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セックスワーク・サミット2012・風俗嬢の『社会復帰』は可能か? ―― 風俗嬢の『社会復帰支援』の可能性を考える

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GROW AS PEOPLEはスタッフ3名の小さな団体です。本当はすべての年齢層をケアしたいと思っていますが、団体の規模を考えたら不可能です。一方、40歳の壁が差し迫っている人たちが、壁を超えられるようにお手伝いする力も、残念ながらわたしたちにはまだありません。

アンケートを取ると、18歳のときは、受け入れられなかった学校や社会と違って歓迎してくれるこの世界を楽しんでいたけれど、25歳くらいから、「このままでいいのだろうか」と危機感を抱くようになるようです。そこで、いまは25歳から34歳をターゲットに、「40歳の壁」を飛び越えるための助走をお手伝いしているところです。

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                         角間惇一郎氏

■GROW AS PEOPLEの活動

具体的な活動内容についてお話しますと、大きくわけて「Crejyoプロジェクト」「夜の世界“後”のハローワーク」「夜の世界のwikipedia(仮)」「リバースシェアハウス」と4つの事業を行っています。

「夜の世界のwikipedia」は、先ほどもお話したように、夜の世界は現状把握が非常に困難で、統計が取りづらくなっていますから、より正確な情報を得るために、女性たちの声を集めて、まとめて、社会でシェアする試みです。

また「リバースシェアハウスの活動」ですが、夜の世界で働く女性はお金を稼ぐ術はある一方で社会的信用がありません。一人暮らしをしたくても、不動産屋に断られてしまう。生活基盤を得られず、ホテルや漫画喫茶を行き来すると体力的にも精神的にもつらい。そこでGROW AS PEOPLEを立ち上げる前は「まちたみ」という町づくりのNPOで活動していたこともあって、その縁で越谷市にある放置物件を借りて期間限定のシェアハウスを運営し始めました。

夜の世界で働いている女の子は、一般の人たちと少し距離を置くため、悩み事がある場合は同じ世界の女の子に相談をします。とはいえ一週間で20万円稼げる子もいる世界ですから、周囲の子と話しているうちに金銭感覚がマヒしてしまう。そのまま「40歳の壁」にぶつかると、就職も厳しいですし、貯金もほとんどない。4人に1人に子どもがいて、その子も夜の世界に入るようになる。「夜の世界“後”のハローワーク」はこの悪循環を終わらせるために、相談相手の不足と金銭感覚のマヒの解消を目指すプログラムです。

皆さんは、給料をもらったら、何にいくら使うか割り振ると思いますが、彼女たちの多くは、遊んでお金がなくなったら、働いて稼ぐ生活を繰り返しているので、自分の月収を把握していません。その金銭感覚を是正しなくちゃいけない。

そこで、お店と連携をして、自分が一ヵ月にどのくらい稼いでいるのかを知ってもらい、さらにレシートを全部残してもらって、どのくらい使っているのか把握してもらっています。無駄があるなら無駄を削り、貯金をし、余裕がでてきたら、連携している他の団体のもとに連れて行く。結果的に、社会参加の機会を増やすことでやりたいことが見つかればと思っています。

夜の世界で働く女性たちは、救済すべき対象として見られることを嫌がります。彼女たちにとって、福祉やケアはダサいことなんですね。そのため夜のハローワークを始めてもあまり人が集まりませんでした。彼女たちは、可愛かったり、イケてたり、素敵なものに集まるんです。じつは、夜のハローワークを始めたときも、あまり人は集まりませんでした。

わたしはもともとゼネコンや設計事務所で働いていたこともあり、GROW AS PEOPLE以外にも個人的に空間デザインなどの仕事を受けていました。ただ活動が忙しくなるにつれて、なかなかその方面の仕事をさばききれなくなってしまった。どうしたものかと思い、周りにたくさんいる女の子に手伝ってもらったんです。

早速、ある不動産会社の事務所を女の子にデザインしてもらったら、ふざけ半分でハンモックを吊るしたり、サーフボードを立てかけたり、いろいろなアイディアを持ち出してくれた。しかもそれをクライアントが気に入ってくれたんです。女の子も自分のアイディアが受け入れられて喜んでいて。そこから、女の子のしんどい経験や可愛い感性を使って、よりよい社会づくりに貢献してもらおうと思い、「Crejyoプロジェクト」を始めました。このプロジェクトに参加を希望する女の子が増加しています。やはり可愛いことをやれば女の子も集まってくれるんです。

■泡となって消えないように

最後に、いただいている議題についてお話します。

まず「障害者とセックスワーカーの関係」ですが、残念ながらわたしたちの調査ではまだ把握できていません。ただ思うのは、お店も女の子を選ぶ権利がありますから、精神疾患を持っていそうな女の子を入れないこともあるでしょう。そういった子がセーフティーネットとして夜の世界に入ってくるというのはないのではないか、というのがわたしの実感です。

「先行事例とGROW AS PEOPLEの違い」としてあげられるのは、救済者や支援者の関係ではなく、身内として見ているという点でしょうか。先ほどもお話したように、彼女たちは支援される側として見られたくないと思っている。わたしたちも別に彼女たちを救済すべき対象だとは考えていません。わたしたちは「福祉」ではなく、可愛いことをやる団体なんです。それもあってわたしたちの事務所は鍵を掛けずに出入り自由にしているのですが、女の子たちのアイロンで一杯になってしまっています(笑)。

「社会復帰の困難性」であげられるのは、やはり「性」という文字は怖くて怪しいイメージがあるため、支援者が集まらないことですね。女性たちもあまり人に知られたくないと思っていますし、支援者が誰でもいいわけでもありません。

じつは初めは支援者集めとして、夜の世界のwikipediaを使って仕組み作りから始めようとしたのですが、それだけで疲れちゃって女の子に目がいかなくなっちゃいました。そこでGROW AS PEOPLEが可愛いことをしていると知っていただいて、参加してくれた女の子に、今度は支援者になってもらおうとスタンスを変えました。

冒頭で「21世紀のマーメイド」のお話をしましたが、人魚姫のように泡にならず、ずっときらきら輝いていて欲しいと思っています。今回このサミットに参加するにあたって、社会を変えること、セックスワーカーの人権など、いろいろなことを考えましたが、ぼくにはあわないと思いました。

今まで出会ってきた女の子はぼくにとって身内で、とにかく困っている。だったら「社会がうんぬん」ではなく、とにかく相談にのって、出来るかぎりのことをやりたい。彼女たちが泡にならないように、現場レベルで頑張っていきたいと思っています。

■坂爪さんによる質問

赤谷 中山さん、角間さんありがとうございました。ここからは坂爪さんとわたしからお二人にいくつか質問をさせていただき、お答えいただければと思います。まずは坂爪さん、質問をよろしくお願いします。

坂爪 中山さんに質問です。「ガールズケア」の法人化は考えていましたか?  性に関する事業はNPO法人化が困難と聞きます。というのも、ホワイトハンズも創業から3年間、行政に対してNPO法人の設立申請を何度も行ったのですが、「事業内容が社会通念上、認められない」という理由で、すべて不認証になりました。これについては、いかがお考えでしょうか。

中山 NPOにはメンバーが4人必要なのですが、今までその4人が集まりませんでした。ここ半年はメンバーも固定しているので、法人化も可能だと思います。やはり性に関する事業の法人化は難しいので、わたしが六本木で働いた頃のお客さんに相談しながら法人化を目指している状態です。

坂爪 しっかり根回ししていますね。

中山 元ホステスですから(笑)。

坂爪 次の質問です。風俗嬢にお薦めする転職先はありますか。

中山 お話したように一言で「風俗嬢」と括れませんが、多いのは看護師から風俗嬢、風俗嬢から看護師という流れです。人の体に触れることに抵抗がないことと関係があるのかもしれませんが、エステシャンなども多いですね。もちろん人によりけりですが。

坂爪 ありがとうございます。つづいて角間さんに質問です。「福祉」ではなく「可愛い」が大事とのことですが、事業の規模を大きくすることを考えていますか。

角間 そうですね、大きくしていきたいです。「プロダクトレッド」って知っていますか?

坂爪 プロダクトレッド?

角間 Apple社のサイトを見ていただけるとわかりますが、iPhoneやiPodに1つ赤いデザインのものがあります。これは購入金額の一部が「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に寄付されるんです。これはNikeやDellも取り組んでいます。ただ赤い色にするだけで、寄付が集まるんですね。

いま考えているのは、女の子がわたしたちのイベントに関わってくれたらシールを配布しようと思っています。「シールが何枚集まったか」「君のおかげで誰がきてくれたか」など、成果がわかれば、貢献度がわかって嬉しいでしょう。ディープなことをするよりもカジュアルなものを目指したいと思います。

坂爪 日本にはNPOが4万団体ほどあると言われていますが、性風俗に関する問題系に取り組んでいる団体は、残念ながらほぼゼロだと思います。この現状を変えるためのアイディアがあればお聞かせください。

角間 いま「NPOに参加すればどうにかなる」という淡い期待が世のなかにあると思います。SNSのプロフィール欄に参加しているNPOの名前を書く人をよくみかけるでしょう? それはエコや教育といった分野で活躍していた先人の成果によるものです。しかし性に関する活動はそうはいかない。やはりリスクがあるんです。だったら素敵でオシャレな活動にすればいい。もちろん本質的な部分がぶれてはいけませんが、性に対してかっこよく、素敵にやっていくことが大事だと思います。

■赤谷さんによる質問

赤谷 わたしからもいくつか質問をさせていただきます。

まず中山さんにお聞きしたいのですが、本日のお話のなかで中山さんは「セックスワーカーは一概に括ることはできない」と仰っていました。実際に、日本の性産業にはさまざまな職種のセックスワーカーがいると思います。中山さんはどんなセックスワーカーに関わっていこうと思っているのでしょうか。

中山 いわゆる「お酌をするだけのホステス」以外がターゲットです。でもキャバクラでも愛人派遣をやっていたり、ただのバーだけど援助交際の場になっているところもあるので、線引きは難しくて。だからとりあえず「ガールズ的な」とゆるく大きく括って考えています。

赤谷 ありがとうございます。つづいて角間さんにも同様の質問をします。GLOW AS PEOPLEは、どんなセックスワーカーをターゲットに考えていますか。

角間 基本的には派遣型のお店に勤務している女の子です。理由は簡単で、わたしがGLOW AS PEOPLEを始めるきっかけとなった方が、派遣型の風俗を経営されていたんです。それに派遣型なら比較的見えやすいので、活動がしやすいんです。あと店舗型に行くのは怖い(笑)。踏み込みが深ければ深いほどいろいろな問題は見えてくるのでしょうが、いまは把握している問題に対して、支援を提供するスタンスで活動をしているので、踏み込みの範囲をこのレベルにしています。それに店舗型を経験している派遣型の女の子や併用している子もいるので、店舗型の実態がまったく分かっていないわけでもありません。

赤谷 なるほど、ありがとうございます。

(この後、60分間、会場の参加者との質疑応答)


では最後に、ホワイトハンズの坂爪さんより終了の挨拶をお願いします。

坂爪 本日はどうもありがとうございました。おかげさまで数多くの方にお集まりいただき、大変有意義な議論ができたと思います。性風俗の現場はまだまだ見えにくく、多くの問題を抱えているでしょう。すべてを一気に解決することは不可能です。問題をしっかり定義し、細分化して、個別に支援していく必要があります。セックスワーク・サミットは、「風俗嬢の社会復帰支援」について来年以降も取り上げていきたいと思っていますので、ご注目いただければと思います。よろしくお願いいたします。

(2012.11.25 歌舞伎町にて) 

坂爪真吾(さかつめ・しんご)1981年新潟県生まれ。東京大学文学部在学中に、性風俗産業の研究を行う過程で、「関わった人全員が、もれなく不幸になる」性風俗産業の問題を知る。同大卒業後、性に関するサービスを、「関わった人全員が、もれなく幸せになる」ものにするために起業。2008年、「障害者の性」問題を解決するための非営利組織・ホワイトハンズを設立した。現在は全国18都道府県でケアサービスを提供している。

中山美里(なかやま・みさと)フリーライター。ガールズケア代表。編集プロダクション(株)オフィスキング取締役。ガールズケアのメンバーがオリジナルコスメの開発やメルマガ執筆などで協力したネットのラブコスメなどのショップ「Love Beauty  http://lovebeauty.jp/」がオープン。今後も、オリジナルコスメの開発や講座、メルマガなどで、協力して行っていく予定。

角間惇一郎(かくま・じゅんいちろう)1983年新潟県生まれ。サラリーマン時代、週末のみ行なっていたまちづくりNPOでの活動中に偶然知ることとなった夜の世界で働く女性たちの存在について把握するため退職。2012年2月一般社団法人GrowAsPeople設立。同じようなしんどい立場の女性たちの視点と感性を活かした相談のしくみ、デザイン事業等に取り組んでいる。「ちょっとかわいく、ちょっとすてきにおもしろく」がテーマ。

赤谷まりえ(あかたに・まりえ)1983年山形県生まれ。編集ライター。フェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティに関することなら硬軟織り交ぜたさまざまな現場に出没する。よく実践するエコ行為は「排尿音を電子音でかき消さない」こと。

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