人間は、3万人以上います。もし本当にブラックだったら、みんな働いていませんよ。そうでしょ?この間も7千人の社員と、ワタミが29周年のイベントで、みんなで涙を流しながら「よかったね」と言っている会社のどこがブラックだと僕は思うわけです。

だからこそ、正しく情報を提供することには賛成です。しかし、「ブラック企業」という一人歩きの言葉でユニクロを含めた一部の企業を叩くのは、これは僕は"ペンの暴力"だと思います。

―では、「離職率」「賃金体系」「社員のメンタルへルス疾患の罹患率」といった数字を公開することには大賛成だとおっしゃるわけですね。そして、それを公開した結果としてワタミは「ブラック企業」ではないと?

わたなべ:そうですね。今日からでも、ホームページでオープンにします。厚生労働省の基準はもちろん、一部上場企業の平均も下回っています。

―では、ワタミのことは一端置いておいて、一部でそうした「ブラック企業」があるのは事実ですし、社会問題化しています。それに対する対策としては、今お話いただいたように、数字をオープンにする方法があると思いますが。

わたなべ:それは大賛成ですよ。あと平均残業時間は何時間なのか、というデータも公表すべきでしょう。36協定※2があって、その上で期間ごとに何時間以上は絶対ダメ!という規定があります。そうしたルールよりもワタミの残業時間は遥かに低いわけです。

なので、今まで述べた4つ「離職率」「賃金体系」「社員のメンタルへルス疾患の罹患率」「平均残業時間」を公表すれば、僕は非常によい目安になると思っていますよ。例えば、これらの数字が4つとも業界の中で、ベスト3に入っていましたというのであれば、それはブラックでしょう。そういう企業を、みんなが「あそこはブラックだ」というのであれば僕は理解できます。

―では、自民党が参議院選の公約に「ブラック企業の公表」を掲げるのではないか、と報道されていますが、これには賛成ということでよろしいでしょうか?

わたなべ:賛成ですよ!かえって、その方がブラックじゃないのに「ブラック」といわれているところも冤罪が晴らせますからね。「もう頼むよ」という感じです。

―しかし、経営者の視点からすると、こうした法制度による規制は不利ですよね。単純に利益だけを求めるのであれば、サービス残業を従業員にさせられた方が合理的です。 

わたなべ:それは一般的な経営者の考え方かもしれませんが、僕は違います。僕は、そんな考え方していないし、やはり企業というのは、社員が幸せで、社員が明るく働いているというのが、企業が存在する第一義だと思っていますから。

―一部で「そうした働き方では日本の企業の競争力が落ちるのではないか」という指摘もありますが。

わたなべ:落ちないでしょうね。何故ならば、社員が明るく働くことが最大の競争力だから。

―記者会見では、現在は世界の様々な国で事業を展開しているという話もされていましたが、日本人であれば、労働時間をある程度規制したとしても高い生産性で勝負できるとお考えですか?

わたなべ:世界中に店舗がありますが、僕は日本のやり方を全部海外に持っていって、すべて同じやり方でやっています。つまり、国ごとにあわせていないんです。最初は、ローカライズして失敗しました。国ごとにカスタマイズせず、どの国でも「理念経営」ということでやっているのですが、これは僕は世界中共通だと思っています。つまり、効率守って、明るく働く。それが一番生産性が挙がって、一番競争力があると思っています。

ただ、これは誤解を恐れずに言いますが、例えば、とある学校は20年間定年退職以外の退職がなく、離職率がゼロでした。じゃあ、それをもって、その学校は本当にいい学校だといえるでしょうか。言えないでしょう。自分達のことしかやってないし、生徒のことなんか考えていない。そして、結果的に経営が行き詰るわけです。だから、僕は離職率ゼロが100点満点ではないという前提で、事実を見なければいけないと思っていますよ。

編集部注
※1:日本共産党の山下芳生議員が、5月14日参議院予算委員会で「ブラック企業」に対する質問を行った。その際、山下議員は、企業における新入社員の離職率の高い企業の公表、募集要項に離職率の明示をするように総理に提案している。※参照
※2:36協定とは、労働基準法36条の規定から生まれた略語。労働時間の上限は労働基準法によって定められているが、繁忙期などのため企業が労働者と協定を結び、労基署に届け出ていれば、この上限時間を超えて労働させた場合でも刑罰を免れることができる。※参照

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