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「新卒採用をやめて、もっと多様性を」ー外国特派員と考える、日本のメディアと記者のあり方

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(左から)影山氏、ファクラー氏。(撮影:濱田敦子)
(左から)影山氏、ファクラー氏。(撮影:濱田敦子) 写真一覧
去る11月23日、日本財団との共催イベント「外国特派員から見た日本のメディア」を開催、7月に上梓した『「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)』が話題のニューヨーク・タイムズ東京支局長マーティン・ファクラー氏と、AP通信社特派員(東京支局)の影山優理氏をお迎えし、話を聞いた。

ファクラー氏は90年代から日本を中心にアジアの各都市で通信社・新聞社の記者として活動、2009年からニューヨーク・タイムズ東京支局長を務めており、日本の記者クラブ制度の弊害や、東日本大震災後の報道の問題点などを鋭く指摘している。影山氏は6歳から米国での生活を経験、日・米両方の文化に精通しています。ジャパンタイムス記者を経てAP通信特派員に就任、20年にわたって世界に向けて日本について、情報を発信し続けて来た。

日本のジャーナリズムは海外メディアからどう見られているのか。また、Newsweekが年内で紙媒体の廃刊を決定、ニューヨーク・タイムズではデジタルでの購読数が紙の購読数を上回るなど、メディアを取り巻く環境の変化が著しい米国に対し、日本のメディア業界ではどういうことが起きるのか。これからの日本のメディア企業や記者、ジャーナリストのあり方を探った。【構成:大谷広太(編集部)】

問われているのは個人がどういう風に行動するかということ

大谷広太:まずファクラーさんから、日本のメディアの現状などについて簡単にお話頂ければと思います。

マーティン・ファクラー氏(以下、ファクラー):ニューヨーク・タイムズの東京支局には記者が2人いまして、僕は政治と社会の担当で、もう1人は田淵広子という経済とビジネスの担当がいます。よく日本離れとか、”ジャパン・パッシング”と言われるんですけど、ニューヨーク・タイムズはまだ日本に力を入れています。2人しかいませんが、ワシントン・ポストとかロンドン・タイムズなどと比較すれば倍です(笑)。

皆さんももうご存知だと思うんですけど、日本では既成メディア、特に大手紙に対しての不信感が強くなってきましたね。

私は3.11以降、2ヶ月にわたって、茨城県の北部から岩手県の宮古あたりまで全て見てきました。福島第一原発事故を取材する過程で、次第に日本政府に対しても、日本の既成メディアに対しても不信感が生まれてきました。新聞を見ると、大丈夫だとか安全だとか、そういう内容の報道ばかりで、自分が見ている現実と余りにもかけ離れていたんですね。

明治時代からのシステムだと思うんですけれど、新聞は”お上”が国民に対して発信した情報を伝えるという仕事なんですよね。記者クラブの席に座って、官僚から情報を貰って国民に伝える。表現が難しいけれど、”官尊民卑”というか、どこかで国民を見くびっている感じがありますよね。最近ではフィーチャー(特集)記事を増やすなど、既成メディアも現状を変えようとはしているし、問題に気付いていない訳ではないんですけど、まだまだ古い新聞の体質が残っている。

一方、インターネット発の情報の問題は、品質がバラバラであることですよね。震災以降、信ぴょう性のある情報もあるけれども、噂みたいな情報もあって、どれを信じて良いのか分からないこともありましたよね。ジャーナリズムとかニュースの分野で、既成メディアとは違う、新しいメディアとしてインターネット上に信頼性のある大きな報道機関がまだ生まれていない状態です。古いメディアの代わりの、新しい何かが出て来ていない。

多分、日本にとっての3.11の一つの意味は、メディアの改革、変化が必要であるということが国民に伝わったことだと思います。ただ、どういう形になった方が良いかとか、これからのことがまだ決まってないという、転換期ですよね。

それから海外では、通信社と新聞社の役割分担も明確です。以前は新聞も通信社に近い記事を書いていたんですが、インターネットの普及によって、もう通信社さんには勝てないんですよね。それで新聞は「タイム」とか「ニューズウィーク」のような、分析をする雑誌に寄っていったんですよ。雑誌が1週間かけて出していた記事を1日で出さなければならないんですが、新聞が自分たちの存在をそうアピールするかということになると、何か付加価値がないと駄目ですよね。どちらかと言うと、まだ日本の新聞には通信社に近い記事が多いですよね。

大谷:ありがとうございます。重要な論点が幾つか示されたと思います。この後、掘り下げたいと思います。続いて影山さん、同じく、東京から日本について海外に情報発信する中で感じていらっしゃることなど教えて頂けたらと思います。

影山優理氏(以下、影山):私の父はアメリカが大好きで、それでエンジニアとしてアメリカで勤務していました。日本人にしては英語が上手かったんですけれども、それでもやっぱりハンディに感じていました。それで、まぁ普通のサラリーマンの月給だったんですけれども、ネイティブスピーカーのように英語が喋れるようになれば日本人でも世界で活躍できるチャンスがあるんじゃないかなって、私をインターナショナルスクールに行かせたりしてくれました。父は私にエンジニアになってほしかったようなんですけど、私はモノを書くことが好きでしたし、ジャーナリストになるんだったらアメリカは世界一の環境なんですね。

私が所属するAP通信は、1848年の独立戦争の時に初めて速報を送ったという歴史を持っています。つまりアメリカ人が独立をして、民主主義を主張したというルーツのひとつですから、そこにいるということを誇りに思っています。

ちなみにAP通信には「APスタイルブック」というのがあるんですけども、これはジャーナリストのバイブルで、ほとんどの新聞や広報のプロフェッショナルはこの「APスタイルブック」を使っています。この中には報道倫理のことも書いてありますし、国や地域の名称を統一しないと読者が混乱する訳ですからその基準、レシピの書き方、記事のアップデートの方法など、細かいことから大きなことまで、私たちがどういう姿勢で報道するのかがすべて書かれています。内容は毎年更新されていて、 Amazonでも買うことができます

ステレオタイプみたいになってしまうかもしれないんですけど、アメリカのジャーナリズムと日本のジャーナリズムには、個人主義と団体主義の違いみたいなものがあると思います。

ほとんどの日本のマスコミはそういうことをしませんが、アメリカでは、一般庶民の感覚で記者がインフォメーションをシェアするという意味で、すべての記事にバイライン(署名)が付きます。場合によっては自分の首が飛ぶわけですから、自分で記事をコントロールして責任を持たなくちゃいけない。私は東京にいるので、命が狙われるようなことはないのですけれども、実際にAP通信では死者も出ていて、会社に行くと彼らの名前が並んでいます。やはり今日本で問われているのは、個人がどういう風に行動するかということ、アカウンタビリティですよね。それがアメリカのジャーナリズムのベーシックにはあります。

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