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坂本龍一さん、どうして音楽家なのに脱原発なんですか?:後篇

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もんじゅ君の「ズバリ聞きますだよ!」第1回:後篇

撮影:弘田充
撮影:弘田充 写真一覧
福島第一原発事故にショックを受けて、2011年5月、突如ツイッター上に現れたもんじゅ君。福井県敦賀市の高速増殖炉もんじゅの「非公式」ゆるキャラながら、フォロワー数は約10万人、エネルギー問題を解説した著書も3冊あるなど、幅広い支持を得ている「炉」のキャラクターです。

このもんじゅ君が、各界の著名人にエネルギー問題についての考えや東日本大震災以降の活動について聞く、シリーズインタビューを開始します。

第1回は、ニューヨークを拠点に世界的に活躍する音楽家でありながら、震災以前から脱原発を積極的に訴える坂本龍一さんを迎えて、なぜ脱原発や環境問題に深くコミットするのかや、今年7月に幕張メッセで行われた音楽フェス「NO NUKES 2012」開催の裏話などをお聞きしました。
前・後編に分けてお送りします。

ゲスト:坂本龍一(音楽家)
インタビュー・構成:もんじゅ君(高速増殖炉)

坂本さん、どうして音楽家なのに脱原発なんですか?


もんじゅ:坂本さん、おひさしぶりです。

坂本:こんにちは、もんじゅ君。あいかわらず大きくてフカフカだよね(もんじゅ君の帽子をなでる)。

もんじゅ:ふふ。坂本さんとは8月に福島で開催されたフェスティバルFUKUSHIMA!でお会いして以来です。

坂本:そうだね。元気だった?

もんじゅ:はい。でも、福島第一原発くんも、むりやり再稼働させられてる大飯原発くんもかわいそうで、いつも気になっています。

坂本:そっか……、心配だよね。

もんじゅ:今日は坂本さんに、このBLOGOSさんの場をお借りして、いろいろ聞いてみたかったことを質問しようと思っていて。

坂本:うんうん。どうぞ。

もんじゅ:じゃあまず、これはよくある質問かもしませんが、どうして坂本さんはミュージシャンなのにそんなに一生けんめいに原発問題について意見を発信したり、行動したりしてるんでしょうか。

坂本:あ、それは意外と質問されたことないなぁ。

もんじゅ:えっ、そうですか。なんで音楽家なのに、脱原発なんだろう、って考えて。

坂本:うーん、これはべつに「ミュージシャン」っていう職業は関係ないと思うんだよね。たとえばさ、これは僕の考えだけど、魚屋さんでも肉屋さんでも八百屋さんでもミュージシャンでも、「人を殺しちゃいけない」とか「泥棒はしちゃいけない」っていう感覚はあるよね。それと同じことだと思うんだよ。

あれだけの巨大事故を目の当たりにしたらさ、「あれはないよね」って思うのが庶民の感覚でしょう。僕が「原発をやめよう」っていっているのは、ただそれだけのことなんだよね。

もんじゅ:音楽家だから、とかいうことじゃなくて、シンプルな感覚が動機なわけですね。

「あれはないよね」っていうシンプルな感覚が出発点


坂本:そうそう。僕はたまたま3.11の事故が起こる前からそういう情報を持っていたから、人よりも知るのが少し早かったというだけだと思うよ。

もんじゅ:坂本さんは、2006年から「ストップ・ロッカショ」を主宰されたり、脱原発運動に関わっていましたよね。

坂本:うん。この「原発はあぶない」っていうのは感覚的なものなんだよね。僕はべつに放射能の専門家じゃないわけで、ただひとりの市民として、感覚的に「危険だ」と感じているだけ。とはいえ実際、チェルノブイリでの子どもたちの悲惨な写真なんかも見ているからね……。

チェルノブイリの事故は、いまも記憶にも鮮明に残ってるよ。だけどあのときはやっぱり遠い国のできごとで、なにか運動を始めたりはしなかった。対岸の火事というか、当事者じゃなかったんだと思う。今はそのことを反省してるけど……、しょうがないね。

もんじゅ:チェルノブイリのあと、日本でも脱原発運動は一時期盛り上がったけれど、そのあとまたもとに戻ってしまった、って聞いています。

どれだけ危機を自分の問題として考えられるか


坂本:今回の震災でも、関西の人達にはあまり危機感がないんだよね。だけど思い返してみたら、阪神淡路大震災のときには僕ももちろんショックを受けたんだけど、どれだけ自分のこととして、当事者として考えてたかっていうと、危機感の薄い部分があったかもしれない。だからしたかない面もあるんだろうなとは思うんだけどね。

もんじゅ:そうですね、ボクの地元の福井でも、原発事故については、関東のみなさんにくらべて危機感が薄いかなって思います。若狭湾のまわりには商用原発だけで13基もあって、すごく密集してるわけですが。

坂本:これだけ大きな福島の事故が起こった以上、日本中が当事者だと思う。稼働しているかどうかに限らず、すでに大量の放射性物質が日本中にあるわけで、危険なことには変わりないしね。そういうリスクのあるものを、そのまま放っておいていいとは思えない。

もんじゅ:動かせばもっと危ないけれど、動かしてなくてもじゅうぶんに危ないですよね。

坂本:そうそう。だから、「音楽家なのになんで脱原発なのか?」って聞かれても、べつにミュージシャンだから原発の話をしてるわけじゃないくて、職業は関係ないんだよね。

人間というのは、ほんとうに保守的な生き物


もんじゅ:坂本さんのたとえであった、「泥棒しちゃダメだよね」っていうのはたぶん誰からも反論がこないと思うんです。でも、「地震国の日本で原発使うのってダメだよね」っていうのはすぐに反論がかえってきますね。

日常生活でも、ネット上でも、原発について話題にすることじたいがすごくハードルが高いんだと思います。「こわくて原発の話なんてできないよ」っていろんな人から相談されたこともありますし。

坂本:それはやっぱり一種の情報操作っていうか、あれだけの大きな事故を見ても、この50~60年の洗脳がまだ効いちゃっているというか。そう考えたら、人間というのはほんとうに保守的な生き物だよね。

福島の事故を見ればもう、どうすべきか明らかだと思うんだけど、まだやっぱり安全神話がどこかに残っているんだと思う。

安全神話はかたちを変えてくりかえされている


もんじゅ:安全神話といえば、福島の事故までは「事故は絶対に起こらない」と電力会社がくりかえしいっていましたよね。それが、IAEAの基準でレベル7っていう最悪クラスの事故を起こしてしまった。すると今度は「事故が起きても大丈夫」とか、「この断層は動かないから」とか、またべつの安全神話がつくりだされちゃってるな、と感じます。

坂本:去年の事故の直後、6月ぐらいかな。文科省が日本中の学校の先生に指導書を配っていたんだよね。「放射能は安全だ」っていうことを、ここでも洗脳しようとしていたわけだよね。
放射能を正しく理解するために 教育現場の皆様へ 文部科学省

たとえば、原発反対派じゃなくてニュートラルな科学者達からも、チェルノブイリの影響で約100万人が亡くなっているという報告があったりする。で、チェルノブイリは原子炉がひとつだったけれど、福島では単純にいえばその4倍の4基がダメになったわけでしょう。これは大変な事態だと思うよね。なのに、どこかのほほんとしているように見えるのが不思議だと思うよ。

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