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第三極の結集とは何か -政策協議に加えて政党ガバナンスの確立が急務-

1.非自民・非民主では説明にならない

解散総選挙を前に第三極を巡る報道が増えているが、何が起こっていて、何に揉めているのか分かりにくい、という指摘が私の回りでも少なくない。それはそうだろう。石原新党と橋下維新、そして渡辺代表率いるみんなの党の関係だけでも分かりづらいのに、今の日本には、十を優に超える政党が存在する。職業政治家でも分かりにくい政局を、一般の有権者に理解せよという方が間違っている。

一方で、日本の総選挙=衆議院議員選挙は小選挙区比例代表並立制を採用しており、ほとんどの議席を一人区で争う(比例代表部分は捨象)。従って、政党の数は二つに収斂し、小選挙区では有力候補二人の一騎打ちになりやすい構造を内包している。有権者は自らの票を死票にしたくないという心理が働くため、有力な二人に票が集まりやすい、というわけだ。(デュヴェルジェの法則

そうした中、あらゆる政治グループが、自分たちこそが第三の選択肢(=第三極)である、そう主張して憚らない。みんなの党の渡辺喜美代表が「自民党は嫌だが民主党で大丈夫か」と訴えたのは三年前の結党時だが、最近でも新党大地の鈴木宗男代表までが「民主党にはがっかりだ、自民党にはこりごりだ」と表現し、国民の歓心を得ようとしている。

確かに、こうした表現は、二大政党に愛想をつかした国民の声を代弁してはいる。自民党の支持率が持ち直しているといっても、支持政党なし、が六割以上に上るのだから、二大政党への違和感は依然根強いと言わざるをえない。しかし、民主党と自民党が政党の体をなさなくなっている現在、非自民・非民主と言ってみても、何も言っていないに等しい。仏教の経典ではないのだから、やはり、もっと積極的に、第三極の内実を明らかにしていく必要がある。

2.本当に大事なのは政策より政党

第三極の結集とは何か、と改めて問われた時、多くのマスコミは、政策の一致が必要だと指摘する。消費税、原発政策、TPPなど最近注目度の高いイシューを取り上げて、個性の強い代表たちのポジションを整理しながら、くっつくのくっつかないのと解説をしている。確かに政策協議は大事だが、それは第三極がどういう集団であるかを表す「旗頭」を決めるための協議であって、すべての政策で意見が一致する必要はまったくない。

そもそも、民主主義国家において、主権者である国民の民意は多様である。世代によっても、地域によっても、何よりも個人ごとにその思想信条は異なる。その代表である代議士についても、渡辺喜美代表が「百人集まれば百通りの政策がある」と仰ったように、個人の政見が多様であるのは当たり前のことだ。無理に「政策は一致した」と取り繕うことは百害あって一利なし、大事なことは、そうした多様な意見をどのように集約するか、という政党(政治グループ)のガバナンスなのである。

ここで、そもそも政党って何?、という方は、まず、これこれを読んでいただきたい。要すれば、小党が乱立すれば国会での利害調整が大変になるし、大政党が存立すれば政党の内部が利害調整の場になり、それはそれで大変なことになる、というのが政党である。民主主義にバイパスはない。政治リーダーが自分の政策にこだわれば、こだわりの数だけ小党が乱立する。逆に、しっかりしたガバナンスを備えた政党を構築できれば、幅広い民意の受け皿となることが出来る。誤解を恐れずに言えば、政策など細かく示さなくても国民は安心して国の舵取りを任せることができるわけだ。

かつての自由民主党は、後者のよい例だった。私の地元にも、(政策はともかくとして)信頼できるのは自民党だけだ、という方が今でも大勢おられる。私自身、二十年近く霞が関に勤務し自民党に仕えてきたのでよく分かるが、かつての自民党は、(ある意味での)民意をきめ細かく拾い上げて政策にしていく、そうした政党のガバナンスが大変よくできていた。

しかし、小選挙区制が導入されるに伴い、そして地方分権が進展するに伴い、時代に相応しい政党ガバナンスに自己改革する必要があったにもかかわらず、自民党はそれを怠り、今に至っている。先般の自民党総裁選挙で党員票の過半数を制した石破茂幹事長が退けられたことは、その象徴のように私には感じられた。そうした閉塞状況の中で、橋下徹大阪市長が新しい政治運動をリードし、国の統治機構とともに政党の統治機構を作り替える、としているのは、至極真っ当な考え方なのである。

3.第三極の結集は政党づくりと弁えるべき

もちろん、私は政策がどうでもいいと言っているわけではない。政党には綱領があり、選挙にあたっては事前に公約=政策を公に約束し、国民に信を問う、当たり前のことである。しかし、しっかりしたガバナンスのない政党がいくら政策を掲げても、民主党の例を持ち出すまでもなく、決して実現することはない。政党あっての政策なれば、政策だけではなく、その政治グループのガバナンスを見極めていことが、私たちには求められている。

こうした視点からみれば、第三極の結集が相成るか否かという問題は、単に技術的な政策協議に還元できるような薄っぺらな問題ではなく、むしろ、どのような政党(政治グループ)をつくり上げるのか、という、本質的な”摺り合わせ”の問題だということが分かる。橋下市長がみんなの党やたちあがれ日本を左に右に揺さぶっているように見えるのも、その”摺り合わせ”をしているのだと理解すれば、分かりやすいのではないだろうか。

私たちは今、五十年、百年に一度の大転換期に遭遇している。堺屋太一先生が名著「第三の敗戦」において、ここ二十年の衰退の末に迎えた東日本大震災を、徳川幕藩体制の崩壊、太平洋戦争に次ぐ「第三の敗戦」と位置づけ、奮起を促している通りである。政党づくりにおいても、二、三年で崩壊する政治グループではなく、今後五十年、百年の未来に向かって日本の社会と経済をしっかりリードできる、そうした真っ当な政党を構築していくことが必要なのである。

なお、政党ガバナンスについては、先週十月二十三日付のWEDGE(十一月号)に、構想日本の加藤秀樹代表が「今こそ政党法制度を」と題する寄稿をされている。まさに時機を得た提言であり、一読をお勧めしたい。

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