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99.999%誤解されている通貨発行益

私が日銀の収益構造の話をすると、何故通貨発行益の話をしないのかという人がいるのです。

例えば、1万円札の製造原価が22円であるとするならば、1万円札を1枚製造する毎に9978円の利益になるではないか、と。何故そのことに触れないのか、と。筆者(私)は、シニョリッジについて知らないのではないか、と。

貴方もそう思います?

その前に、私は、余りこの手のことを書く気にはならないのです。というのも、シニョリッジなんて言っても、殆どの方は興味を示さないからです。つまり通貨発行益について記事を書いても、殆どの方がパス。

しかし、それにも拘わらず、今こうしてそれについて書いているのです。

何故か?

それは、通貨発行益について誤解をしている人が余りにも多いからなのです。通貨発行益の経理的処理に関しては、恐らく実際に実務に携わっている人たち以外は、分かっている人は殆どいないでしょう。

プラス、実務的な扱いについて何も知らない高橋洋一氏などが、政府が紙幣を発行すれば莫大な通貨発行益が得られるので、それを利用しない手はない、なんて吹聴するので、多くの方が錯覚をしてしまうのです。

安倍さんも、山本議員に吹聴され、すっかり信じきっているみたいです。

話を本線に戻しますが、私は通貨発行益を知らないのか?

ちゃんと知っています。

逆に私は、勘違いしている人にお聞きしたい。貴方は、リカードの「経済学および課税の原理」を読んだことがあるか、と。

David Recardo

ひょっとしたら、読んだことがある人もいらっしゃるでしょう。では、その本のなかで通貨発行益について書かれたところがあるのですが、憶えておいででしょうか?

実は、通貨発行益について知れたければ、先ずリカードの「経済学および課税の原理」を読むべきなのです。

ついでに言っておくと、私は、一昨年秋から、私が作成した「経済学および課税の原理」の改訳版を、希望者に無料で配布しています。そして、その改訳版には解説もつけているので、第27章を読めば通貨発行益のことがよく分かるのです。因みに、これまでに200名以上の方に配布しましたが、完読の報告を受けた方は、1人しかいません。

それはそれとして‥

結論を先に言います。

日銀は、1万円札を発行したときに、仮に製造原価が22円だったとして、その差額の9978円を通貨発行益として計上することはしないのです。

何故、通貨発行益を計上しないのか?

それは、日銀が発行した日銀券が負債の部に計上されているからなのです。

日銀券が負債の部に計上される理由は分かりますか?

日銀券というのは、日銀の債務証書だからですよね。だから、日銀は、一瞬9978円の利益を得たかに思えて、そうではないということなのです。

但し、経済学的には9978円の利益を得たと等しい意味がある。というのは、1万円の日銀券をたった22円の原価で取得することによって、それ以降、毎年相当の運用利回りを確保できるからなのです。

つまり、将来得られる運用益の総額の現在価値が、9978円になるという考え方なのです。ということで、日銀は通貨発行益を直接計上することはしないが、その代り、僅かなコストで得た日銀券で、それ以降毎年、相当の利益を挙げることができるのです。

因みに、22円分の紙と絵具で名画を完成させ、それを1万円で売ったら9978円の儲けになります。しかし、この人が、負債の部に、その名画を計上することありませんよね。だから、日銀も、自分で発行した日銀券を、自分の負債だと認めなければ、それなら直接通貨発行益を計上してもいいのでしょうが‥

こんな話は初めて聞いたという人が殆どでしょう。無理もありません。安倍さんだって、誤解しているからです。

安倍さんも動画で、こんなことを言っていました。

「日銀は紙とインクで(紙幣を)刷るわけでありますから、20円で1万円を刷るんですから、9,980円貨幣発行費(益)が出るんですよね。貨幣発行費については基本的には政府に納付しますから、これは政府が紙幣を発行するというのと同じというふうに考えていただいていいと思います。これは余り政治家が言うと、円の信任を傷つけるケースがありますから、これを余り言うことは控えておきますが、まぁそういった仕組みになっていますから孫子の代にツケを残すということにはならないと申し上げておきたいと思います」

総理が誤解するから、皆さんが間違えても無理はないのです。

そして、その安倍さんの発言に池田信夫氏が次のように批判しているのです。

「なるほど、通貨を印刷すればもうかるから、国債はいくら発行してもいいんだ。たとえば政府が200兆円の国債を発行し、日銀がそれを紙幣(日銀券)を発行してファイナンスすると、199兆6000億円の通貨発行益(シニョレッジ)が国庫に入る。丸もうけみたいなものだから、政府債務は日銀が紙幣を発行して全部買い取れば通貨発行益でチャラにできる――この話はどこかおかしくないだろうか。もちろん、そんな打ち出の小槌はない。200兆円の紙幣を発行すると、インフレが起こって民間で利用可能な資源が減る。つまり通貨発行益は、民間に対するインフレ課税なのだ」

池田氏の批判は適切ではありません。インフレが起きるからというのがおかしいというのではありません。そうではなく、日銀が通貨発行益を直接計上することはないと言わなければならないのです。だから、1万円発行するたびに9980円の利益が出るなんてことにはなっていないのです。

私の言うことが信じられないという人は、次のサイトをご覧いただきたい。

「深尾光洋の金融経済を読み解く」
「9月1日通貨発行益とは何か?」
↓↓↓
http://www.jcer.or.jp/column/fukao/index47.html

或いは、「本石町日記」
「通貨発行益(シニョリッジ)をめぐる勘違い」
↓↓↓
http://hongokucho.exblog.jp/2635830


要するに、真実は、高橋洋一氏や池田信夫氏などが主張するところにはなかったのです。

しかし、余りにも彼らの影響力が強い。だから、皆さんが間違える。安倍さんだって、そのように思い込んでいる訳ですから。

私は、勘違いしている人が悪いとは決して思いません。というよりも、通貨発行益について知っているだけでも立派でしょう。しかし、そうして俺は通貨発行益について知っているからという思い込みがあるので、つい他人を批判したくもなり、建設的な議論が阻害されてしまうのです。

折角ですから、もう一つ面白いことを言っておきます。

政府は、10円や100円、或いは500円などのコインを発行していますが、どのように貨幣発行益を認識しているか?

この問いに対する答えこそ、皆さんの考え方が正しいのです。

つまり、大雑把に言えば、政府はコインの額面と製造原価の差額を貨幣発行益として経理処理している、と。

どうです、面白いでしょう?

でも、何故扱いが違うのか?

その理由は皆さんで考えて下さい。

ついでに言っときますが、政府が発行したコインが、経年劣化などして日銀を通じて政府に戻ってくると、今度は貨幣回収に伴う損失を計上しなければいけません。

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