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しょせんメルマガなんてディナーショー?―やまもといちろう×家入一真対談【後編】

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撮影:濱田敦子 写真一覧

やっぱり「メルマガはディナーショー?」


——お二人がメルマガを始めようと思ったきっかけはあるんですか?

やまもと:僕はメルマガは元々興味がなかったんです。元々深水(深水英一郎)さんとか親しかったので、まぐまぐを見ていて、「なんだこんなビジネスやりやがって…、面白そうだけどちょっとないな」という思いでした。ただ電子書籍がなかなか売れないという話の中で、過渡的な商品として、テキストだけさばいてePubで配信できるサービスがあるよっていうのは前々から分かっていた。そうした状況の中で、堀江さんが大爆発したんですよ。

彼はやっぱりある意味天才で、自分で流れを作る力がある男なので、僕みたいな誰かの作った流れに乗るような人とは違う。パワフルな人なので、彼がそういう波を作ったのならば乗っておくのが吉だろうと考えたんです。

夜間飛行とBLOGOSで始めた直後に、幾つかお話をいただいたんですけど、さすがに同じメルマガをスタンド複数で配信しても仕方がなかろうと思いまして、当面2社という形で運営しています。

自分の読み手の層を考えるとあまり店の数を増やしても千客万来にはならないという判断です。堀江さんや津田さんであれば、もっと一般的な人が読むので、売り場が増えれば増えるほど、露出も増えて読者も増えるでしょう。

でも、僕みたいな書き手は、僕のブログもある程度読んでいる人じゃないと購読しないじゃないですか。であれば、僕をわかってくれているメルマガ業者さんとしっかりとお客さん、読み手を育てながらやっていったほうがいいだろうという判断で、2つに絞ったという感じです。

——家入さんはどういったきっかけで始められたんですか。

家入:きっかけですか…。1年前に1ヶ月くらいやって、燃え尽きてやめちゃったんですよね。無料期間中に終わったので損は与えていないんですけど。それでやっぱり申し訳ないという思いがあって、1年くらい冷やしてたんですよ。

それでも、やっぱやりたいということで再開したんですね。あと、定期的に何かものを書くというのが、すごく楽しいことなんじゃないかと思って、興味があって、もし買ってくれる人がいるんだったら、やろうかなというくらいの気持ちで始めました。

無料期間というのもあったかもしれないですけど、1年前にやった時は結構いい感じで数字が伸びたんですよ。でもやっぱり、その時に1ヶ月でやめたというのがあって、今回は全然伸びない。信頼って大事だなって改めて思います。

やまもと:それ信頼なんですかね。マーケットのタイミングもあると思うんですが。

家入:今は結構厳しい時期ですか?

やまもと:ちょうど伊藤直也さんが「メルマガはディナーショーだ」みたいなことを言っていて、「ですよね!」「そうに決まってるよね!」と思いましたね。やっぱり、もの書いて読んでもらって、お金払ってもらうとなるとそういう側面は絶対にある。否定はできないですよ。

有料メルマガ論みたいな話を語ってくれたので、いろんな人が反応しているのを見ていて結構面白かったです。同じタイミングでニコニコさんがブロマガを始めて、でも数字が…あまりよくないじゃないですか。一ヶ月で有料一万! とかって、ぶっちゃけゴミのレベルです。私単独ですら、三ヶ月で2,200人の有料購読者さんがいるんですよ。ニコニコ全体で、そんなもんなのかって。満を持して来てそれかって。

——たしかにいろいろ論点がありますよね。ただ、タレントのファンクラブみたいなものはありますし、たとえ日記みたいなものでも購読してくれる人は購読してくれるわけですし。

やまもと:結局その人に対する興味の話ですよね。僕の場合、圧倒的に40代の読み手が多いです。ちょっとしたサンプルで調べた感じだと、圧倒的に40代。要は、お金を払える人たちに対して、刺さる文章と、刺さる書き手じゃないとお金は払ってもらえない。ニコニコさんだとやっぱり10代後半~20代前半の層なので、そこの人たちにはあまりお金を払って人のメルマガを読むという習慣がない。そういうのを考えると、そもそもターゲットが違ったんじゃないか、という思いがありました。売り場とそこにいそうな人と、あと書き手が持っている客層、それがうまくマッチしないとメルマガって売れないと思うんですよね。

——家入さんはどうですか?内容に対してはお金を払うというのではなくて、支援の一つの形という部分については。

家入:1年前は面白そうだから、という理由で始めて、1週間に1回しか出さなくてもいいのに、毎日書いて燃え尽きてしまったという部分があった。今回始めたのは、さっきからliverty、livertyって言ってますけど、livertyの運営費になればいいなと思っているんです。

livertyの周りに集まってきてる学生だったりとか、そういった新しい活動に対して興味を持ってくれているような若い子たちに読んでほしいものを書いているので、その運営費になればいいなと。まだまだ収益化できているサービスがないので、今はオフィス代などを持ち出しでやっていますし、そういったものの一部になればいいなと思います。

でも、若者向けみたいなメッセージばかり発信して、そういったフォロワーは増えたんですけど、そういう人たちはメルマガを買わないですよね。だから、そこのミスマッチはあるのかなって今気づきましたね。

やまもと:むしろ、そういう人にアプローチしたいおっさんをうまく集めないといけないんですよね。それを繋ぐ役割としては、家入さんは適任だと思っています。若い人たちと話をしたくてもできないおっさんって山ほどいるんですよ。「若い人たちは何を考えているんだろう」とか悩んでいる。

ノマド論とかをやっている人たちって、結局それだと思うんですよ。ノマド論で本当に頭に血を上らせているのは40~50代のおっさん方で、実際若い人たちからすると、「は?ノマド?そんなことしてねえよ」という話になってる。ノマドを熱心に語っているのは、出版でノマドを仕掛けたい人か、若者と接点の少ないおっさんばかりというのが実情ですし。第二新卒の人と随分話をしますが、ノマドって誰なんですかねみたいな話に毎回なる。

だから、若い人たちの働き方やライフスタイル、仕事に関する考え方を、本当に知りたいと思っているのは、実は年上の人たちであって、若い人たちからすると、「なんでこんなやつに代弁されなきゃいけねえんだよ」というところはあると思う。

ちょうど家入さんが、ディスカヴァー・トゥエンティワンから本(もっと自由に働きたい (U25サバイバル・マニュアル) (U25 SURVIVAL MANUAL SERIES))を出された前後に、若い人のための生き方論みたいな話をしていたので、「商売うめえな」と思いました。あざとくてうまいというか「またやりやがったか」と(笑)。

——お互いのメルマガを読まれた感想はありますか?

やまもと:家入さんのは、人格が全部出ている(笑)。絶対これ苦労して書いてるなって。

家入:だから僕の感想はあんまり聞きたくないな(笑)。無理くり書いてるんだとか、このコーナーは途中でやっぱ飽きてなくなったとか、全部バレてる。

やまもと:書き始めは勢いがあって、だんだん疲れてきてというのが読んでてわかる。なんかね、今週もお疲れ!みたいな感じで。

——家入さんはどうですか。やまもとさんのメルマガについては。

家入:面白いですよ。僕、ゲーム業界とかあんまり分からないんですよ。そういう業界の事情がわかるのは面白いですよね。裏の事情は、メルマガでしか読めないというのも面白い。

やまもと:なんだかんだで、もうすぐ発行から半年経つので、そろそろリニューアルというか、もうちょっと読み手さんに近いところで何かできないかなという気はしています。Q&Aとか、すげークソみたいなの送ってくるんですよ。そんなの聞くんじゃねえよって思います。

家入:長文で返事されるからどんどんくるんじゃないですか。

やまもと:だって、「会社潰れそうです」って来たら、3行で終わらすわけにはいけないでしょ(笑)。「やめたら」とか言えないですよね。さっきまさにおっしゃった、リストラって経営者からするとすごく辛いじゃないですか。自分が否定されるし、頭を下げる瞬間に、従業員の反発があって…みたいな。あれは経験できない、踏み切れない人が多いですよね。だけど金を払ってるのは俺なんだし、俺が一番苦しいじゃんという思いもあるだろうし。経営者として、人を雇うと、こうであって欲しい人間関係がなかなか反映されないので、ストレスが溜まる。いつも事業って、順調なわけじゃないですし、試行錯誤があったりとか、悩みがあったりとかするのは理解できます。だから、さすがに、それを2行で返しちゃうと怒られるので真面目に答えないといけないとは思います。

——他の方のメルマガを読んでいて、気づいた点や面白いものはありますか?

やまもと:メルマガは、週刊誌などとは違って自由にかける反面、テーマが分散してしまうんですよね。本田雅一さんなんかのメルマガを読んでいると、「ああ、今回はネタがなかったんだな」という時があるんですよ。毎週コンスタントにネタを書こうとすると大変なんですよね。僕はどちらかと言うと、日々調べたりとか、定点ウォッチしているものを順番に出すだけでメルマガが成立してしまうんですけど。

家入:確かに、僕もネタがなくなっちゃうんですよ。

やまもと:ネタはちゃんとメルマガ用に仕込み続けておかないと。尽きちゃいますよ。

——それぞれ、こういう人に読んでほしいみたいな希望はありますか

家入:僕はもうちょい模索したい感じです。今書いている内容は、自分が書いていてあんまり面白くないので、もっと自分が書いていて面白いものにシフトしていきたいなと。いろいろと模索する中で、しっくり来る表現に落としこんでいけたらいいなという感じで、もうちょいゆっくりペースで進めていけたらいいなと思ってます。

やまもと:個人の興味としては、自分自身のメルマガというよりは、「メルマガの次は何か」が気になるんですよね。このままでは絶対に終わらないはずなんですよ。ずっとメルマガってことにはならない。メルマガではない方法、別の表現型が出てくると思う。でも、それが電子書籍だと言われてもいまいちピンと来ないんですよねぇ。


やまもといちろうメルマガ「人間迷路」

プロフィール


やまもといちろう
ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
1973年生まれ。1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年、イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。
著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」、「リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか? (アスキー新書)」など。

@kirik - Twitter
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家入一真
起業家、クリエイター。モノづくり集団、liverty代表。
1978年生まれ。株式会社paperboy&co.創業者。2008年当時、ジャスダック市場最年少上場社長に(現在は退任)。
著書に「新装版 こんな僕でも社長になれた」、「もっと自由に働きたい (U25サバイバル・マニュアル) (U25 SURVIVAL MANUAL SERIES)」。

@hbkr - Twitter
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