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都会が持つ「排除の力学」—久留米「上村座」に見る、今後の日本社会

ざっくり言うと…
・都会は排除の力学を持っている。高齢者、障害者を郊外へ追いやってきた。
・これからは排除された人々を街に呼び戻し、支え合っていかなければいけない。
・久留米市に生まれた高齢者向け施設「上村座」は、これからの地域社会のあり方のロールモデルといえるだろう。

縁あって高齢者の生活をサポートする施設「上村座」開所式に行ってきました(初福岡です!)。日本財団理事長・尾形さんの開所にあたっての祝辞がすばらしかったのでご共有です。

都会が持つ「排除の力学」


尾形さんのお話は、ざっくりとこんな内容(もちろん祝辞なので、この前後には「このたびは会所おめでとうございます」というメッセージが入っています)。
戦後、わたしたちは障害者や高齢者を「郊外」に追いやってしまった。そして働き盛りの健常者が、都心部に住むようになった。

その結果、都会には健常者しかいないコミュニティになってしまった。土地が高い都会では、親を引き取った二世帯、三世帯暮らしは難しい。都会は健常者しかいない、「いびつな」コミュニティになっている。

高度経済成長によって、日本にあった地域社会が崩れてしまった。これからは、お年寄りを街に取り戻さないといけない。身障者を取り戻さないといけない。

みんなで助けあい、認めあい、(排除せずに)地域で最後まで看取る。これが健全で当たり前の社会だと思う。日本財団としては、そういう社会を少しでも広げていきたい。

都会が「排除の力学」を持っているという指摘は、比較的都会で育ってきたぼくにとって目から鱗。たしかに都心には健常者しかいないですし、それは理事長の言うように「いびつな」ものなのでしょう。

相変わらず老人ホームというと郊外に造られることが多いですし、この力学は引きつづき強烈に働いていくように思います(なんせ郊外は土地が安いですし)。昨今の経済状況を考えると、都会の持つ排除性は、むしろ強化されていっている気すらします。

とはいえ、「お年寄りを街に取り戻さないといけない。身障者を取り戻さないといけない」というのは理想論としてはわかりますが、実現するのはそう簡単ではありません。

久留米市内に高齢者の居場所を

その意味では、久留米市という都会にあって、高齢者を包摂するコミュニティをつくった「上村座(かんむらざ)」は画期的な事例です。
高齢者にまつわる問題のひとつが「介護」、そして「終末ケア」です。すでに当事者の方もいるかもしれませんが、たとえば
・遠く離れて住む母が、ひとり暮らしをしている。父は他界。ひとりでやっていけるか不安。
・両親がガンの末期で、家で最後を看取りたいが、病状がひどくなり自宅での看護が難しい
・両親が認知症で、心臓も悪い。家で介護するのは不安。
・自宅で妻が介護をしているが、ストレスが溜まっている。たまには休ませたい。
・気管切開や胃ろうをしているので、デイサービスや地域の活動に参加しにくい

などなどのトラブルが家庭を襲うわけです。うちの祖父も最近胃がんで入院し、叔母が自宅で介護しているので人ごとではありません。

上村座は、そんな高齢者と家族、地域の人々のためのコミュニティです。単なるコミュニティスペースではなく、医療的なケアを提供することができるスタッフが常駐し、サポートしてくれる点が特徴。

具体的には、
・高齢者の方のための宿泊サービス(ショートステイ)
・自宅への訪問介護
・通所による介護(デイサービス)
・終末ケアを行う、古民家を改装したホームホスピス(「たんがくの家」)との連携

といったサービスを提供しています。

先行して展開しているホームホスピス「たんがくの家」は、近所の友人なども訪れるコミュニティスペースとなっています。「介護」が始まると交友関係が断絶してしまいがちですが、地域に根ざした施設にすることで、すでに持っている社交関係を維持することに成功しているわけですね。

「上村座」は都市の持つ排除の力学に抗い、お年寄りを地域に取り戻した先駆的事例といえるでしょう。今後、このような施設が増えていくことに期待ですね。うちのじいちゃんの家の近くにもあればいいんだけどなぁ…。

弱者を自然に巻き込むコミュニティデザインが必要


TechWave湯川さんをはじめ、「コミュニティの時代が訪れている!」と叫ぶ論者は多いです(ぼくもそのひとりです)。

しかし、ぼくらが自然の流れに任せてコミュニティ形成をすると、えてして「健常者・強者だけのいびつなコミュニティ」になってしまうことには、注意すべきです。無意識的な選択の裏では、排除されている人たちがいるのです。

次の時代では、他人とつながる意志を持たない人たちすらも、自然に包摂できるコミュニティデザインを模索していくべきです。「こっちにおいでよ」という誘いに「いや、いけないです…」と怖じ気づく人たち、または自然に排除されていく人たちを、半強制的・無意識的に巻き込んでしまう仕掛けが大切だということです。

これも理想論ではありますが、山崎亮さんのお仕事などを見ていると、デザインの力で十分解決できる話だと思います。


都会は、いびつな街なのです。そんな視点をインストールしてくれた、意義ある視察でございました。先日の被災地視察に続き、取材をサポートしてくださった日本財団、BLOGOSに感謝です。

(取材協力:日本財団)

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