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【佐藤優の眼光紙背】竹島問題の対話と国際法による解決を韓国と国際社会に毅然と主張すれば、状況は日本にとって有利になる

日本大使館前のデモ隊。旗には「独島は韓国領土」の文字。(8月2日、AP/アフロ) 写真一覧
佐藤優の眼光紙背:第134回
 8月10日14時05分のMSN産経ニュースが、<韓国の李明博大統領が10日午後2時ごろ、日本固有の領土で韓国が不法占拠している島根県の竹島(韓国名・独島)を訪問した。これまで韓国の首相や閣僚の訪問はあったが、大統領の竹島入りは初めてで、日韓関係の悪化は必至だ。>と報じた。

 竹島はわが国固有の領土であるにもかかわらず、韓国によって不法占拠されている。李明博大統領だけでなく韓国の職業外交官は、日本政府には実効性のある対抗措置が取れないと、わが国家と国民を軽く見ている。

 愛国感情において、われわれ日本人が韓国人に劣るところはない。われわれにとって日本の名誉と尊厳は重要だ。ただし、近視眼的なポピュリズムに訴えることでは、日本の名誉と尊厳は保全されず、国益も増進されないと、事態を現実的かつ冷静に見ている。

 今後の1~2日間で、日本と韓国のいずれが国際世論を味方に付けることができるかということが鍵になる。筆者ならば首相官邸に対して、以下の提言を行う。

1.本件は外務官僚によって扱うことが出来る範囲を超えている。領土は国家の礎だ。日本の国家主権に関わる問題なので、首相官邸の政治主導で対処する。

2.通常の外交的な抗議に加え、本10日中に、官邸主導で武藤正敏在韓国大使を東京に呼び戻す。武藤大使は、空港から直接首相官邸に向かう。そして、野田佳彦首相と玄葉光一郎外相に、事情を報告する。

3.本日から、2週間、日本政府職員は、韓国の航空機の利用を差し控える。公務員が特定国の航空機の利用を差し控えることは、外交的に強い不快の念を示すことになる。

4.日本政府が、竹島問題を「対話と国際法」によって解決する意向を有していることを、野田首相、玄葉外相が公の場で国際社会に向けて発信する。ここで重要なのは、国際社会に竹島をめぐる紛争が、日韓両国間に客観的に存在させることを認知させることだ。日本政府は、「竹島をめぐる紛争が存在する」と主張しているのに対し、韓国はこれまで「独島(竹島に対する韓国側の呼称)をめぐる領土問題や紛争は一切存在しない」という姿勢をとっている。ここで、紛争であることを認めると韓国にとって都合が悪い状況が生じる。


 日本外務省は、その存在を強調しないが、1965年6月22日、日本と韓国の外務大臣間で交換された「紛争の解決に関する交換公文」という名の重要な外交文書がある。少し長くなるが、全文を引用しておく。

(韓国側書簡)
(訳文)
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、両国政府の代表の間で到達された次の了解を確認する光栄を有します。
 両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかつた場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図るものとする。
 本長官は、さらに、閣下が前記の了解を日本国政府に代わつて確認されることを希望する光栄を有します。
 以上を申し進めるに際し、本長官は、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十五年六月二十二日
外務部長官 李東元
日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下

(日本側書簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 本長官は、両国政府の代表の間で到達された次の了解を確認する光栄を有します。
 両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかつた場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図るものとする。
 本長官は、さらに、閣下が前記の了解を日本国政府に代わつて確認されることを希望する光栄を有します。
 本大臣は、さらに、前記の了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 以上を申し進めるに際し、本大臣は、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

千九百六十五年六月二十二日
日本国外務大臣 椎名悦三郎
大韓民国外務部長官 李東元閣下>

([出典] 日本外交主要文書・年表(2),606‐607頁.外務省条約局「条約集・昭和40年(二国間条約)」)
 竹島問題が紛争であることが国際的に認められれば、韓国は外交交渉から逃げられなくなり、日本に有利な情勢が生まれる。李明博大統領のポピュリズム的冒険が、どれだけ韓国外交にマイナスになるかを、日本政府、国会、マスメディア、有識者、国民の力を結集して、韓国に思い知らせる必要がある。(2012年8月10日脱稿)

■関連記事
李明博韓国大統領の竹島訪問に抗議して、日本政府はただちに在韓国大使を召還せよ

プロフィール

佐藤優(さとう まさる)
1960年生まれ。作家。1985年に外務省に入省後、在ロシア日本大使館勤務などを経て、1998年、国際情報局分析第一課主任分析官に就任。 2002年、鈴木宗男衆議院議員を巡る事件に絡む背任容疑で逮捕・起訴。捜査の過程や拘留中の模様を記録した著書「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞)、「獄中記」(岩波書店)が話題を呼んだ。
2009年、懲役2年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決が確定し外務省を失職。現在は作家として、日本の政治・外交問題について講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。近著に「功利主義者の読書術 (新潮文庫)」がある。

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