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オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)選手の事件報道に見る捜査機関のリーク問題

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前回の記事「マスメディアのお門違いな権力批判と未熟な国民主権」は、少し、抽象論となったので、今日は、より具体的な問題を取り上げ、メディアと権力との不適切な関係について、論じてみたい。

皆さんは既に、義足のブレード・ランナー(Blade Runner)こと、南アフリカの義足の陸上間距離走選手、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)選手が、恋人に対する殺人容疑で逮捕され、計画的殺人との罪状で起訴されたという報道に接しているだろう。

この事件、当初は、侵入者と間違った誤射として報道されたが、捜査機関の記者会見後は、計画的殺人だったかと思わせるような情報を各国メディアが報じており、現段階では、2つの情報が出ており、依然、詳細が分かっていない事件である。

しかしながら、この報道を通して、私は捜査機関というのは、どこの国も同じ問題を抱えていると感じた。

その問題というのは、否認事件における被疑者段階での意図的リークとマスメディアを利用した印象操作である。

日本のメディアや欧米の英字メディアが報じるところでは、南アフリカの警察は、当初、誤射の可能性があるとして報じられると、未だ事件から、1日、2日しか経っていないにもかかわらず、ピストリウス選手が攻撃的な人物であるかの如き、事件とは直接的な結びつきが薄い、いわゆる、"予断を生じさせる被疑者に不利な情報"を積極的に発表する一方、過失か故意かの判断に重要な犯行現場の状況や犯行動機などの情報は一切開示していないし、未だにその状況は謎である。

さらに、捜査機関が開示した予断を生じさせる被疑者に不利な情報には、被害者である恋人とのトラブルにより計画殺人に発展したとするには、直接的には関係のない情報が多々見受けられた

例えば、ピストリウス選手には、女性に対する暴行、いわゆるドメスティック・バイオレンスをした過去を示唆する情報 である。

英米のメディアはこれを「Domestic Incident」と報じていたが、示唆するのは、いわゆるDVといった暴行等である。

しかし、問題は、被害者との間での「Domestic Incident」なのか、別の女性に対するものなのかが判然しない形で報じられ、結局、これは、過去に付き合っていた、別の女性から通報があったが、嫌疑不十分で立件されなかったという話だということが判明しているが、そもそも、このような話は、今回の事件が故意による殺人なのか、過失による過失致死ないし重過失致死事案なのかという判断においては、関連性が極めて希薄であって、動機や犯行そのものを裏付けるような重要な証拠とはいえない事実である。

むしろ、この話は、別の女性に対する話であることに加え、嫌疑不十分で何ら起訴すらされなかったのであるから、この情報が事件直後に警察から流れること自体が、異常ではなかろうか

捜査機関である警察が、事件の核心部分である情報は証拠がないのかわからないが、そのような情報は一切発表せず、他方で、過去の不確かな嫌疑については、積極的にメディアに漏えいするという姿と目の当たりにすると、南アフリカの警察は、故意の立証が難しいがために、このような過去の不確かな嫌疑を開示し、被疑者であるピストリウス選手の性格が、凶暴であるという一定の方向に印象づけようとしているのではないかと思えて仕方ない

繰り返しになるが、この過去のDV疑惑は、警察自らが嫌疑不十分と判断していた以上、何ら根拠のないものなのであって、そのような根拠がないにもかかわらず、予断を生じさせる極めて危険かつ不適切な情報をあえて発表する理由何なのであろうか

この点には、南アフリカの捜査機関に対する強い違和感を感じざるを得ないのである。

しかし、これは、遠い南アフリカの警察の問題に限られる話ではない。

過去に前科があるという情報も、今回のピストリウス選手のDV疑惑と比べれば、一応、前科として確定した事実であるから、その事実そのものの真実性には、一応の根拠があるものの、前科はあくまで過去の事実なのであって、前科があるからといって、犯罪傾向があるから、当該犯行を行ったに違いないとする事実認定は、到底許されない。

わが国でも、最近世間を騒がしている遠隔操作ウィルス事件の真犯人逮捕のニュースにおいては、捜査機関が真犯人と目している被疑者、片山氏について、日本の警察は類似行動をし、マスメディアもそのリーク情報に乗っかって、逮捕前の映像を隠し撮りし、片山氏があたかもコンピューターオタクっぽいとの印象を与える報道をしている一方、警察が本来握るべき決定的な証拠については、逮捕当初ほとんど報じられなかった

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