記事

小太り韓国人ラッパー、PSY(サイ)の"Gangnam Style(江南スタイル)"が欧米で大ブレークしたワケ

英国シングルチャートで韓国人ポップミュージシャンとして初めて1位になった小太りの男性ラッパー、PSY(サイ)のシングル"Gangnam Style(江南スタイル)"。世界中がPSYのクレージーホース・ダンスを踊り、意味も知らないハングルで"Gangnam Style"と叫んでいる。格好良くてダンスも歌もクールなK-popのイメージとは駆け離れたPSYがどうして欧米で大ブレークしたのか。

レオナ・ルイスを生んだ英人気オーディション番組『X Factor』でも参加者が"Gangnam Style"のリズムに乗ってクレージーホース・ダンスを披露するなど、PSYの人気はとどまるところを知らない。おそらく、その秘密はPSYが米トーク番組『エレンの部屋』でブリトニー・スピアーズにクレージーホース・ダンスをうまく踊るコツを聞かれて、「服はおしゃれに、ダンスはちゃちに(Dress Classy, Dance Cheesy)」と現代韓国のサブカルチャーを伝授した言葉に隠されている。

トム・クルーズやキアヌ・リーブスのように二枚目でないPSYは、クレージーホース・ダンスで小太りな自分をコミカルに見せ、米国の視聴者をホッとさせる。その一方で、ギンギラギンの洋服でめかしこみ、米国仕込みのこなれたアメリカ英語で米国人の心をわしづかみにしてみせた。

クールなK-popが日本を中心にアジア市場を席巻したものの、欧米市場で今一つ伸び悩んだのに対して、田舎者の成金スタイルのPSYは米大手動画投稿サイトYouTubeを通じ欧米市場で爆発的な人気を集めた。欧米にとってPSYは急成長を遂げる新興アジアを象徴しているように映ったのかもしれない。

江南はソウルを流れる漢江(ハンガン)の南にあり、明洞(ミョンドン)に代表される北の旧繁華街地域とは対照的な新興地域だ。1970年代から開発が始まり、2000年以降に不動産開発が急激に進んだ。住宅一軒当たりの値段は平均的韓国人成年の18年分の年収に相当。高級海外ブランドのブティック、豪華クラブ、整形外科医院がひしめく。

競争社会の韓国で勝ち組が集まる江南には欲望と嫉妬、恨みが渦巻く。韓国最大の総合家電メーカー、サムソンの液晶テレビ、スマートフォンが世界中にあふれる一方で、韓国の自殺率は世界ワーストワン。米国シングルチャートBillboard Hot 100でも1位になるのは確実なPSYの成功は韓国の光と影をよりくっきりと浮かび上がらせる。

米SF作家ウィリアム・ギブソン氏は米英インターネット・マガジンWIREDのインタビューに対して、"Gangnam Style"の爆発的ヒットを1970年代のロンドン・パンク・ムーブメントと比較し、「もしインターネットの時代でなかったら私が韓国のサブカルチャーと出会うことはなかっただろう。これはインターネット・ミームの一つだ」と指摘している。

ミームとは英動物行動学者リチャード・ドーキンス氏が著作『利己的な遺伝子』で紹介した概念で、遺伝子が生物を形作る情報を伝達するように、ミームは言語や宗教など文化を人から人へと伝えていく。昔は文化の伝播に時間がかかったが、インターネットの時代、そのスピードは加速度的に増している。インターネットはこれまでにさまざまなメガ・ヒットを生み出してきた。

ギブソン氏は「1970年代は若者たちがナップサックにレコードを入れて、外国にパンクを伝えた。今はYouTubeにアップすれば、一瞬にして世界中に伝わる。"Gangnam Style"が次の流行にすぐに取って代わられるインターネット・ミームに過ぎないとしても、私はPSYの次の作品を視聴してみたくなるだろう。周囲がTwitterで“あなたも見た?見た?”とささやきかけてくるからだ」と話す。

故・坂本九さんの「上を向いて歩こう」は「SUKIYAKI」として欧米で大ヒットし、1963年に全米シングルチャートで週間1位となった。インターネットがなかった時代の「SUKIYAKI」は今でも欧米の年配者の心に残っている。"Gangnam Style"は果たして、どれだけ長く人々の心にとどまることができるのだろうか。(了)

あわせて読みたい

「K-POP」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    新旧首相が会食 超豪華4ショット

    笹川陽平

  2. 2

    天皇退位の恩赦で大物議員復活か

    NEWSポストセブン

  3. 3

    中国のご都合主義に飲まれる世界

    文春オンライン

  4. 4

    上原不倫NG 松本人志フジに苦言

    渡邉裕二

  5. 5

    ネット社会を見誤ったヒカル氏

    藤川真一

  6. 6

    ナチス賛美する高須氏は医師失格

    清 義明

  7. 7

    インスタで増加 脱ぐ女性の動機

    NEWSポストセブン

  8. 8

    死ぬまでSEX 現代高齢者の性事情

    PRESIDENT Online

  9. 9

    慰安婦問題 失敗だった謝罪姿勢

    一般社団法人日本戦略研究フォーラム

  10. 10

    慰安婦と軍艦島 韓国若者の本音

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。