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済美・安楽投手の連投に思うこと

 甲子園で行われている選抜高校野球大会。済美高校のエース・安楽智大投手は、県岐阜商との準々決勝でも138球を投げ抜き、3試合連続完投勝利。準決勝にコマを進めた。最終回には、151kmを計時したという。野球ファンをわくわくさせるような怪物の登場だが、僕は手放しによろこべずにいる。

 安楽投手は、今大会すでに529球を投げている。初戦でいきなり232球を投じたが、アメリカの高校生は一ヶ月でも200球を超える球数は投げないそうだ。成長過程にある高校生がそれだけの球数を投げることに対し、科学的に疑問符がつけられるのだろう。ちなみに、安楽投手はまだ2年生だ。

 ところが報道を見ていると、「エース力投」など美談、賞賛の一辺倒。なぜ、ここまでの球数を投げさせることに疑問を呈する報道が見られないのか。それは高校野球を「教育の一環」ではなく、「ビジネスのコンテンツ」と見ているからだろう。だが、そこで得られる利潤が高校生の手に渡ることはない。

 もちろん、球児たちは利潤など望んでいない。ただ、彼らの純粋さを、大人たちが利用しているだけなのだ。高校野球とは本来、部活動であり、教育活動の一環である。それが、あまりに「興業」としてのウマ味が大きいために、「球数制限」などあって然るべき対策がいつまでも講じられずにいるのだ。

 高野連のホームページを開くと、トップページには「スポーツ障害の予防・治療・復帰プログラム」についてのバナーが貼ってある。笑止。本当に球児たちの体のことを考えているなら、なぜ球数制限の導入を検討しないのだ。本音と建前の乖離に、野球ファンとして、教育に携わる者として、苦言を呈したい。

 何より疑問を感じるのは、スポーツマスコミの姿勢。「エース力投」「鉄腕安楽」――たしかに新聞は売れるでしょうだろう。だが、そうした記事が、はたしてジャーナリズムとしての機能を果たしていると言えるのか。今朝の各紙に踊る文字に、元スポーツライターとして落胆の色を隠せずにいる。

 もちろん、球数制限だけが唯一の解決策ではない。好投手を多く集められる私立の強豪校が有利になるなど、導入による弊害もあるだろう。また、安楽投手本人も「これが普通。他の高校生もこれくらい投げている」と発言するなど、完全燃焼を良しとする高校球児たちが球数制限を望んでいるとも言いがたい。

 だが、少なくとも「将来ある高校球児があれだけの球数を投げることの是非」については、もっと論じる必要がある。その世論を喚起するのがマスコミの仕事だと思うのだが、その役割を果たせているようには、とても思えない。

 この件に関して、Twitterでも述べた。すると、大リーグで活躍するダルビッシュ有選手をはじめ、多くの方からリプライをいただいた。その一部をTogetterにまとめたので、ぜひこちらもご覧いただきたい。

 Togetter「済美・安楽投手の連投に思うこと」――



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