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“負け組”から右傾化・カルト思想が生まれてくる~元オウム・上祐氏の話


サンクチュアリ出版で5.29に行われた臼井正己氏のイベントには、元ライブドア副社長の大塚哲也氏、名古屋の居酒屋チェーンの奥志摩グループ社長の中村文也氏、株式会社レバレッジ代表取締役社長の只石昌幸氏、「ナポレオン・ヒル」を日本で普及させた会社の元社長の川口徹氏が来て、それぞれが15分程度の話を行った。私は元ライブドア副社長とはどんな人物なのかと思い、このイベントに参加した。

ただこの場にもう1人、とんでもない人が来ていた。日本を恐怖に陥れたカルト教団・オウム真理教元幹部の上祐史浩氏だ。

オウム真理教の外報部長として、巧みな弁舌でまくしたて教団をかばった上祐氏。このことから「ああいえば上祐」との流行語も生まれた。ただ地下鉄サリン事件の際にはロシアにいて、実行犯でなかったことから、偽証罪で懲役3年の有罪判決を受けた。

その後はオウム真理教が改名した「アレフ」の代表になったが、2007年に麻原・オウム信仰を捨て、アレフを脱会し、「ひかりの輪」なる宗教団体を設立し、代表になっている。

まだオウムの残党が残っていて、あやしげな宗教団体を運営しているのかという、強烈な拒否反応を持っている人は多いだろうし、私もそのような気持ちはあった。が、果たして今この人物がどんな話をするのか、怖いもの見たさのような興味もあった。

また2012年には「オウム事件17年目の告白」という本を出版しているらしく、(検証として有田芳生氏の名前も)今月末には田原総一朗氏監修のもと、「終わらないオウム」という本も出すらしい(共著)。最近はメディアにも出ているようだ。

で、上祐氏がどんな話をしたのか。私なりの解釈を含めた概略はこんな感じ。

ちょうど今度出版する「終わらないオウム」のタイトルのごとく、オウム的なるものが時代が変わっても、形を変えて何度も何度も出てくる。私はオウムの暴走に加担してしまい、二度とこのような過ちを犯してはならないと思っている。ただ直近でいえば、他のアジア民族を強烈に批判・否定し、軍事行動も辞さないといったような右寄りの思想も、宗教ではないが、まるで麻原オウム真理教とそっくりだと思う。

なぜオウム的なるものが生まれてしまうのか。それは自尊心=プライドを満たせない人たちがいるから。「勝ち組」「負け組」といった区分けのように、他者との比較でしか自分の存在価値を測れない人間、特に「負け組」だと思っている人が、自分より「下の存在」(他のアジアの人たち)をでっち上げることで、優越感に浸り、それで自尊心を満たすという歪んた心理に、カルト的なるものがつけ入る隙があるのではないか。

といったような話をしていた。

暴走し、いわば「無差別テロ」を行ったカルト教団の元幹部が、今の日本をかつての暴走カルト教団と重ね合わせて、右傾化を危惧するというのはなんとも恐ろしい状況だ。

最近やたらきなくさい。韓国や中国の問題について、騒ぎを大きくしようとする「誘導」が働いているような気がする。中国政府が国内問題から目をそらさせるために、反日洗脳を行い、国民を反日で煽っておけば、自分たちの政府批判はされないで済むといった安直な論理と同じように、日本でも韓国や中国を「敵」「悪魔」に仕立て上げることで、国内批判から目をそらし、国をまとめようという動きが一部には見受けられる。

そうまるで小学校のクラスと同じだ。みんな仲良くないのに、1人いじめるターゲットを設定すれば、そいつさえいじめていれば、他の人とケンカしなくていいというのと似ている。

日本がかつて第二次世界大戦に突っ込み、国民自らが「熱狂」し、軍国主義に暴走していく様子を、政治学者の丸山真男氏は「抑圧委譲の論理」と解き明かした。

欧米列強に対する強烈なコンプレックス。今もまだバカの1つおぼえのごとく、「欧米では~~だから」と欧米=先進、日本=遅れているという、欧米コンプレックスを持っている人が未だに多いことに驚くわけだが、当時も欧米に「遅れている」という感情は今より大きかっただろう。

そこで追いつき追いこせのごとく、ものすごいスピードで近代化を進めていった結果、様々な国内矛盾や社会問題が生じてしまった。特に地方と農村の疲弊は激しかった。

こうした格差拡大が進む中で、「自分は負け組だ」という人に対し、自分よりも「下」の存在として「アジア」を認識させ、欧米から“いじめられている”その鬱憤(うっぷん)を、 アジアをいじめることで晴らすという、 抑圧移譲の論理が国民に働き、 対外侵略を正当化させていったのではないかという分析だ。

国内矛盾の格差の底辺にいる人たちが、自分の存在価値を確認するために、「俺はアジアみたいなくずな奴らより偉いんだ」というのを軍国主義によって代弁してもらってほっとし、自らもそれに加担するというサイクルを招いた。

今はアベノミクスのにわかバブルでわいているからいいかもしれない。しかし山高ければ谷深し。人為的に山を作れば、2008年の金融危機と同じように必ずその反動がくる。

円安バブルに浮かれた後、派遣切りが問題となったように、今度は「限定正社員」なるあやしげな制度をでっちあげ、社員でもクビ切りやすくする方向は着実に進んでいくだろう。こうした時、社会で「負け組」と感じてしまった人たちが、普段の生活の中で自尊心を満たせない中、もっとも簡単に自分のプライドを満たせるのは、自分より「下」の存在を作り出し、そこに異常な攻撃性を示すことだ。そういう思想を持つ「団体」に所属し、その使命をまっとうすることで、自分の存在価値を再確認できる。カルト教団と軍国主義は似たようなものだというのはよくわかる。

このような状況で憲法改正の話が突然ふってわいているわけだ。しかも個人の表現の自由を制限し、軍隊を整備し、為政者を縛るだけでなく、国民も憲法によって縛ろうとしている。

何か非常にあやうい空気を感じる。憲法改正したらすぐ軍国主義になるわけではないだろう。でも改正してしまったら解釈によってどうとでもできるわけで、改正後、数年たった時に、かつて第二次世界大戦に突入し、自滅していった日本のように、国内矛盾を対外侵略ですべて目をそらさせるという政治家なり政党なりが誕生し、国民の経済的疲弊や自尊心の欠如をバネに、大躍進する可能性は大いにあるわけだ。

「無差別テロ」を起こし、武装化したカルト教団の元幹部が、右寄りに傾く今の状況を嘆くという恐ろしさ。今、ほんとに日本はかなりあやうい分かれ道に立たされているのではないか。

岐路に立たされた時、国民はどちらを選ぶのか。結局、「自立」ができない人間が多ければ多いほど、何かに依存し、頼ろうとするから、おかしな方向性に行ってしまうのではないだろうか。

※私自身は今年の正月にも書いたように、神頼みなんてくそくらえと思っているので、宗教的なるものをまったく信じておらず、上祐氏や上祐氏の団体に何か加担したりする気は毛頭ありません。ただイベント時にあの上祐氏が登場し、その話から昨今の右傾化への危惧を感じたという記事内容です。

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