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「日本銀行がエルピーダをつぶしたと言っていい」…安倍首相の金融政策ブレーン・浜田宏一氏が会見

安倍晋三首相の金融政策のブレーンである内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は2013年1月18日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を行った。浜田氏は、大胆な金融緩和とインフレ目標の設定によってデフレ脱却を目指す「リフレ派」の代表的な論客の一人。安倍内閣の経済政策に大きな影響を与えるとみられる同氏が、適切な為替水準や日銀法改正の必要性にも触れながら、日銀の金融政策を厳しく批判した。【亀松太郎、三好尚紀】

■「安倍総理があらわれ、アジェンダ・セッティングが変わった」

「日本の金融政策がこれほどまでに長く、15年間も緊縮の方向で続いてしまったことは、非常に不思議に思う」。会見の冒頭でそう述べた浜田氏は「これまでプレス向けに、いくら『リフレーションが大切だ、インフレをわずかに起こすことが重要だ』と説いても、なかなか理解してもらえなかった。日本のプレスはもちろん、外国の新聞を見ても『日本銀行の金融政策はいいことだ』と書いてある状態だった」と、記者たちに語りかけた。

「たしかに人口増は経済成長のために必要だが、『人口減がデフレの原因だ』と言った人は、まともな経済学者では一人もいない。日本ではそれが盛んになって、日本銀行の白川総裁までそれに乗ってしゃべっていた状態だった」と、日本におけるこれまでの経済政策の議論を批判したうえで、「そういう状態をよく理解してくれる安倍総理があらわれ、アジェンダ・セッティング(議題設定)が変わってきた」と説明した。

日本の主な政治家やジャーナリストの考え方については、「昔流のケインズ経済学で、『不況のときには財政政策しか効果がない』と言ってきた」と指摘。「それは、(外国為替相場が)固定制のときには正しかったが、変動制のときにはまったく正しくない」と批判した。

経済学における「マンデル・フレミング理論」をベースにした自らの理論についても簡単に説明。「不況、つまり完全雇用でないところでは財政政策も金融政策も必要だが、特に変動相場制のところでは、金融政策が主とならなくてはいけない。これは200年くらいかけて経済学がやっと到達した知恵の一つだが、それがどうも理解されてこなかった」と話した。

■「日銀は『ハイパーインフレがくる』と脅すオオカミ少年」

「日本銀行がいかに金融拡張に不熱心だったか」。浜田氏は日銀と欧米の中央銀行のバランスシート変化率を比較したグラフを示しながら、「イギリスやアメリカは大盤振る舞いの金融拡張を行い、ヨーロッパですら随分拡張しているのに、日本だけが拡張しなかった」と指摘。「そうすると、リンゴとミカンで、リンゴだけ増産されたようになるから、円は当然高くなる」と、日銀の金融緊縮策が円高を招いているとの持論を展開した。

さらに、2008年のリーマンショック以降の外国為替相場で、日本の円が上がった一方で、韓国のウォンが下がった点に言及し、「日本企業は韓国と競争しようすると、高いハードルをクリアーしないといけない。それにはいくら技術進歩しても能率化しても限度がある。だから、エルピーダメモリは破産してしまった」と説明。「日本銀行がエルピーダをつぶしたと言っていいと思う」とまで言った。

浜田氏は、日銀の緊縮的な金融政策が日本の経済成長を阻んでいると指摘。「発展途上国やアジアの急成長国よりも日本の成長率が低いのはやむをえないが、欧米先進国と比べても日本の実質成長率が極めて小さかったのは、金融政策の無策が大きく響いていると思う」と語った。

浜田氏のような「リフレ派」に対しては、急激な物価上昇が続く「ハイパーインフレ」を招く恐れがあるという批判がある。しかし、浜田氏は「1950年以降、日本ではハイパーインフレは起きていない。通過の供給をあまり増やしすぎないということを基本的に考えれば大丈夫だと思う」と見解を述べた。逆に、「日銀はオオカミ少年のように『リフレ政策をとるとハイパーインフレがくる』と脅しているような感じだが、そんなことはないと思っている」と日銀の姿勢を批判した。

■「1ドル=100円くらいが良い水準」

また、為替相場の適切な水準についても言及。「私は『1ドル=100円』くらいが良い水準ではないかと思っている。先日、甘利経済再生担当相が『三桁(100円以上)になると危険ではないか』と言ったが、なぜそんなことを言ったのか。たしかに110円くらいになると問題かもしれないが、95円から100円くらいなら特に問題ないと思う」と、具体的な数字をあげた。この発言は為替相場に影響を与え、会見直後にさらなる円安を誘うことになった。

金融政策の面で、浜田氏と安倍首相の考え方はほぼ一致しているようにみえる。しかし、安倍政権の経済政策のすべてについて、浜田氏が賛同しているわけではないようだ。「自民党の政策で一抹の不安があるとすると、『財政政策がないと金融は効かないのではないか』と思っている政治家が、党や閣僚の一部にいることだ。私は、金融緩和をしても何も効かなくなったときに初めて、財政政策で後押しすべきだと思っている」と話し、財政支出の拡大によって景気回復をはかろうとする自民党の姿勢に懸念を示した。

1時間半に及んだ記者会見の最後、浜田氏が口にしたのは「日銀法改正」の必要性だった。「日銀が一番好むような緊縮的な政策を続けられる状況にしないのが重要」と述べたうえで、次のような医者のたとえで会見を締めくくった。「日銀という医者が薬を選ぶとき、患者の意見を聞かずに、医者だけが決められる状況になっている。そういう判断にはどうしてもバイアスがかかってしまう。これを是正しなければいけない」

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