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住宅ローンの金利は今後どうなるのか? ~借り換えと新規購入の両方に言える事~

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住宅ローン金利の上昇を、昨日報道各社が一斉に伝えた。朝日新聞では朝刊の一面で「住宅ローン金利引き上げ 来月分大手行、2カ月連続」として、10年固定が0.1%~0.2%上昇すると報じている。

すでに6月の住宅ローン金利を公表しているソニー銀行では、10年固定が1.406%から1.692%へ、0.286%も上昇した。この上昇幅についてソニー銀行は「1ヶ月でこれだけ上がる事は滅多に無い」とコメントを出しており、15年~20年超の固定金利も0.1%~0.2%ほど上昇している。■変動から固定へのシフトが一気に始まった。
これを受けてすでに住宅ローンを借りている多くの顧客が変動から固定への乗り換えを検討し、新規にローンを組む購入予定者も一気に固定へ流れていると言う。5月21日のワールドビジネスサテライトでは購入予定者の77.4%が固定金利での購入を検討していると伝えられた。

これらの動きは全て4月4日に公表された日銀の「異次元金融緩和」による金利上昇がきっかけとなっている。金利を引き下げるつもりがかえって上昇してしまったのが、ここ1.2ヶ月の金利の動きだ。

従来、自分は固定金利と変動金利の違いは損得の違いではなくリスクの違いである、将来の金利は事前に分からないと考えれば「固定金利はベストではなくてもベターな選択肢である」と説明してきた。この説明は今後もなんら変わりは無いが、昨今の動きをみていると金利について根本的な誤解もあるように思う。

■変動金利は上がらない。
まずは変動金利について、これはすぐに上がる状況では無い。こんなに金利が上がっているのになぜ?と思われるかもしれないが、以下のシンプルな関係を参考にされたい。

※連動するのは・・・
変動金利 → 短期金利 (原則として日銀がコントロール)
固定金利 → 長期金利 (マーケットで売買される10年国債の価格で金利が決まる)


現在上昇しているのは長期金利だ。住宅ローン金利は何に連動するかというと、変動金利は短期金利に、固定金利は長期金利に連動する。つまり連動する金利が違う。短期金利は上がっていないので、変動金利も上がっていない。

では短期金利と長期金利、それぞれがどのように決まるのか。これは両者で全く異なる。上に書いたとおり、日本銀行(日銀)がコントロールするのが短期金利で、マーケットで決まるのが長期金利だ。現在は金融緩和の真っ最中なので、日銀が短期金利をいきなり上げる事は考えられない。したがって、変動金利が来月とか再来月に急上昇する可能性は極めて低い。ここは多くの人が勘違いしている部分だ。

長期金利は景気変動、物価変動、信用不安など、様々な要因で国債が売買され、それが結果的に金利を上下させる。今の金利上昇は景気回復を織り込んだ「良い金利上昇」だと言われるが、ギリシャのようなデフォルトリスクを織り込んだ信用不安による「悪い金利上昇」だという指摘もある(この話は今回の記事とは関係が無いのでこれ以上言及しない)。

自分は現在のような低金利ならば長期固定の借り入れ・借り替え自体は正しい行動だと思うが、変動金利がいきなり上がるという予想は間違っている。ここはぜひ正確に認識をされたい。

■日銀は金利を引き上げるか?
日銀は何を基準に短期金利を上下させるかというと、基本的には物価を基準としている。物価上昇を抑えたい時は金利を引き上げ、景気を良くしたい時は金利を引き下げる。結果として金融緩和で物価上昇が起きる可能性がある。

金利の上下はアクセルとブレーキのようなもので、現在はゼロ金利で下限一杯まで金利を引き下げアクセル全開の状態だ。それでもまだ不景気なのでさらなる金融緩和をするにはこれ以上の事をやらなければいけない……という事で、従来から国債や株を大量に購入してきた。この規模を思い切り拡大したのが現在の異次元金融緩和だ。

ただし、総理のブレーンと言われる経済学者の浜田宏一内閣官房参与は海外メディアの取材に、金融政策について従来と大きく異なる発言をしている。「2%のインフレ(物価上昇)は手段であって、目標はあくまで経済成長。1%のインフレで経済成長の目標が達成できるのであればそれに越した事は無い」と、何が何でも2%のインフレを目指すという日銀の目標とは随分異なる内容だ。この発言は今後の金融政策、ひいては金利の動向にも影響を与える可能性は高い。

「インフレ率が2%になるまで日銀は短期金利を上げない、だから変動金利もそんなに簡単に上がらない」と、中途半端に知識がある人ほど誤解しているようだが、そうはならない可能性は十分ある。政策は一度決まっても変更はいくらでもありうるので、注意が必要だ。

では今後金利はどうなっていくのか。これは変動と固定の金利差が拡大するという形になるだろう。

■金利差の拡大で起きる事。
例えば、みずほ銀行の変動金利と固定金利(35年・全期間固定)の金利差は、現在1.175%~1.375%となっている。幅があるのは長期金利が2.25%に対して、変動金利は頭金の割合や審査内容によって0.875%から1.075%まで幅があるからだ。

過去の推移を考えると、現在の金利差はほぼ最低水準だ。この状況は過去1年ほど継続していたが、今後は変わる可能性が高い。つまり金融緩和中なので変動金利は横ばいとなる一方、長期金利が上昇傾向に入ったとすれば固定金利も上がる。結果として金利差が拡大する、という状況だ(他行やフラット35なども併せて考えると、過去には2%程度の金利差があった時期もある)。

以前から言われていた事は「金利が低いうちは変動金利で借りて、金利が上がり始めたら固定金利に乗り換えれば良い」といったテクニックだ。これは一見すると正しそうに見えるが「固定金利と変動金利は同じように動く」という間違った前提がある。株価が景気に先行して動くように、マーケットで決まる長期金利は短期金利に先行して動く。

現状では将来変動金利が動き初めてから固定金利に乗り換えるのでは手遅れとなる可能性がある。ローン残高が大幅に減っていればあまり問題は無いが、物価上昇が急激に進み、早期に短期金利が引き上げられた場合、ローン残高が多ければ利息負担の増加も大きい。その時点で固定へ乗り換えて金利変動リスクから逃げたいと考えても、固定金利は先行してもっと上がっている……という事だ。

変動から固定への乗り換えは「変動金利の上昇」ではなく「固定金利の上昇」を見て決めるべきだ。現在の借り換えブームは変動金利がすぐに上がってしまうという誤解に基づいているようにも思うが、それが固定金利への乗り換えという正しい行動につながっているのは、何とも奇妙な状況だ。

■今後どうすれば良いのか。
変動金利で借りても良い人は、借り入れ額が少ない人、借り入れ期間が短い人、金利上昇で返済額が増えても問題が無い人、つまり金利上昇リスクが少ない人かリスクに耐えられる人だけなので、全体からみれば少数派だろう。また、そういった人でも変動金利で借りた方が必ず得をするわけでもないので、金利変動をヤキモキしながら見ているのが嫌な人は固定金利の方がましだろう。

また、今は問題が無くても、将来収入が減る、住宅とは全く別の問題(病気や怪我、両親の介護など)が発生するなど、どれ位リスクに耐えられるかはその時々で大きく変わる。株式投資ならば失敗したと思えばいつでも逃げられるが、住宅ローンからは簡単に逃げられない。

つまり、金利変動リスクは単体で考えるのではなく、その他のリスクも併せて考えなければいけない。これは他に誰も考えてくれないので完全に自己責任だ。住宅購入を考えている人に、普段のレッスンや相談でこのような話をすると「そこまで考えていませんでした」と言われる事も多い。考え過ぎると買えなくなってしまうという問題もあるが、少なくとも事前にリスクを考えておいて損をする事は無い。

■リスクという視点。
固定金利が変動金利より高い理由は金利変動リスクを避けるためのコストが上乗せされていると考えれば良い。つまり金利の選択は金利変動リスクを貸し手と借り手のどちらが背負うのか?というリスクの問題であって、どちらが得か?という損得の問題ではない。

たまに見かける「変動金利の上がり方がこれ位ならば固定金利よりも変動金利の方が得」といった将来のシミュレーションもほとんど意味が無い。金利は株価と同じで予想出来ないからだ。株価が毎年5%づつ順調に値上がりすれば30年後にあなたはこれ位儲かってますよ、と言われて信じる人は居ないだろう。マーケットで決まる株価や金利が予想通りに動くなら損をする人は居ない。リスクを損得で考えている限り正しい答えは出ない、という典型だ。

住宅販売の現場では変動金利を前提とした返済額を提示して「家賃より低い返済額で持ち家を持てる」というアドバイスをする事は多いようだが、これがいかに間違っているかは「5000万円のマンションは月12万円の支払いで買えるのか?」で説明した。

家を買ってローンを組む事は不動産投資と同様のリスクがある。家を買って自分が住めば持ち家、人に貸せば不動産投資、という事で不動産を保有する事からメリットを得るという意味ではどちらも同じだ。不動産投資のリスクに加えて金利変動リスクまで背負うのは、リスクの取りすぎだろう。


いずれにせよ一般的な住宅購入で、数千万円の住宅ローンを20年~30年以上の長期で組むのであれば、「固定金利が無難」という結論に変わりは無い。人生には様々なリスクがあり、取らずに済むリスクをあえて取る必要はありませんよ、というのが自分からのアドバイスだ。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー

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