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英サンデー・テレグラフに「福島50」の原発事故作業員の声

 サンデー・テレグラフで、「福島50」(フクシマ・フィフティー)と名づけられた、福島原発事故の作業に当たる人々(約50人といわれていたことから「フィフティー」と呼ばれた)への取材記事が載っている。顔写真つきで、はっきりと声が出ている。

 福島で取材をしたのはアンドリュー・ギリガンとロバート・メンディック記者である。これまで、顔が見えないと言われた作業員たちは、「狭く、暗い空間で作業をすることの恐怖、家族への思い、それでも作業を続けていくという意志」を語ってくれたという。

 顔写真が出ているのは、電気技師の田村アキラさんと、チームのリーダーの一人鈴木ノブヒデさんである(名前は漢字が不明なので、ここではカタカナ表記)。作業員たちへの取材は、原発から2−3キロの距離の海岸沿いに浮かんだ、カワイマル船上での休憩中に行われた。

 カワイマルの乗組員によると、作業員たちは「非常に静か」で、食事中もほとんど会話はない。ビールを勧められると、断ったという。

 福島原発第3号のメルトダウンで、東京消防庁の消防救助機動部隊を率いたのが福留カズヒコさん。作業中、あたりは「真っ暗でした」と語る。「真夜中で、見えるのは自分たちの頭につけたトーチのみ。原子炉からは煙と蒸気が立ち上っていました。全てが失敗してしまったので、海水を入れて冷却するために(政府は)私たちを呼んだんです」。

「私たちは国家公務員じゃないんです。東京都の職員ですから。でも、政府はほかに手立てがなかった。最後の手段だったんでしょう」。

 救助作業の指示が出たのが午後11時。福留さんは自宅にいた。「簡潔な指示で、チームを集めて、福島に行くように、と。それで電話は終わりでした」「妻の方を見て、『福島に行くよ』と言ったら、妻はショックを受けていましたが、落ち着いた表情を見せて、『気をつけて』と言ってくれました」

 福島に行く指令を断るということは福留さんの頭には浮かばなかったという。「作業員たちは大きな懸念を抱えていました。たいていの作業を私たちは練習して来ましたが、これは経験したことがない敵なのです」

 午前2時に現場に到着し、チームは二班に分かれた。消防車の1つは、海水を汲み上げるため、できうる限り海面に近い場所に行った。2台目の消防車は、放水をするために、原子炉から6メートル以内の場所に置かれ、3台目はその途中に置かれた。
 
「すべてが瓦礫におおわれて、私たちが想像していた状況よりも悪い状況でした。」
 
「コンクリートの塊があちこちにあって、マンホールのカバーは吹き飛ばされていました。道も通れないようになっていました」。海水を汲み上げることができる場所に消防車を置くことができず、真夜中の真っ暗な中を、作業員たちはホースを持って800メートル近くを走り、海面にホースを入れたという。

 放射能が危険なレベルに達したときに、いつでも退避できるよう、車を待機させていたが、この作業の間、放射能は原子炉から流れ出ていた、とギリガン記者は書く。

 お互いに声をかけながらーー呼吸マスクをつけていたので、叫び声になりながらーーもっとホースを引いてくれ、あと少しだぞ、といいながら作業を続けた。水がホースに流れ出すと、作業員たちは、歓喜のこぶしを宙にあげたという。

 呼吸マスクを除くと、作業員たちが身に着けていたのはオレンジ色のボイラー・スーツだった。26時間の作業後、休憩所に連れて行かれ、検査を受けた。衣類は放射能を浴びていたので、押収された。身体を洗い、放射線照射をテストされた。「完全にクリアになったわけではないが、大丈夫ということで、解放された」と福留さん。「自分は大丈夫だと思う。衣類は汚染されたけど、自分の身体は大丈夫だと思う」。

 「電気が戻ってよかったと思う。あれほど暗い中で作業をするのは大変だったから」と田村アキラさんが言う。「作業をしたケーブルの一部はとても高い場所にあった。こちらが思うほどには作業はうまく行かなかったので、心配だ」。

 多くの作業員は、簡素な、白い使い捨て用のオーバーオールを着ていた。放射性物資が直接肌につかないよう遮断できても、ほとんどの放射能の被爆を予防はできないという。

 作業員は2つのバッジを身に着ける。放射能が危険なレベルに達したときに、知らせてくれるバッジである。「最悪の場所に長時間いないようにしたいと思う。常時いるのでなかったら、大丈夫と言われた」とある男性が話す。(ギリガン記者が作業員に取材をした日、別の作業員チームの二人が被爆した報道が出た。)

 原子炉を冷却化する作業の中で、田村さんを含む作業員は、当初、発電所の床で寝ていたという。「シフト制になっておらず、私たちは24時間体制で働いています」「また明日は原発に戻ります」「1時間作業をして2時間休むというやり方をしてきました」「最初は10人の作業員でしたが、今は30人に増えたので、休みを取って食事を取ることができます」

 チームのリーダー、鈴木ノブヒデさんが言う。「私たちは非常に神経質になっています。緊張感が漂っています。でも、作業を続けなければいけません。肩に大きな責任を感じます。世界中が見ているし、みんなが応援してくれています。私たちが孤立していないと感じています」。

 外の世界へのメッセージはと聞かれ、鈴木さんは「今考えられるのは作業を続けていくことです。毎日、戦っています。応援してください」。

 32歳のある男性作業員が言う。「とっても怖いです。いつも恐怖におびえています」「でも、これは重要だし、やらなければならないことーこれが私を動かしています」。

 記者が取材した作業員たちは、事故発生から家族に会っていない。「妻と両親にできれば会いたい」と田村さん。「メールで連絡を取っています。とても心配しているようです」。

 「電話で一度話したきりです」と鈴木さん。「子供は応援するといってくれましたが、妻とは話してません。妻は動揺が強すぎて、話せなかったのです」。

 こうした勇気ある作業員たちの家のほとんどが原発事故による避難地域にあるため、大部分の作業員たちには、戻る家がないのだとギリガン記者は記している。

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