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日韓通貨スワップという名の韓国支援

 韓国の大統領が暑さのせいかとんでもない発言を繰り返しているせいで、日本の国民は憤っているのです。

 それはそうでしょう。これが憤らずにいられますか?

 ただ、それはそのとおりなのですが‥冷静に考えてみたら‥つまり今から20~30年前の韓国側の言動を考えると、これでも随分と穏やかになったとも言えるのです。

 だから私としては、大統領が如何なる思惑で不規則な発言を繰り返しているのかは知りませんが、これによって日韓の関係にひびが入るとまでは考える必要がないと思うのです。

 もちろん、日本人の私から言わせれば韓国の言動には余りあるものがある。但し、同時に思うことは、そうした韓国にした理由の一つは、日本側がこれまで韓国を甘やかしたことにもあると思うのです。

 例えば‥今、俄然注目を浴びている日韓通貨スワップ。

 今回の騒動で、日本国内では、この日韓通貨スワップを止めてしまえという声が大きくなっているのですが‥

 私に言わせたら、そもそも日本と韓国の間での通貨スワップの取り決め自体が茶番に思えてしようがないのです。

 いいですか? スワップというのは交換という意味であり、お互いが対等な立場にあり、それぞれの利益のために結ぶのがスワップ協定であるのです。

 どういう事かと言えば、日本もそして韓国も、共に通貨危機に晒される恐れがあるので、万が一のときに備えてそれぞれの通貨(外貨)を利用しあうことができるシステムを構築しておこうというのが、そもそもの基本的な姿であるのです。つまり、韓国にとって役に立つだけではなく、日本にとっても役に立つことが明らかな場合に締結するのが、貨スワップであるのです。

 では、基本に戻って、何故韓国は日本との間で通貨スワップを行うことが必要となったのか?

 それは、韓国は一般の日本人が想像するほど外貨事情がよくないということであるのです。日本の場合には、最近でこそ貿易収支が赤字になるようなことが発生している訳ですが、それでも経常収支は相変わらず黒字を続け、その結果対外純債権国家であるのです。

 そして、その日本を負かすほど輸出力をつけてきているのが韓国であるので、我々はつい韓国も日本同様潤沢な外貨準備を保有しているのかと思いきや、そうではないと。

 プラス、韓国には海外の投資家の短期資金(投機マネー)が大量に流れ込んでいるために、ユーロ危機などのために世界的にリスク回避の傾向が強まると、直ぐにそうした資金が海外に逃避してしまう傾向があるのです。

 つまり、韓国ほど資本逃避が起こりやすい国はない、と。そして、そうやって資本逃避が起きると、同時にウォンの暴落につながり、そうなると今度は、そうした動きを止めるために金融を引き締めざるを得なくなり、韓国経済が大混乱に陥ってしまうのです。

 ということで、一言で言えば、韓国は外貨状況が思ったほど安定していないために、絶えず資本逃避のリスクに晒されているということなのです。

 で、そうしたリスクに対処するためには、万が一のときに必要な外貨を確保できる体制を整えておくことが何としても必要だということで‥だから日韓通貨スワップ協定が結ばれているのです。

 では、そうした通貨スワップは日本にとっても必要であるのか?

 私は、日本のためにはそのような協定は全然必要でないと思うのです。何故ならば、日本は対外純債権国家であるとともに膨大な外貨準備を抱え、その上ユーロ危機などが起これば、むしろ円が安全資産として買われるような状況にあるからです。何故、そのような日本が通貨スワップを結ぶ必要があるのか?

 しかしここは、当局の意見も聞いてみることに致しましょう。
 
「日韓通貨スワップの総額700億ドルへの拡充について」(平成23年10月19日 財務省)

○ 今般、欧州情勢等グローバル経済が不安定な中、日韓両国は、金融市場の安定のため、現行の日韓通貨スワップ拡充が必要であると認識した。

○ 金融市場の安定は、日韓両国経済の安定的成長に大変重要であり、今般の日韓首脳会談での合意を踏まえ、財務省(外為特会)と韓国銀行間で、金融市場の安定を目的とした日本銀行と韓国銀行の間の円ウォン通貨スワップを補完し、金融市場の安定化を目的とする期間1年のドル・自国通貨の通貨スワップ(限度額300億ドル)を新たに締結することとした。

○ また、本日、日本銀行と韓国銀行の間で円ウォン通貨スワップの増額(限度額30億ドル相当から300億ドル相当、2012年10月末まで)が決定された。

○ 以上の拡充と、現行のチェンマイ・イニシアティブの下での財務省(外為特会)と韓国銀行間の通貨スワップ100億ドルとを併せ、日韓間で、現行の総額130億ドルから、総額700億ドルの通貨スワップの締結となる。

○ 今回の日韓通貨スワップ拡充は、日韓における金融協力の強化の観点から行うものであり、これにより、金融市場の安定が図られ、もって日韓両国経済が共に安定的に成長していくことが期待される。

  さあ如何でしょう?

 結局、韓国から資本が逃避するようなことが起き、その結果韓国経済が大混乱を来せば、それにより日本経済も相当の影響を受けることが想定される訳ですが、こうした通貨スワップを締結することによる日本のメリットというのは、あくまでも韓国を支援することによる副次的な効果に過ぎないということなのです。

 はっきり言えば、日本の直接の利益は何もない、と。

 つまり、この日韓通貨スワップという名の協定は、その名称が示唆するような性格を有するものではなく、本当は純粋の韓国支援策であるのです。もう少し言うならば、日本が韓国のために、万が一のときには700億ドル(約5兆5千億円)を融資するというクレジットラインを創設しただけなのです。

 もちろん、我が国は、その融資の見返りに韓国のウォンやウォン建ての債券などを担保に取る訳ですが、そのウォンがまさに暴落する危険をはらんでいる訳ですから、日本の融資が回収できない恐れもあるのです。

 いずれにしても、もし、日本が正式に韓国にお金を融資するのであれば‥

 ここで、皆さんのなかには、「あれれ」と思った方がいるかもしれません。

 韓国にお金を貸すとなれば、それは「円借款」ということになるのか、と。つまり、日本が韓国にODAを供与するのか、と。

 しかし、日本が円借款を供与するできる国は、開発途上の国である必要があり、韓国や中国は、もはや円借款の供与対象にはなり得ないのです。

 いいですか? 本来は、そうした理由で、幾ら韓国が困った状態に陥っていようとも、基本的には日本は韓国に融資をすることができないシステムなっているのです。しかし、この通貨スワップという仕組みを利用して、まさに脱法的に韓国に融資を行うのが日韓通貨スワップであるのです。

 要するに、そこまでして‥つまり脱法的なことまでして韓国に優しくしてきたにも拘らず、韓国の国民はそうしたことなど何も知らず‥というより、この日韓通貨スワップは、日本が過度のウォン安になると困った事態になるために、自分のためにやっているのだと報道する始末。

 私は、何も韓国を支援することが不適当だと言っているのではないのです。

 韓国で資本逃避が起きそうになったときには黙って見逃すのではなく、必要に応じてしかるべき支援があってもいいと思うのです。しかし、韓国はもはや途上国ではないために、韓国に日本が融資を行うことはできないシステムになっているのです。だったら、名前だけの通貨スワップという枠組みを利用するのではなく、ちゃんとした立法措置を講ずるべきではないのか、と。

 しかし、改めて立法措置を講ずることになれば、今度はIMFとの役割分担などが問題となり、IMFの意向に関係なく日本が韓国を支援するようなことが果たして適当なのかということになるのです。

 繰り返しますが、スワップと言えば、相互に利益がある場合にのみ使われる言葉であると思うのです。何故ならば「交換」ですから。しかし、日韓通貨スワップの実態は、「交換」ではなく一方的な「支援」であるにも拘わらず、そのことに多くの人が気が付いていないのです。

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