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アルジェリアテロ報道に見るメディア業界の非常識

 アルジェリアのイスラム過激派によるテロによって、日本人をはじめとする多くの犠牲者が出た。亡くなられた皆様すべての魂が安らかに眠られることを。

 今回、被害にあった日揮株式会社の社員・関係者の実名は公表されなかった。菅官房長官の会見によると、日揮側の意向とのこと。ご親族のプライバシーをなによりも優先される対応は非の打ち所がないように感じた。
 しかし、記者会見での各新聞社からの質問では、実名の公表に関するものが殺到したし、twitterでも「公表すべき」とする新聞関係者が複数現れた。

 「人質犠牲者の実名は非公表」を支持する遺族--一方で「弔いのために」公開せよという記者も(NAVERまとめ)
 
 まず前提として、今回の紛争は解決に至っておらず、北アフリカをはじめとするイスラム圏で誘拐・拉致監禁といった事件が続いて起こる可能性が高いということを踏まえておく必要があるだろう。日揮の従業員を狙い撃ちにされる危険もあるだろう。そんな中でメディアが報じられるということに慎重を期すのは政府としても会社側としても当然の危機管理だ。

 記者サイドからは、実名報道の理由として、「何よりの弔いになる」「事件を公的なものとして歴史に刻むため」といったことが挙げられていた。確かに後日に事件の全容を明らかにする中で、親族の同意があった上で公表することもできるかもしれない。しかしながら、それがストレートニュースでやる必要があるのか。ご本人や遺族のプライバシーを脅かしてまでマスに知らせる必要がある情報なのか。この二点には疑問を挟まざるを得ない。
 事件報道では、被害関係者のもとに各社の記者が押しかけるメディアスクラムが問題視されるようになっている。本来の報道の目的ではなく、記者やメディア同士のスクープ合戦で、社内や業界内での地位の向上のため、ネタを嗅ぎまわっているという疑念は深刻だし、それを払拭するだけの理論構築が「報道の自由」に拠った薄弱なものしか出てきていないのが、疑念をさらに補強していっている。
 長くなるので指摘する程度に留めるが、被害関係者の名前は実名で報道されるケースが多い一方で、被疑者側の権利やプライバシーが守られるようになりつつあるのもバランスを欠いている印象を多くの読者に与えている。今や二重三重になった不信感に対して、中のひとたちはもっと敏感になった方がいいと思うなぁ…。

 アルジェリアをはじめとする北アフリカに関しての情報が少ないのは、各国政府をはじめとする当事者からの発表をただ待つだけのメディアばかりだということにも起因するだろう。多くの読者が求めているのは、現地情勢やテログループの動向なので、被害関係者の実名を探っている暇があるならばさっさと現地に記者を派遣しろ、という話になるのではないか。人を送るのが無理ならば、現地メディアの情報をあたるなり、専門家のインタビューを行うなり、やれそうなことがたくさんあるはず。それが出来ないのならば、そのメディアや中の人は実力不足と判断されても仕方がない。

 いずれにしても。被害関係者の実名報道問題は「これまでそうしてきたから」という慣例やメディアの中でのパワーゲームが透けて見えて、少なくない読者を白けさせている結果になっている。取材対象者からも読者からも求められていない情報を、それでも出さなければいけない理由が説明できない以上は、黙って信頼回復に務めた方が建設的だと思うのはParsleyくらいなのかしらね。

 ちなみに。メディアスクラムについては鶴岡憲一氏のご著書が詳しいので、ご興味のある方はぜひ。

メディアスクラム―集団的過熱取材と報道の自由
鶴岡 憲一
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