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「キャリア官僚だって人間」―30歳元キャリア官僚の語る霞ヶ関の実態

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宇佐美典也氏(撮影:大谷広太)
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メディアでは批判対象になることが多い公務員。公務員の中でも最上位にある霞ヶ関のキャリア官僚は、今の自分たちの待遇や政治状況、メディアでの扱い方について、どのように考えているのだろうか。

今年3月、1人のキャリア官僚が自身の給与をブログで公開し、注目を集めた。このブログの筆者は、経済産業省の若手キャリア官僚である宇佐美典也氏。先日経済産業省を退官し、「30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと」を上梓したばかりの元キャリア官僚、宇佐美氏に話を聞いた。【取材・執筆:大谷広太、永田正行(BLOGOS編集部)】

ブログを始めて「プラスになったことはほとんどない」


―まずは著書を出された経緯をお聞かせください。

宇佐美典也氏(以下、宇佐美):経緯は単純で、ブログを読んだ出版社の方から「本を出してみないか」と声を掛けていただいたんです。経済産業省を退職する覚悟は決めていたので、官僚というキャリアを終えるのであれば、一つの区切りをつける意味で本を書くのも良いかな、と思って引き受けました。

―ブログを始めたり、情報発信を強化することによって、職場における周囲の反応が変わったりしたことはありましたか。

宇佐美:事前にコンプライアンス規定などを読みこんで、それに抵触しない範囲でブログを始めたこともあり、人事や広報部局からは一言「やり過ぎないように気をつけてね」と注意されたくらいでした。ただ総じて、職場においてブログを始めたことがプラスに作用したことはありませんでした。あまり具体的なことを言うと迷惑が掛かるので控えますが、「ブログなんて辞めろ」と圧力をかけてくる人もいました。逆に陰で応援してくれる人もたくさんいましたが。

—同期など年齢の近い官僚の方の反応は、どういったものでしたか。

宇佐美:全体の9割が応援の声でした。「よくぞ言ってくれた!」というメールをもらうことも多かったです。あとの1割は「調子に乗るな、やめろ」というようなネガティブな意見と「そんなことして大丈夫??」といった心配の声が半々でした。

―これは著書の中でも書かれていたのですが、私たちも同世代の官僚の働き方を見聞きしていると、残業も非常に多いですし、いわゆる” ブラック企業的”な働き方をしていると思います。メディアに叩かれながらも、そうした激務に耐えていけるのは「国の為」という志があると思うのですが、文字にしてしまうと「本当かよ」と思ってしまいます。宇佐美さんご自身は、そうした厳しい労働環境の中でどうやってモチベーションを保っていたのでしょうか。

宇佐美:仕事の魅力が大きかったので多少の無理も我慢できた、という面が大きかったです。官僚という仕事の魅力は、3点ほどあると私は思っています。

一つは仕事の大きさです。私が退官する直前まで携わっていた仕事では年間数十億、数百億という単位の研究開発資金の差配を担当していました。これだけの規模のお金を30歳で任されるということは、他の仕事でなかなかないでしょう。

もう一つは、法律や税制の仕組み作りなど直接的に”権力”に携われるということです。新しい制度を作る時は、一流の研究者や会社経営者など多くの優秀な方と議論する機会が得られますし、そうした知見を活用して法律にまとめあげていく作業は激務ではありましたが大変勉強にもなり結構楽しかったです。

さらに、交渉において国を代表する誇りを味わえることです。古いようですが日の丸を背負うというのはやはり日本人冥利に尽きるという部分がありました。

―国を代表するということは、逆にストレス要因にもなりえると思います。「こんなの俺みたいな若造が判断していいのか」というようなプレッシャーは日々の業務の中であるのでしょうか。

宇佐美:ありましたね。一例を挙げると半導体業界の国家プロジェクトの再編を担当していた時には重圧で、食事が喉を通らず「なんで俺がこんな損な役回りをこなさなきゃいけないんだよ、嫌になっちゃうよ」というのが口癖になっていました。

そのときは、官民折半で研究開発費として200億円調達する枠組み作りを担当していました。企業側に100億円調達してもらわなければならないのですが、当然一社で100億円すべてを出すのは難しいので様々な調整が必要となりました。十社以上にのぼる企業の間でどのように資金を分担させるか、また外国企業と日本企業の間で知財活用ルールについて、どのように差を設けるかといった点に頭を悩ませていました。一方で政府側としても国会で予算が承認されるまでは「100億出す!」と完全には言い切れない。財務省も当然渋い顔をする。そういう状況であっても、プロジェクトで注力すべき研究開発領域もつめていなかければならない。日々ギリギリの調整でした。

—辞めるにあたって、引き止めなどはあったのでしょうか。

宇佐美:ありがたいことに、辞職の意向を人事に伝えた当初から引き止めてもらえました。自分がスタンドプレーをしていることは重々感じていたので、変なことを言うようですが、引き止めてもらえて正直嬉しかったです。「経済産業省も度量が広いな」と感じました。 

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