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李明博大統領の狂気をニーチェ的に解釈する

領土問題を巡る一連のイザコザは、大体どれも予想できるリアクションだが、一つ奇妙に感じたのが、韓国の李大統領の「理解できない。」発言である。

李氏は竹島の領有問題を巡って日本が国際司法裁判所に提訴を検討する、という報告を聞いて「理解できない。」というわけだが、この発言が奇妙なのは、これが(応対する側から見て)明らかなウソであるにもかかわらず、本人がウソであると認識していないかのように見えるところで、

彼はウソをウソでないと思い込もうとしている。

なぜ、こんなことが起こってしまったのか?

まず、李氏は事前に竹島の領有を日本が主張していることを知っているので(だから、竹島に上陸した。)、日本が取りうる手段の一つとして、国際司法裁判所への提訴という手続きを検討するのは、十分に予測できたはずだ。
従って、その可能性の見積もり具合から「信じられない。」というのはウソではないが、可能性自体を捨象する「理解できない。」はあり得ない。

以上から推測すると、李氏の「理解できない」発言は何に対して、どう理解できない、といった意味内容の交換ではなく、「理解できない」と言うことで発生する(主に国内的な)効果だけを残しているように見える。

李氏の思惑では、応対者との意味内容のやり取りよりも、発言自体が引き起こす(国内的)効果を強く期待している。「理解できない」という意味内容(のウソ)は、発言が放たれた後の効果で代替される。

李氏が(応対側との)意味内容の交換を無視し、発言の効果を期待してしまう背景には、20%を切る低支持率、OECD平均(73%)を大きく下回る直近の低投票率(63%)といった要因が考えられる。
(OECDベターライフインデックスより)

つまり、発足当時CEO大統領と呼ばれ、政治への民間手法の導入が期待された李氏の実際的政治手法が限界に達し、政権不信/政治不信が極度に高まった結果、国内支持をとりつけるために、実際的政治手法以外の手段が必要になった、と説明できる。

その手段とは、国民の団結(を与えることのできる大統領)を可能にするイメージの供給で、今回の場合、そのイメージを立ち上げるために必要だったのが日本という「悪」であった。

韓国内でイメージを喚起する「日本」は明確に「悪」として、コントラストをあらわしている。
このコントラストが明示する正義のイメージが韓国内の団結を可能にする。

この「正義の構造」は正確にニーチェのいう「正義に基づく復讐」に対応している。
「彼は自分を一つの行為の行為者とみなす。彼は自分の行為のイメージに押し潰される。わたしはそれを狂気と呼ぶ。」
というツァラトストラを中島義道はこう解釈する。
一つの行為は無限の原因によって引き起こされる。だが、正義の名のもとに復讐を企てる者はその膨大な数の原因を極めて卑小なものに限定する。そのもとで、加害者を裁き、罰する。
韓国国内の団結を可能にする正義は、「日本人の悪行」の多様な原因を精査せずに、悪のイメージに全てを回収させることによって成立している。

こういった正義の構造は普遍的であり、どこの国、地域、人にも適応しうる。
彼ら、因果関係をキャンセルし正義を主張する人たちは、没自己的であり、必ず代償(報酬、報復、刑罰等)を求める。

それをニーチェはパウロのキリスト教解釈をなぞり、「奴隷道徳」と呼んだ。
「奴隷道徳」の歴史は長く、現代でもいたるところに見ることができる。

私の隣にも。

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