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ありがちな「キャズム」の3つの誤用

ktdisk

2011年11月03日 17:55

ジェフリー・ムーアの『キャズム』を今更ながら読んでみた。

キャズム

キャズム

「キャズムを越えた、越えない」とかいう話がどうも軽薄で胡散臭く聞こえ、勝手に敬遠してたのだが食わず嫌いはよくないと思い、この度手にとることにしてみた。読後にまず感じたのは「『キャズム』って結構いいことを言っているのに、世の中で誤用されていることが多いなぁ」ということ。書評は別に書くとして、本エントリーでは自分の中の整理も込めて、世で誤用されるキャズムの典型例をあげてみたいと思う。

新しいもの好き、マニアだけでなく、一般層に普及することを「キャズムを越える」という



これは最も多くある誤用なんではないだろうか。イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードという分類はネーミングの妙で、直感的でわかりやすい。それが故に、ムーアの定義にこだわらず、誤用乱用されているケースが多い。単に「普及してきた」と言えば良いことを「アーリマジョリティ層に浸透してきた」とか、「キャズムを越えた」とか言われるているのを良く目にする。「普及してきた= アーリマジョリティ層に浸透してきた」では必ずしもないし、「アーリマジョリティ層に浸透してきた=キャズムを越えた」でも必ずしもない。ターゲットとする市場にアーリアダプター、アーリーマジョリティという顧客の分類があてはまるかどうかもわからないし、あてはまったとしてもその間に実際にキャズムはないかもしれない。単に「普及した」とか「ヒットした」という話なのか、本当に「キャズムを越えた」という話なのか注意して見た方が良い。

「全ての製品・サービスにキャズムは存在する」と考える



本当に革新的な製品・サービスが、自ずとその価値を認め活用してくれる顧客のみでなく、より受け身で保守的な顧客層に受け入れられる形でそれらが提供され(ホールプロダクトとして提供される)、浸透し、時代の流れを作っていく、それが「キャズムを越える」ことと私は本書を読んで理解した。そもそもキャズムというのは、本当に革新的な製品・サービスにのみ存在するものであり、どの製品・サービスにあるものではない
”なぜ、Facebookだけが、キャズムを楽々とこえるのだろうか?”という記事を見た。この記事では「実名制」がキャズムを楽々越える理由として紹介されているが私は違うと思う。「そもそもキャズムなんてそこにはないから」、それが理由と言えば理由と私は考える*1。Facebookが弾みがついたように浸透しているのは事実だし、「実名制」が鍵となっているのも間違いない。ただ、それは実名制が響く顧客層にうまく訴求しただけであり、あんまりキャズムとは関係ない。mixiの匿名ユーザがFacebookにレイトマジョリティ、ラガードとして流れることはあるだろうか?市場や顧客層が違うのだからこれはないだろう。Facebookの流行をキャズム理論で捉えようとしているのが間違っているのだ。Facebookの「加速度的な」浸透を説明には、キャズム理論よりも、もっと単純にネットワーク外部性という考え方で見る方が遥かに自然だろう。

キャズムを如何に越えるかより、越えたかどうかに注目する



キャズムの理論というのは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティは顧客層が全く違うのだから、それぞれの層に攻め入る時は異なるマーケティング戦略をたてなければならない、というのが肝だ。技術や考え方が革新的であれば、それを見つけ、自らその技術を活用して、自社の問題を解決するために骨身を削るアーリーアダプター層に売りつくした後に(もしくはその前に)、どうやってターゲットセグメントを決め、ホールプロダクトを構築し、販売チャネルを整備して、アーリーマジョリティ市場に食い込むのか、という議論が本書では延々とされている。ところが、世の中でキャズムが語られる時は、後付けで「越えたかどうか」を評価項目として使用されることが多い。で、また市場の16%(ジェフリー・ムーアが目安値として提示しているもの)を越えたかどうかのみを評価しているものも結構目につく。「越えたかどうか」ではなく、「如何に越えるか」が大事な点であることを強調したい。
有名なマーケティング理論である「キャズム理論」によると、発売されて間もない時期に購入するイノベーター層(2.5%)、次いで情報感度の高いオピニオンリーダーと呼ばれる層(13.5%)が購入し、この2つの層の合計である16%のシェアを超えるか否かがヒット商品になるかならないかの境界線(キャズム)であるとされています。・・・<中略>

キャズム理論(イノベーター理論)では、シェア16%の壁を超えてヒットするには、上述のような「オピニオンリーダー層」にいかに支持されるかが重要だとされています。
【コラム】調査データから見えるマーケティングのヒント (6) スマートフォンは「ケータイ」を超える大ヒット商品となるか? | ネット | マイコミジャーナル
というような記述を読んでも以前なら「ふーん」という感じだったが、読後に読むとひっくり返ってしまう。申し訳ないが、どこをどう直したら良いのかわからない程、間違えだらけ。「本を読んでないし、自分は誤解しているかもしれない」と感じた方、ここ十年で注目を浴びているだけあり、とても勉強になるので是非ご一読を。

*1:そもそもシェアが16%を越えたら「キャズムを越える」と考えている点で間違っている

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