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堀米ゆず子さんのバイオリンを取り戻した門多丈さんに聞く、キャンペーン成功の秘訣!(後編)

堀米ゆず子さんのバイオリンを取り戻した門多丈さんに聞く、キャンペーン成功の秘訣!(後編)

2012年夏、国際的バイオリニストの堀米ゆず子さんは、ドイツのフランクフルト空港でバイオリンを押収されてしまいました。堀米さんの友人の門多丈さんは「バイオリンを無償で返して欲しい!」という思いからキャンペーンを開始したのですが……。

(※ この記事の前編はこちら

—— さて、発信を決意されたわけですが、戦略についてはどう考えていましたか?

戦略のひとつは、先ほども言いましたように、呼びかけ人を誰にするか、です。
呼びかけ人に信頼性がなければならないのですが、私はコーポレート・ガバナンスに関わっているので、その点信頼性を向上できたのではないかと思います。

—— 発信者のプロフィールがわかるというのは、賛同を集める際も、届けるときも、重要な要素になりますね。他にはどんな戦略がありましたか?

もうひとつは、誰に呼びかけるかですね。誰に呼びかければ一番効果的かということを考えました。
没収したのはフランクフルト税関ですが、ドイツの文化省というアプローチもあると思いました。ベートーベンを生んだ国がなぜこのようなことをするのかということを訴えるためです。特に、堀米さんはヨーロッパでも活躍するバイオリニストで、ベルギーの王立音楽院の教授までつとめていますから、有効ではないかと。また、税関の上は、ドイツの財務省ですから、そちらにも呼びかけようと思いました。

—— 戦略を決めてから、キャンペーンページを作成したんですよね?

はい。8月25日にキャンペーンページの文章を作成して、画像を選んで、公開しました。

—— そして、フランクフルト税関、ドイツ財務省などのメールアドレスを探し出して、Change.orgのプラットフォームに登録したんですよね。ドイツはさすがに透明性が高くて、検索したら簡単に公開されている連絡先を見つけることができました。キャンペーンページで宛先のメールアドレスを設定すると、 Change.orgのプラットフォームから賛同が集まる度に、定期的に、「私はこのキャンペーンに賛同しました。ぜひご検討下さい」というようなメッセージが宛先に自動的に届く仕組みになっています。
そうそう、日本語だけで発信してはもったいないという言語の話もありましたよね?

そうですね。まず、ドイツ語で発信したいと思いました。もちろん共通語として英語でも発信したいと思いました。さらに、友人にこのキャンペーンの話をしたところ、フランス語に翻訳してくれるというのでお願いしました。4カ国語で出すことになったわけです。4カ国語で展開したので、相手にインパクトを与えられたと思います。
9月5日に、賛同文を英語、ドイツ語、フランス語に翻訳して、各ページを作成しました。最初は、それぞれ別のページだったのですが、相互のページをまとめてもらって、賛同数などが連動するようになりましたよね。

—— そうでしたね。他言語ページへのリンクは、このキャンペーンを立ち上げて一週間後くらいにリリースされた機能です。スタッフに声をかければ、各言語のペー ジをリンクさせて、署名総数をどのページにも表示させることができます。また、ページがリンクされると、日本語版で賛同した人が英語版でも賛同済みという扱いになります。国際的キャンペーンでの重複を防いでいるということです。

さらに、ページに表示される文章のほかに、宛先に送られるメールの文章も準備しました。

——それで、キャンペーンページが作成できて、賛同者に呼びかけることのできるフレームワークができたということになりますね。では、賛同を呼びかける際に、どんなことに注意しましたか?

働きかける先方に行くメールには、どのような個人情報が含まれるのか、Change.orgでどのような情報管理がされているか、その点をチェックしました。賛同を呼びかける以上、責任を負わなければならないので……。

—— 賛同を呼びかけるメールの内容に、個人情報の取扱いについて書き加えたのですか?

そうです。

—— 先方に届くメールでは、メールアドレスも住所も公開されず、氏名とコメントだけが開示されます。キャンペーンをはじめた発信者の手元には、賛同者の氏名のほか、当時は住所もわかるようになっていました。現在は、氏名と郵便番号のみ頂くということになっています。その点を心配されている方が多かったですね。
……では次に、どのような方法を使って賛同者に呼びかけましたか?

先ほど申しましたように、友人や知人に「こんなことをやっている」というメールを送りました。
さらに、Facebookでリンクを共有しました。友達がどんどん取り上げてくれて、アメーバのように広がって行った記憶があります。直接知っている個人だけでなく、友達の友達にまで伝わって行きました。

—— キャンペーンを広めるためのサポートをしたので覚えているのですが、門多さんのパーソナル・ネットワークのほかにも、いろいろなコミュニティーにアプローチしましたよね。堀米さんのファンの方ですとか、国際的ミュージシャンのグループですとか……。
あとひとつ面白いなと思ったのは、「頑張れ堀米ゆず子さん」などのFacebookページが、事件から3週間後には既に立ち上がっていたことですね。ただ「もったいない」と思ったのは、そうした思いが宛先に届いていなかったことです。たくさんの人が「ひどい、おかしい」と思っていても、それだけでは伝わりません。既に存在している社会的エネルギーをチェンジを通して宛先にぶつけるということが、大切なのだと思います。
こうしたコミュニティーを見つけて、チェンジのリンクを積極的に共有したことで、コミュニティーメンバーの半数近くが、キャンペーンに賛同したのではないでしょうか。
さて、ほかに工夫した点はありますか?

メッセージをどのように出すかということを考えました。いろいろな考え方の人がいると思うので、賛成しないなら賛成しないでいい、という内容で、メッセージを送りました。
また、できるだけ広い支持を集めたいと思ったので、要望をどうするかも悩みました。ただ返してほしいというのか、それとも無償で返せというのか、などです。ほかにも、音楽家として社会的に貢献しているから、という理由の説明も付けるなど反発をなるべく少なくする工夫をしました。
とはいえ、Facebookのなかで、こんなキャンペーンには反対だという意見が出ていました。それに対して、私が間に入らなくても、説明する人が現れたりして、普通の人たちが議論していました。いろんな考え方の人がいるなと感じましたね。

—— このキャンペーンで、法律にはグレーゾーンが多いということを強く感じました。特に、法律を尊敬している日本のような国だと、人間が法律を解釈しているという点が気付かれにくいかもしれません。法律は明確でないことが多いですし、グレーでいろんな解釈がある中で、音楽家は楽器がないと音楽が作れなくなってしまうという点を強調していましたね。
さて、キャンペーンを進めて行くなかで、門多さんの生活に影響はありましたか?

目の前で数字がちょこちょこ変わるというのは非常に面白かったですね。ページを開く度に増えて行くので、何度も確認してしまい、中毒みたいになってしまいました。

——賛同が集まるのは、ちょっとゲームみたいで楽しいですよね。チェンジでは、自分が共有したリンクを通して何人が賛同したかをメールで知らせるなど、リクルーティングを楽しめる工夫がされています。……さて、実際に賛同者が集まった後に、門多さんはどんなことをしましたか?

5000人に達したときに、原点に帰ろうということで、ドイツ大使にメッセージを送りました。
メールアドレスを友達から教えてもらっていたので、「こんなキャンペーンに5000人が賛同しているんだよ」ということを9月20日の木曜日に伝えました。
そして、21日金曜日の夜に、「おめでとう、バイオリンは戻ってくるよ」という返事がありました。メッセージ全体を読むと、キャンペーン成功おめでとうと読めるものでした。ただ、ストレートには言っていませんでしたけれどね。

—— 返事は、夜遅くでしたよね。門多さんから教えてもらって「うわっ、バイオリンが戻ってくる」と夜中に驚いた覚えがあります。そして、9月21日から22日にかけてメディアが注目しはじめたんですよね。

そうですね。朝起きたら、NHKで「バイオリンが返って来た」と報道されていました。何が問題だったのかは触れていませんでしたが。

—— その後は、どんなことをしましたか?

署名した方に、何かお礼がしたいなと思って、メッセージを送りました。街頭署名だと、お礼をしたいと思ってもなかなか言えませんから、これはすごいことですよね。
ベートーベンの第九……「歓喜の歌」を聞きながら、お礼の原稿を書きました。

—— 賛同者の方は、「堀米さんのバイオリンが返還された」というニュースを見ながら、「キャンペーンに参加してくれてありがとう」という門多さんのお礼のメッセージを受け取ったのではないかと思います。早くメッセージが送れることが、オンライン・キャンペーンのいいところですね。
さて、一件落着した後も、イベントがありましたよね?

12月にクリスマス・コンサートを開くことになりました。堀米さんの友人たちが呼びかけた「バイオリンが戻って来てよかったね、おめでとう」という趣旨のコンサートです。
堀米さんのご主人の指揮のもと、アンサンブルでモーツアルトを演奏するというチャリティーコンサートで、収益は、堀米さんの弁護士費用にあてることになりました。
そしてもうひとつの企画として、チケットを私たちの方で購入して、賛同者の方を招待することにしました。Change.orgのメッセージ・システムを使って賛同者の方に告知したところ、200〜300人の応募がありました。厳密な抽選を行い、10組20名の方をご招待しました。

—— チケットの応募フォームには、コメント欄も付いていたのですが、「おめでとう!」「自分が力になれて嬉しい」というメッセージが何百も入っていて、門多さんに見せてもらったときに、とても感激しました。

キャンペーン・ページにもコメント欄がありましたよね。

—— そうですね。

キャンペーン・ページに集まったコメントを印刷して、堀米さんにお渡しして、さらにそれを堀米さんがお母さんに渡したそうです。記念になったと思います。

—— そうなんです。コメントは、働きかける相手に届くだけでなく、発信者や、発信者が助けたい人たちを勇気付けるという効果もあるんですよ。皆さん、よかったら賛同と一緒にコメントも入れてみてくださいね。……というわけで、キャンペーンの成行きと戦略については以上です。門多さん、本日はどうもありがとうございました!

こちらこそ、どうもありがとうございました。

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