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元受刑者らの社会復帰を雇用で支援 世界初のプロジェクト始動

「職親プロジェクト」調印式
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100名の少年院出院者・刑務所出所者の社会復帰を支援

2月28日、大阪市難波で少年院出院者や刑務所出所者の再犯防止を目指し、日本財団と関西の民間企業7社が連携した「職親(しょくしん)プロジェクト」の調印式が行われた。

検挙者に占める再犯者率は年々悪化している。社会に戻っても仕事が見つからず、再び犯罪に手を染めてしまう負の連鎖を断ち切るべく、企業7社が出所者を採用し、仕事を通じての社会復帰支援や指導をしていくというもの。

日本財団会長 笹川陽平氏
目標は5年間で100名の採用。初年度は7社で26名の採用を目指す。財団は一人当たり月8万円の支援+交通費などの支給を半年間行う。

法務省や日本財団がバックアップするが、民間企業が集まっての支援体制作りは世界初の試み。再犯防止プロジェクトチーム・日本財団の福田氏は、「課題は多く生まれるだろうが、しっかり連携していきたい」と述べ、支援は10代、20代の若い出所者が中心だが職種や技能によっては50代の採用もありえるとした。

日本財団の笹川陽平会長は「再チャレンジの出来る社会」を目指し、一度の失敗で人生が全て終わらない社会、再びチャンスが与えられる暖かい社会にしていきたいと目標を掲げた。

千房(株)代表取締役 中井政嗣氏
千房(株)代表取締役 中井政嗣氏 写真一覧

「損得」ではなく「善悪」で決断

プロジェクトの中心となったのは、全国にお好み焼きチェーンを展開する「千房」の中井政嗣社長。千房では会社黎明期に人手不足に悩まされ、積極的に人材採用を行った際、元非行少年や、服役経験のある人も採用していたという。(採用時には気がつかなかったそうだ)。

法務省からの支援依頼もあり、3年前に出所者の就業支援を始めた中井社長だが、当初、受け入れには従業員の反対もあった。お客さんが怖がってお店に来なくなったらどうしよう、いや、社会貢献として評価してくれるお客さんがいるかも知れない。と議論を重ねたが、最終的には損得ではなく、善悪で考え、受け入れは「善」だと決断。今までに8人を雇い入れた。

さらに、出所者を受け入れた事を公表し、刑務所内での面接などの密着取材も許可した中井社長。オープンにすることには不安もあったが、千房の取り組みを聞いて「元受刑者を採用して酷い目に遭い、二度と元受刑者は雇いたくないと思っていたが、もう1回採用にチャレンジしてみます」と言ってくれた人がいて、その時に「オープンにして本当に良かった」と感じたそうだ。

中井社長は「過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。改心は一人で出来ても更正はひとりではできない。」と自ら名づけた「職親プロジェクト」への想いを語った。

調印の様子
調印の様子 写真一覧

経営者それぞれの思い

受け入れる他の6社の経営者も個性豊かで、飲食業から美容院、建設業などの会社が揃った。

カンサイ建装工業の草刈健太郎氏は、「建設業は人を受け入れやすい」とした上で、「最初にこの話を聞いたとき、正直ビックリした。実は親族を海外で殺された経験がある。被害者の気持ちも加害者の気持ちも分かる。自分が答えを出す中で世のため人のため、ひいては自分のためになると判断し、参加を決断した」と説明。

一方、自分も"やんちゃ"だったと語る社長もいた。「10代の頃は人に迷惑をかけた。その分、地元の和歌山に恩返ししたい」と語る信濃路の西平都紀子氏。

過去に非行経験があり、一番受刑者の気持ちがわかるというプログレッシブの黒川洋司氏は「なぜ自分が罪を犯したかを振り返ると、意思が弱かった、視野がせまかった。いろんな人のおかげで更正できた。良心は誰にでもあると信じている。良心のスイッチを入れるお手伝いをしたい。人は変われる」と自らの経験を生かしてサポートしていくとした。

人のどこを見て採用する?

質疑応答では、「面接でどの部分を見るか」という質問にそれぞれ答え、
・人の意見を聞ける素直な心
・素直な心、目を見ればわかる。
・飲食店なので他人軸の目線、人の心を重い計れるか、謙虚、素直は重要視。
・元気と礼儀。
・やる気は伝わってきます。最終的にはやる気がすべて。
・礼儀、挨拶。
・目を見ます。やる気、元気、根気。
・表情、笑顔、挨拶礼儀。

などが挙げられた。就職活動中の学生は参考になるだろう。

企業にとってはリスクもあり、多くの経営者が難色を示した中、社名もオープンにし、先頭を切ってプロジェクトを立ち上げた7社。

経営者たちは口をそろえて「家族」「愛」「人情」が人を変えると言う。このプロジェクトが東京発ではなく、大阪から動き出したのがわかった気がした。

西成区あいりん地区
西成区あいりん地区 写真一覧
会見後、大阪市西成区のあいりん地区へ足を伸ばしてみた。路上生活者が多く、生活保護が命を支えている現実があった。実際に「失敗で人生が終わってしまう」を目の当たりにすると、再チャレンジの必要性を心底感じた。

出所者でなくても、雇用は厳しい現状にある。「こちらを先に支援して欲しい」という人もいるだろう。しかし、再犯率の低下は、不幸な事件を減らし、めぐり巡って不幸になる人を増やさない。

このプロジェクトが全国規模のものになることを切に願う―。

(BLOGOS編集部 田野幸伸)

「職親プロジェクト」調印式 参加企業代表者

千房 株式会社 代表取締役 中井政嗣
株式会社 一門会 代表取締役会長 上山勝也
株式会社 牛心 代表取締役社長 伊藤勝也
株式会社 信濃路 代表取締役社長 西平都紀子
カンサイ建装工業 株式会社 代表取締役社長 草刈健太郎
株式会社 プラス思考 代表取締役社長 湯木尚二
株式会社 プログレッシブ 代表取締役 黒川洋司

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