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日本企業の病理がよくわかる良書「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」

非常におもしろい本「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」池田信太朗著。ややローソンの宣伝色が臭く、賛美しすぎなところが鼻につく部分もあるかもしれないが、その点を差し引いても、日本企業のあり方、組織のあり方を考える上で、非常に参考になる良書。

非効率な部分があまりに多く、組織が腐りきっていて、社員の士気も低く、ダメダメだったローソンに、2002年、三菱商事からローソンの社長として就任した、新浪剛史氏がいかに組織を改革していったかが、詳細に書いてある。

この本を読んで思うのは、どうしようもない会社病理は、ローソンだけでなく、今の多くの企業にあてはまるのではないかということ。お客様のために役立つことで利益が上がるのが、会社の原点にもかかわらず、客のためになることより、社内の権力闘争や部門のメンツ、上司の顔色ばかりうかがい、現場をろくに知らずに、会社の論理で作られた、どうしようもない商品ばかりが開発されたりする。

ローソンでは新浪氏の社長就任のおかげで、トップダウンで変えていき、うまくいったのだが、それでも社内の抵抗はすさまじく、いかに腐った組織を変えていくのが難しいかを思い知らされる。

またローソンの改革で大きな特徴は、フランチャイズの位置づけだ。改革の肝はフランチャイズのオーナーにどんどん権限を移譲し、店自らを考える組織に生まれ変わらせること。これがうまくいった理由の1つだということがわかる。

ただ普通はフランチャイズに権限移譲なんかしない。なぜなら本体の存在意義がなくなってしまうからだ。だから多くの組織では本体が一元的に権限を掌握し、中央集権的なピラミッド組織を作り上げ、現場は頭脳のない手足でいいという軍隊的な組織体系になる。

現場の末端が自分で考え、勝手に動かれては困る。上の言うことに疑問を持たず、ハイハイ聞くイエスマンがいればそれでいい。もちろんそれは1つの組織戦略として、うまく機能する場合もあるだろうが、今の時代はむしろそのデメリットの方が大きいのではないか。現場を知らない上の人たちが机上の空論で戦略を練り、現場を知らない間接部門が自分たちの予算や権限維持のために、社内政争に明け暮れた結果、出されたどうしようもない商品や戦略を、現場に押しつけ、結果売れず、でもその売れない原因を現場の気合や根性のなさと糾弾し、少ない利益を役に立たないろくでなしの上の人間や、間接部門の連中だけが吸い上げ、余計、現場は疲弊し、客がどんどん離れていくという悪循環を招いているのだ。

この点、ローソン新浪氏の改革は、社員にしてもフランチャイズにしても、末端の現場こそが一番の最前線であり、だからこそそこに権限を与え、現場の人間が上からの命令を聞くのではなく、自分の頭で考え、自分でいいと思ったことを、実行できる環境を整えることに注力している様子がよくわかる。

またこれも日本企業の病理の大きな1つだが、組織が縦関係のヒエラルキーになっていて、横同士の連携がないため、重複する非効率な業務があったりして、生産性や効率性を著しく下げているわけだが、そういう非効率的な組織体系にもメスを入れている。アホみたいに価格競争や賃金カット、新商品の乱発をする前に、無駄なコスト削減は民間企業でもいくらでもあるということが、この本を読むとよくわかる。

業界の常識は世間の非常識であることを、的確な顧客カードのデータ管理で浮き彫りにしていることも、非常におもしろい。

現場を知らないお偉い人たちや、アバウトな感覚でしか客を把握していない現場がそろって、新商品神話にしがみつく。コンビニの売上を上げるには、話題となるような新商品を、ひっきりなしに発売することが重要だと勘違いしていたのだ。

しかし顧客調査をしっかりしたら、実はその業界の常識は間違っていた。客は話題の新商品を求めてコンビニに行くわけではなく、 欲しい商品を求めて買いにくることがわかった。新商品競争ばかりに目を奪われた結果、狭い棚には古い商品がどんどんなくなってしまう。

するとその古い商品を買いたいと思っていた客は、商品がないから、だんだんとそのコンビニに寄りつかなくなる。目新しいものばかりを求めてコンビニに来るわけではなく、普段の生活の中で自分がお気に入りのいつもの商品を求めて、買いに来る客が多いことがわかった時に、過剰な新商品競争は無駄金使って客を離れさせる、逆効果な戦略であることがわかる。

これなんかもコンビニ以外でもあてはまると思う。家電にせよ外食にせよ、企業の存在意義は新商品の発売にあると思い込み、次から次へと新商品を出す。いいと思っても、その新商品はすぐに消えてしまうし、そもそも商品サイクルがあまりに早いので、逆に買う気をなくしてしまう。「どうせまたすぐ新商品出すんでしょ」「また似たような新商品か」

完全に現場や客の状況をわかっていない、机上の空論戦略だ。でも未だにそんなことしている日本企業って、たくさんあるじゃないですか。ケータイとか家電とか季節ごとにモデルを出す意味が、私にはまったくわからない。iPhoneが春モデル、夏モデルみたいに、数ヶ月で新しいものを出すか?そんなくだらない短期間のバージョンアップを繰り返しているから、iPhoneにシェアを奪われてしまうのだろう。

ローソンの改革を通して見えてくるのは、今の日本企業にはびこる組織の病理。なぜ日本企業が衰退しているのか、その原因がこの本を通してよくわかる。

でも思う。 改革なんて日本で社内ではできないのだ。ローソンの新浪氏にしても、日産自動車のゴーン氏にしても、最近でいえばJALの稲盛氏にしても、腐った日本の組織を改革できるのは、圧倒的なリーダーシップ力を持った外様にしかできない。

思えばまだ日本の政治も官僚組織も、事故を起こした電力会社も、外様を入れず、病理のツケを増税や電気代値上げでごまかせるがゆえに、腐った組織のまま延命でき、結果、サービスを享受する国民に大迷惑をかけ続けている。純粋な民間企業なら客からそっぽを向かれてしまえば、自業自得で潰れるだけだからそれでいいが、政治や行政や電気はそういうわけにはいかない。

外様による改革がないと、企業も政治も再生できないのかなという皮肉さを、この本を読んで改めて認識させられた。

おすすめの本です。ローソンがどうのというより、自分の働いている企業はどうだろうか?という観点で、この本を読んでみるとおもしろいと思います。

「個を動かす 新浪剛史 ローソン作り直しの10年」池田信太朗著

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