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菅さん、自民党政権になって風向きが変わってしまったのかな、というはなしもあります。参院選では原発って争点になるでしょうか?

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もんじゅ君の「ズバリ聞きますだよ!」第2回:後編

福島第一原発事故にショックを受けて、2011年5月、突如ツイッター上に現れたもんじゅ君。福井県敦賀市の高速増殖炉もんじゅの「非公式」ゆるキャラながら、フォロワー数は約10万人、エネルギー問題を解説した著書も3冊あるなど、幅広い支持を得ている「炉」のキャラクターです。

このもんじゅ君が、各界の著名人にエネルギー問題についての考えや東日本大震災以降の活動について聞く、シリーズインタビュー。

第2回のゲストは、福島第一原発事故発生時、総理大臣として現場で指揮をとっていた民主党・菅直人議員。前編は3.11後の原発事故の時、官邸ではどのようなやり取りが行われていたのか。後編は具体的に日本のエネルギー問題について、市民ひとりひとりがどんなことができるか、などについてお聞きしました。

ゲスト:菅直人(民主党・衆議院議員)
インタビュー・構成:もんじゅ君(高速増殖炉)

原発事故後のデモや抗議は、確実に政治に影響をあたえている

もんじゅ:菅さんは昨年の夏に、官邸前の抗議メンバーと野田首相(当時)との会見をアレンジされましたよね(*2)。いま、デモや抗議がわりと身近に、頻繁に起こるようになっています。それらの動きと、かつてあった市民運動やデモとのちがいというのは感じますか? (*2 2012年9月に、原発再稼働に反対する官邸前抗議活動の主催者である一般市民と野田首相とが面会の場をもった)

:うん。ああいうふうにおおぜいの人がデモをするということじたい、ここ20年ぐらいなかったよね。

もんじゅ:ボクもデモというのは原発事故が起こるまではみたこともなかったし、いったこともなかったです。なにか特別な人たちの特別なもの、というイメージがあって。

:自然発生的に10万を超えるような人たちが動くというのは、時代があたらしくなったというか、画期的な動きだよね。いわゆる政党主導とか労働組合主導じゃなくて、バラバラの個人があつまるわけでしょう。

もんじゅ:そうです。いわゆる「組合」の「動員」じゃないんですよね。

:「官邸前」「金曜日」「夜6時から8時まで」っていう3つのキーワードだけであつまるわけでしょう。しかも、全国でにたような動きが起こっている。これは、あたらしい運動のかたちだよね。

もんじゅ:抗議は、40以上の都道府県で起こったみたいです。

:すごいことだよね。

政治家から市民に対して、「こんなふうに動いてみれば」という提案はありますか?

もんじゅ:脱原発を実現したいと思っている人たちは、パブリックコメントをだしたり、デモや抗議に参加したりといろいろしていますが、やっぱり選挙がすごくたいせつだと思うんです。だけど選挙というのは、原発問題だけが争点になるわけじゃないですよね。ほかにも税金とか、社会保障とか、たくさんのイシューがあるから。 政治家の方からみて、市民にたいして「こんなふうに動いてみたらどう?」「こんなことしてみたら?」っていう提案とかアドバイスというのは、ありませんか?

:うんうん。まず第一に、原発事故後の動きというのは、じつは政治にものすごく影響をあたえているんだよ。それは自信をもってもらっていいと思う。デモや抗議やパブリックコメントぜんぶをふくめてね。「デモをしたからこうなった」というふうに、単純にゼロになったわけではないけれど、すくなくともああいう国民的な行為があり、いろんな世論調査でも「原発をやめたい」という人が7割と、結果がでた。

もんじゅ:そうですよね。2011年の秋ごろから直近まで、NHKでも朝日新聞なんかでも、世論調査では7割以上が「できれば原発をやめたい」「へらしたい」とこたえていますね。

:パブリックコメントも、役所がなんとなく2030年代の原発依存度を「15%」にしよう、という落としどころをもって臨んでいたのに、その思いを超えて8割以上の人が原発を「0%」にしたい、といったわけでしょう(*3)。このパブリックコメントの数字も、デモや抗議も、ひじょうにおおきな影響をもっていたと思うよ。 (*3 2012年夏のパブリックコメントでは、2030年代の原発依存度を「0%」「15%」「30%」と3つの選択肢から選ばせる方式だった。この設問には、多くの人が中間の「15%」を選ぶだろう、という思惑があったといわれている。結果的には約9万件という異例の数の意見が寄せられ、そのうち9割ちかくが「0%」を支持していた) だけど、これは政党側にも責任があるんだけれど、残念ながらその声は、選挙の結果には反映されなかった。それは(小選挙区制という)選挙制度の問題もあるし、一時は「日本未来の党」に期待があつまったけれど、それも中途半端に終わってしまったりね。

脱原発の声を、どうやって政党や選挙に反映させていく?

:われわれの立場からいうと、民主党は政権のなかではギリギリがんばって「2030年代に原発ゼロ」といったつもりだったんだよね(*4)。だけど、「なんでいますぐゼロにしないの?」という声も、もちろんありました。 (*4 2012年9月14日にだされた「革新的エネルギー・環境戦略」をさす)

もんじゅ:たしかに「2030年代」というと、一般市民にとっては遠いことのように感じます。

:でもたとえば、福島の事故が起こった翌日というのは、全国で原発が27基も動いていたんだよね。それが、いちどゼロになって、いまは2基だけ動いている。これは自然現象じゃないわけ。もとは27基動いていたものを、浜岡原発は政治的にとめて、ほかは再稼働の条件をきびしくしたんだよね。

もんじゅ:自然にそうなったんじゃなくて、みんなの声があったから、動かしにくい状況がある、と。「ストレステスト」を導入したことで、再稼働のハードルはあがりましたよね。

:そう。大飯原発の2基は強化したルールをいちおうクリアしたということで動かしたわけだけど、反原発運動をしている人からすれば「動かした野田はゆるせない!」みたいな空気になってしまう。だけど、もうすこしながい目でみれば、27基をいちどゼロにして、再稼働のルールをきびしくして、原子力規制委員会を発足させて、と。規制委員会の人事についても、だいぶ批判はあったけれど、それなりにがんばったと思う。

もんじゅ:すこしずつ進歩してきている、ということでしょうか。

:一連のことをみて、いろいろな立場の人がそれぞれ運動をしたきているし、それはとてもよかったと思うけれど、かならずしも政策転換にはつながらなかった……。そのことを「なぜだろう?」といま、おおくの人がとまどいながら考えているところじゃないか、と思います。

もんじゅ:国民の7割が脱原発をのぞんでいても、なぜそれが政策に反映されないんだろう?とふしぎに感じる人は多いと思います。ほんとうに、ふしぎなんですよね。かなしいとか残念というのもあるけれど、ふしぎです。

:政治にかかわっているわたしも、今後、(民意と政治とが)整合のとれるかたちでうまく活動できないだろうかと考えているんだけどね。衆院選では、未来の党にたくさんの人が投票したけれど、あまり議員をだすことができなかった。党助成金をもらうために、小沢さん(※小沢一郎・生活の党代表)が嘉田さん(※日本未来の党・元代表)のクビをとったりするから……。このさき、もし小沢さんが「原発ゼロ!」といったって、すくなくともわたしは信用できないねぇ。

まあ、原発問題をあまり個人的なことにむすびつけてはいけないんだけども。未来の党のこともふくめてね、あれだけ脱原発だともりあがっていたのに、選挙結果には反映できなかったということを、どうしていくのか。いまはそういう局面だと思う。

自民党政権になって、脱原発は後退しますか?

もんじゅ:自民党政権になって、原発再稼働について風向きが変わってしまったのかな、というはなしもあります。またいっぽうで、この夏の参院選までは原発問題をおおきくはあつかわないだろう、ともいわれていますが……。参院選では原発って争点になるでしょうか?

:うーん、さきほどはなしたように、構造がうまく整理されていないんだよね。それこそ、大阪の橋下徹・元市長が以前は「再稼働はけしからん!」といっていたのに、原発推進の石原慎太郎さん(日本維新の会・代表)といっしょになったりした。ほかにも、政治的な動きとしてはねじれがあちこちにあるよね。

もんじゅ:橋下さんの主張がきゅうに変わったのにはすごくびっくりしました。政策と、所属政党とがねじれてしまうことは、あそこまで激しくなくても、ほかにもあるということですね。

:だからといってかんたんに元の木阿弥になってしまうかといえば、まあ、そうはならない。たとえば原子力規制委員会というのができているから、これからは再稼働についても、この7月にできるあたらしい基準にもとづいてやるわけです。それはとうぜん、かつての原子力安全保安院がかってに「いいよ、いいよ。どうぞ」といって、許可をだしていたころにくらべればきびしくなる。もうひとつのポイントは、再稼働の物理的な条件がきびしくなるということは、経済的なコストが高くなるということ。

もんじゅ:そうですよね。原子炉の社会的な信頼をえたり、安全性をみとめさせるために、検査だとか設備をふやすだとか、これまでよりも高いコストがかかってきます。そうすると、原発は安いとはいえなくなる。

:うん。コストが高いなら、そんなものをつくるメリットがなくなってくるわけだよね。じつはいま、世界をみると原発はほとんどつくられていないでしょう。

もんじゅ:はい。原発の新規建設ラッシュは1980年代だった、といわれていますね。いまつくっているのは、エネルギー需要のおおきくのびている新興国がほとんどです。

:それからもうひとつおおきなファクターは、再生可能エネルギーがどこまでひろがるか、ということ。これも固定価格買い取り制度が動きだして、ずいぶんと変わってきているわけ。そうやってトータルでみると、じつは原発ゼロのながれには、まだそんなには逆行していない。

ただ、政治的には自民党が「原発ゼロをみなおす」といっているわけで、あやういところもある。その状況のなかで、どんなふうにこのテーマを政治がうけとめられるのか、また、どうやって政治にうけとめさせるような運動のかたちにしていくのか、だよね。

もんじゅ:政治に響くような脱原発運動のかたち……。むずかしいですね。でも、そこがだいじなポイントだと思います。

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