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現代インドにおける女性に対する暴力 ―― デリーにおける集団強姦事件の背景を探る - 田中雅一

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インドにおける女性に対する暴力概観

伝統的な家父長制社会において、逸脱する女性像は、結婚時に性的体験があること、結婚後夫以外の男性と関係をもつこと、子ども(とくに息子)ができないこと、同性愛者であること、そして女性に課されているさまざまな義務(出産、家事、育児、その他)を果たさないことなどである。こうした逸脱は、夫による殴打を手始めに、つぎに述べる「名誉にもとづく暴力(honor-based violence)」によってきびしく罰せられる。

親が決めた結婚を拒否するだけでなく、他の男性と駆け落ちしたり、不適切な男性と性的な関係をもったりする女性に対してなされる暴力が、名誉にもとづく暴力である。これは家族や親族一同の名誉を守るために、主として女性に対して行われる暴力である。女性が性的に逸脱すると、家族や血縁集団の名誉が汚されたとして、離婚では済まず、殺されてしまう。殺人によって、当該集団の名誉は回復するのである。なお、名誉にもとづく暴力は、女性だけでなく男性に対しても実施される。

さて、市場経済が浸透すると、暴力も大きく変化する。インドでは、多くの場合結婚に際し花嫁側が多額の持参金を用意しなければならないが、1980年代になると、広告などを通じてあたらしい家電などへの欲望が生まれ、花婿側の要求がますます高まっていく(一説によると父親の年収の3倍が相場である)。このため、農村と違って労働力を期待できない都会では、娘は重荷でしかない。もともと、娘より息子を大事にしていたのだが、その傾向に拍車がかかる。そうした中、胎児のセックス・チェックを行ったうえで女児のみを人工妊娠中絶するということが起こる。さらに、親への負担を悲観して自殺をする女性もいる。

持参金との関係では、インドでは持参金殺人という花嫁殺しが都市で一時蔓延する。これは、男性は何回も結婚できるため、持参金目当てに花嫁を殺害するという犯罪である。実際に手を下すのは、夫の母であることが多い。すこし古い資料だが、持参金殺人は1985年に999件、1986年に1319件の報告がなされているが、実数はもっと多いと思われる。

また、女性が家庭を離れ、一時的であれ仕事を始めると、そこでもセクハラなどの暴力に直面するし、海外での出稼ぎの場合、強姦などの性暴力の危険にさらされることになる。



親族や知り合いから遠く離れ、海外(主として中東)で雇用者による性暴力被害に遭う危険性がある。とくに、家屋内で寝泊りし、子どもの世話をしたり、家事手伝いをする場合、危険度が高くなる。被害にあった場合、たとえばフィリピンなどは政府が積極的に介入したり、保護をしたりしているが、インドについては政府にそれほど積極的な動きはない。

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