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日本維新の会が直面する2つの挑戦 ―小選挙区/地方分権時代の政党づくり―

1.「維新の挑戦」とは何か

新党「日本維新の会」が一昨日28日、大阪府の選管に設立届を提出し、国政政党として正式に発足した。マスコミの報道等の論調を見ていると、日本維新の会と大阪維新の会との関係、国会議員と地方議員との関係等について模索が続いていることや、地方の首長である橋下徹大阪市長が党首となり大阪に党本部を置くことなどを取り上げて、公党としての運営を不安視する向きもある。

しかし、日本維新の会は、政党の三要素である1)基本政策を記載した綱領=「維新八策」、2)組織運営等に関する「規約」、3)所属する「議員」、の3つを整えたばかりであり、来たる解散総選挙・衆議院選挙を初陣として、新しい政治と新しい行政の仕組み、そして新しい国会を創りゆく「維新の挑戦」を開始したばかりだ。民意をしっかり受けとめ、新しい政治運動を成功させる必要がある。

特に、小選挙区時代の政党づくりは、そもそも困難な挑戦である、ということを改めて確認する必要がある。衆院300の選挙区は一人区の小選挙区(比例ブロックの議席をひとまず無視)だから、多様な意見を束ねる機能が国会にではなく政党に期待されるからだ。加えて、地方分権時代の政党づくりは、地域政党と中央政党の関係がその要となるが、既に国会議員の一部が飛び跳ねているように、前代未聞の挑戦となる。

私たち、特に地元大阪で地域政党・大阪維新の会を支え、また、全国の地域で国政政党・日本維新の会の旗揚げに呼応して立ち上がろうとしている関係者は、小選挙区時代の政党づくりとはどういうもので、地方分権時代の政党づくりは如何にあるべきか、という根本のところをしっかりと思案し、覚悟を決め、心を定めて、この「維新の挑戦」に勇んで臨み、勝利していく必要がある。

2.小選挙区時代の政党づくり

尊敬する宇野重規先生が、「なぜ政党が必要なのか」という小論を「フォーサイト」に掲載されていて、学ぶところ大であった。その中で先生は、「利害調整の場としての政党」ということを仰っている。つまり、民主的国家の場合、どこかで合意形成がなされなければならないが、小党が乱立すれば国会での利害調整が大変になるし、大政党が存立すれば政党の内部が利害調整の場になり、それはそれで大変だ、という趣旨だったと思う。

現在の小選挙区(比例ブロックは捨象)の場合、原則二大政党に収斂していくはずで、日本維新の会もご多分に漏れず、過半数獲得を目指すと宣言をしている。政権を目指す政党としては当然のことである。すると、日本維新の会も将来大政党となった暁には、民主制を前提にすれば、党内に多様な意見が共存することが避けられず、それらの利害を調整し、合意形成するための政党の内部統治=ガバナンスが重要になる。

現在の二大政党である民主党と自民党について、派閥政治が批判されたり、分裂騒ぎが揶揄されたりと、なかなか安定しない現実があるが、上記のような小選挙区時代の政党というところに目を凝らせば、派閥も民意を反映するための仕組みであり、分裂騒ぎも、政策を軸になされる限りは必ずしも悪いことばかりではない。とはいえ、いずれも、小選挙区時代の政党として成功しているとは言えず、政界再編が期待される所以である。

こうした既存政党でも悶絶しながら運営している大政党を一から作ろうとしている日本維新の会の挑戦は、とても困難であると言わざるを得ない。かつてのみんなの党が“政界再編の触媒”たらんとした際に「アジェンダ」と称して政策を前面に押し出し、現在の日本維新の会が「維新八策」を綱領として重視するのは、(もちろん一義的には有権者の皆さまに選択肢を分かりやすく提示するためだが、)党内の利害調整コストを低減させるため、と理解すれば、更に分かりやすいかもしれない。

3.地方分権時代の政党づくり

日本維新の会が直面しているもう一つの困難は、日本維新の会と大阪維新の会との関係であり、国会議員と地方議員との関係である。これまでの中央集権時代の“常識”では、国会議員が都道府県議会議員を束ね、都道府県議会議員が市町村議会議員を束ねる、といったように序列化され、国会内部や政党内の序列と合わせて、いわば巨大なピラミッドのように運営されてきた。

一方、日本維新の会の規約では、代表選の選挙権に関して「党所属の国会議員、首長、地方議員を含め全ての党員は、1人1票とする」と規定し、国会議員と地方議員に同等の権利を付与し、議員団同士も横並びとなっている。政党の代表者や幹事長についても国会議員ではなく地方首長となる見込みであり、これまでの“常識”からすれば驚天動地の政党組織となる。

しかし考えてもみて欲しい。統治機構を作り直し、国は外交・防衛、金融政策等に集中し、直接住民にかかわる行政サービス等は基礎自治体に、その間のインフラ整備や産業労働政策を道州が担当するとすれば、それぞれを担当する議員団がピラミッドになっていることの方が異様であり、横並びで連携・調整するのが当然であろう。当面は、権限を掌握する国が主役となろうが、あくまでも暫定的なものであり、地方に権限を取り戻すための権限掌握であると認識する必要がある。

その上で、政党組織として大事になるのは、国と基礎自治体との中間に位置する道州(関西州)であり、その中核に位置する大阪都である。近い将来、大阪に都知事や都議会議員が誕生するとすれば、彼らこそ、グローバルに展開される都市間競争を勝ち抜くための行政を担当し、そして、外交・防衛やマクロ政策を担当する国と住民サービスを担当する基礎自治体との両方に目配せしながら、橋渡しをしながら、全体調整を行う立場となるからである。

4.先進大国日本に相応しい政党組織を生み出すチャンス

日本維新の会の規約を巡っては、大阪維新の会の執行部と国会議員団との間でぎりぎりの調整が行われたと報道されているが、互いの立場に思いを馳せ、知恵を出し合いながら、小選挙区時代の、地方分権時代の新しい政党づくりに力を尽くしていただきたい。特に、国会議員団は、地方分権時代の政党は如何にあるべきか、という論点に十分思いを致し、現在の国会の“常識”に囚われることなく、新しい時代の新しい政党づくりに邁進していただきたい。

本稿で述べた2つの困難のうち、前者の小選挙区時代の政党づくりについては、現在の二大政党も手をこまねいているほど厄介な作業であるが、むしろ、後者の地方分権時代の全く新しい政党づくりを模索する中で、小選挙区制にも対応した、先進大国日本に相応しい政党組織を生み出すことが出来るかもしれない、むしろチャンスである、私はそう期待している。五十年、百年に一度あるかどうかという「維新の挑戦」である。議員だけでなく、一般の党員・支持者の皆さまとともに、壮大な挑戦を開始してまいりたい。

なお、日本維新の会の松浪健太衆議院議員が、昨日29日に開催された公開討論会に関連して「橋下独裁にはしない」と題するブログを公開している。しかし、橋下市長は、大阪維新の会の議員団が口を揃えるように、関係者の意見をよく聞くリーダーであり、そもそも独裁などという表現には該当しない。むしろ、その突出ぶりは、本稿で述べたように困難な新しい政党作りにおいて、多様な意見を束ねるためのリーダーシップと捉えるべきである。

道州制に賭けてこられた松浪議員でもあり「言うべきことは、忌憚なく言わせてもらう」のは構わないが、大阪維新の会の代表や幹事長、そして執行部の皆さんが何に腐心し、五体を投げ打って、新しい政治運動の成功に向けて汗を流してこられたか、その事実の中にしか、地方分権時代の政党づくりは完結しない。日本維新の会が直面している2つの挑戦に対し、どのように応戦していくのか、その見識と胆力こそが求められている。

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