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バルセロナ女子柔道銀メダリストが体罰問題を全世界に訴える

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溝口紀子氏・玉木正之氏(撮影:田野幸伸)
溝口紀子氏・玉木正之氏(撮影:田野幸伸) 写真一覧
3月5日、東京有楽町の日本外国特派員協会で、バルセロナオリンピック女子柔道52キロ級銀メダリストで静岡文化芸術大学准教授の溝口紀子氏と、スポーツ評論家の玉木正之氏が会見を行った。【取材:BLOGOS編集部 田野幸伸】

ノーカット会見動画

◆溝口氏スピーチ

溝口:スピーチの論点は3つです。
1、なぜ私がこの問題に関わるのか
2、この問題の本質はどこにあるのか
3、改革の方向性

内部の柔道家が発言しない中で、自分が先頭に立たなければいけないと思った理由は2つ。
勇気を出して告発に踏み切った、15人の女性柔道家を同じ女性柔道家として、オリンピアンとして支援しなければと思ったこと。そしてこの事件は一組織の内部抗争ではなく、日本のスポーツ界の思想の転換期に起きた事件であると明確に位置づけるべきだと判断しました。

◆問題の本質はどこにあるか

戦前から柔道界は家元制度を持つ特殊なスポーツ団体でありこれまで幾度も覇権争いで国内外で醜い内部抗争をを繰り広げてきました。

今回の女性柔道家の告発も「単なるお家騒動では」と指摘する報道も一部あった。しかし、スポーツ学者としての視点から分析しますと、この事件は偶然に起きたのではなく、また内部の覇権争いに単を発するものでもなく、むしろスポーツの民主化という社会の必然的な潮流の中であると考えました。

◆今回の事件の流れ

まず3年前に柔道事故被害者の会が発足しました。中学高校の28年間で114名の子ども達が柔道事故で死亡しており、その遺族により設立されたものです。その後内柴事件、ロンドン五輪惨敗というネガティブな事件が続きました。

その一方でスポーツ基本法の制定、中学での武道必修化、オリンピック招致運動というポジティブな事象も起きています。

今回の事件はこのような大きな流れの因果の連鎖で捉える必要があります。

日本スポーツの危機的な状況は、勝利至上主義で行われてきたスポーツ指導において、暴力から非暴力、体罰から脱体罰といった、日本人の思想を見直すきっかけをもたらしつつあります。

言い換えれば体罰といった、戦争中に作られた伝統への疑問を持つこと、そしてこれまで柔道界で無視されていた弱者であった女性が、権力や暴力にたいしてNOと声を上げたこと、それらは人権意識やスポーツの社会的価値が日本社会において深く根付き浸透したことの反映にほかなりません。

単なるお家騒動や組織内の派閥抗争ではなく、社会の根本的価値観の転換の発言と捉えることこそが、真の意味での組織改革につながっていくのではと思っております。

私が柔道界における体罰について、警鐘を鳴らしたのは2年前にフランスの雑誌に論文を投稿したことが最初でした。当時、先ほど述べた柔道被害者の会が結成され柔道の部活動中に起きる死亡事故が他のスポーツと比較すると顕著に多いことが指摘されていた時期でした。

当時の日本柔道界では体罰が容認されていたので公言は時期尚早と考え、日本ではなく柔道大国のフランスから発信を始めたのです。

その後、ロンドン五輪での日本柔道惨敗、そしてナショナルチームの暴行、パワハラという柔道の不祥事が続き、これらは個人的な問題ではなく、組織の体制に深く根ざす危機的な問題である事を確信しました。

2011年4月、私が静岡県教育委員会の委員になり、教育現場の指揮監督をするようになってからは、他のスポーツも教育現場の問題として取り組まなければ体罰による死亡事故はなくならないとも思いました。

女子柔道におけるパワハラ・暴行事件以降、文部科学省・JOCがいち早く、対応策を講じてくれたことは個人的には高く評価しております。

◆改革の方向性

現在の全柔連は、公益法人なのに自浄能力がなく、組織としてのマネジメントは稚拙であると言わざるを得ません。

ドラスティックな改革をするには、外部の力を借りざるを得ない状況にあります。連盟を改善するには、第3者が入り、組織の問題点を明らかにすべきです。

特に組織改革の上で最も重要な点は、家元組織の講道館と全日本柔道連盟の会長が兼務している状況に抜本的なメスを入れること。

会長が同一人物であることで、権力が集中し、公益法人としての組織のあり方にゆがみが生じることは明らかです。

多額の補助金や放映権料を得ることを中心に強化事業を組み、連盟運営が進められてきました。その一方で、柔道競技者の減少、柔道事故の死亡件数の多さからも言えるように、柔道の普及、安全という視点はないがしろにされてきました。

もちろん、金メダルの栄光、チャンピオンの存在は連盟にとっては大切なことであります。

しかし柔道の本当のすばらしさは、勝つことではなく、負けて挫折をし、そこからどう立ち上がるかという人格投影。安全や普及に重きを置かなければメダルを量産しても意味はありません

最後に、本当の意味で今回の事件がスポーツの民主化、オリンピニズムが浸透してきた何よりの証拠ではないでしょうか。今回の(オリンピック)東京招致は人間の尊厳、人権意識、非暴力化などの日本の思想の転換のきっかけになるものであり、そうであるからこそ、一過性ではない、真のオリンピックムーブメントがおきていると私は断言できます。

2020年の東京オリンピック招致の成功は、非暴力化、スポーツの民主化をさらに促進するものであることは言うまでもありません。

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