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なぜ有権者の「メール」利用はダメなのか?―ネット選挙解禁法案、協議の焦点

 現在、ネット選挙運動解禁について、各党の協議が続いている。与党は、選挙運動用メールの送信を、政党と候補者に限り認め、それ以外の有権者には認めない方針である。

 これに対し、早くも反発の声が聞こえてきている。例えば、「ネット選挙運動、公明党の反対により私たち一般人のみ全面解禁ならず」(ガジェット通信)という記事が、twitterなどで大きな反響を得ている。

 確かに私も、有権者にも選挙運動メールの送信を認めるべきであると考えている。ネット選挙解禁ということで、うっかり友人に「君が住んでいる所の、あの候補者、結構いいよ」とメールを送ってしまうと、選挙違反になる可能性があるというのは不条理に感じられる。だが、当然このような批判を覚悟してまで、メールを規制するというのは、それなりに「理由」があるはずである。そのような「理由」をきちんと取り上げずに、ことさらに「敵」を作り上げて叩くことは、生産的な議論とは言えない。「敵」を叩くのではなく、「理由」に丁寧に反駁していくことが、少しでも良いネット選挙解禁に繋がるのではないだろうか。

 2月13日の「自民党選挙制度調査会・インターネットを使った選挙運動に関するPT・総務部会合同会議」で配られた資料では、すでに電子メールの送信主体は政党と候補者に限定されている。

 そちらの資料では、有権者のメールを制限する理由を3つ挙げている。第一に、密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいという点である。候補者や政党の見えないところでデマや誹謗中傷が広がることを懸念しているということである。第二に、選挙運動用メールについては、氏名や電子メールなどの連絡先を記入しなければならないことになっているが、違反すると、1年以下の禁固、30万円以下の罰金などがあり、さらに公民権停止もありうる。このような処罰から有権者を守るためには、選挙運動用メールの使用そのものを有権者に関しては禁止してしまえばいいのではないかというのである。第三に、悪質なメール(ウイルス等)により、有権者に過度の負担がかかる恐れを挙げている。

 私がこれらの理由に反論するならば、第一の理由については、ソーシャルメディアであってもダイレクトメールなどを使うことによって、ほとんどメール同様のことができるので、メールだけ規制する理由にならない。現実にこれまでの選挙でも、嘘とも本当ともつかないウワサ話が飛び交うのは日常茶飯事である。候補者・政党が気が付かないからと言って、メールのみ規制するのは意味がないように思われる。第二に、確かにメールアドレスを記載するなど「決まり事」があるが、そんなに有権者を大切に思うのであれば、有権者が送るメールに関しては、「決まり事」を外すべきだし、罰則も対象外にしてしまえばよい。第三の点に関しては、確かにウィルス付メール、迷惑メールは問題であるが、この問題もメール固有の問題ではなく、ソーシャルメディアでも、同じようなことが起こる可能性が考えられる。さらに別途、迷惑メール防止法あるいは電磁的記録の改ざんということで刑法の罰則もある。そちらの対応を強化するというなら話は分かるが、有権者のメール利用を制限する理由には、これもならないように思われる。

 以上、私としては選挙運動メールを有権者のみ制限することに反対である。しかし最初に述べたように、制限すべきだという主張に全く「理由」が無いわけでは無い。であるならば、もっとその理由について、国民の納得が得られるように、情報をもっと発信して行くべきだろう。特に名指しされた公明党はなおさらである。野党にも注文がある。少なくとも自民党は、上記の理由を示しているはずである。ならば「与党は国民の側に立っていない」と、世論を煽るのではなく、丁寧に「理由」に対して反駁し、反対派を説得する言説を作り出していってほしい。この問題が政争の具になってしまうことこそ、国民が一番不利益を被るということを忘れてはならない。

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