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政治家の慰安婦発言について

政治家の慰安婦についての発言に批判が集まっている。戦場には性がつきものだ、日本だけではないではないか、との趣旨だとの説明もあった。しかし、国内外で波紋が広がり続けている。とにかく残念、そして悲しい発言である。

日本での慰安婦の論議は、権力による強制連行があったかどうかという点に焦点が絞られてきた。河野談話の見直しの議論も、そこに端を発している。しかし、私は問題の本質は、河野談話にあるように、「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」との点にあると思う。権力による直接的な強制連行があったかどうかは問題の一部である。

仮に、権力による強制連行がなかったとしても、女性達は自らの意志でそこを離れることができたのだろうか。その監視に権力が全く関与していなかったと言いきれるのだろうか。だからこの問題に対しては、「政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。」(河野談話)ことが必要だと私は考えている。

慰安婦問題を人権という視点から考えることは、国際社会の潮流になっていると私は思う。戦場には性がつきものだとの考え方は、女性を「モノ視」した発想である。慰安婦について国際社会が問題にしていることから大きくずれている。これは女性の人権が尊ばれているか否かの問題である。

そして、極めて残念なことに、日本が内向きの議論に時間を費やしている間に、この国際社会の常識が、一部の人たちに「利用」されているようにも見える。

日本はどうすべきなのだろうか。

河野談話は、女性の人権についての立場も踏まえていると私は思う。だからこれを変えることは、人権の視点を否定したと捉えられかねず、望ましくないと私は思う。この談話および、アジア女性基金を設けた経緯とそれによって成し遂げたことを、丁寧に世界中に対して説明し続けるべきだ。これらは、私たちが考えるほどには、近隣諸国の国民にすらあまり知られていない。どうすればよく知ってもらえるかも、答えは簡単でない。

先日あるヨーロッパ出身の人が私に「日本人はなぜいつまでも、戦争のことや歴史問題にこだわっているのか」と聞いた。EUの進展から見れば、半世紀以上前のことがなぜ今これだけ大きな問題になるのか、不思議に思ったのだろう。私は彼に、1998年に小渕総理と金大中大統領との間で作られた新しいパートナーシップについての「日韓共同宣言」や、安倍総理と胡錦濤主席の間で合意された戦略的互恵関係の話をした。「日本は、新しい関係をこれらの国々と築きたいのです。にもかかわらず、日本は、過去にひき戻されてしまうのです」とも。

他によって引き戻されることは確かにあるのだが、少なくとも日本から過去に戻すべきではない。今情報は一瞬のうちに国境を越える。政治家には、国内向け発言と国際社会向けの発言を分ける贅沢は許されない。ガラパゴスすらないのである。

日本の政治家の発信力ないし国際競争力は、我が国の国益を、国際社会で共有されやすい大義や常識にのせて伝えることができるかどうかである。

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