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男子校という選択

男子校という選択 (日経プレミアシリーズ)

男子校という選択 (日経プレミアシリーズ)

内容(「BOOK」データベースより)

「東大合格トップ10の8校は男子校」「ガリ勉は疎まれ、遊んでばかりいるのも格好悪い」「男子校の出身者はカノジョができない!?」―。共学化が進む中、中高の思春期を「男」だけで過ごす、その利点とは何か。現役教員や在校生、卒業生への取材をもとに、「男の園」を徹底解剖する。


僕自身は、高校時代、男子校しかも全寮制に通っていたので、この本、いろんなことを思い出しながら読みました。

正直、僕のなかでは、高校時代は「暗黒時代」だという気持ちがあって、もし共学の「普通の高校」に通っていたら、もう少し女性をはじめとする「他者」とうまく接することができていたんじゃないか?なんて考えることがあるんですよね。

でも、卒業して20年以上が経ち、この本を読んで、冷静になってみると、あそこで「男子だけの環境」に3年間いたことは、けっしてマイナスだけじゃなかったのかな、と思えてきました。

 平成22年度の文部科学省の調査によると、全国に高校は5116ある。うち「男子のみの学校」は135校。たったの2.6%だ。ちなみに「女子のみの学校」は343校で、男子のみの学校に比べれば2倍以上ある。公立のみで数えれば、男子のみの学校の割合はわずか0.4%にすぎない。男子校出身者は、もはや絶滅危惧種と呼ばれてもおかしくない状況なのだ。

いま、男子校は減りつづけています。

「男女共学のほうが、平等だし、自然だ」という社会の認識と、「女子にデキる生徒が多いから、大学への合格実績を上げるためには、女子を入学させたほうがいい」という、「これまで男子校だった進学校」の目論みとが、「共学化」を進めているようです。

じつは、僕の母校も、だいぶ前に「共学化」しています。

あの学校に女子も通っているのか……と考えると、なんだか不思議な気分なんですけどね。


こうして「男子校」が減りつづけている一方で、男子校には男子校のメリットがある、というデータや関係者の話を、著者は多数紹介しています。

 麻布の平秀明教諭は生徒たちをこう評している。

「男子校の生徒たちは『マニアックな集団』と言ってもいいかもしれない。男脳、女脳などといわれるが、もともと男性の脳は凝り性になりやすい仕組みなのではないかと思います。将棋やオセロに夢中になる者もいれば、数学や物理の神秘にのめり込む者もいる。もちろんスポーツや音楽に打ち込む者もいる。みんなが何らかのスペシャリティを持っており、お互いに尊敬し合っている。実は、教員にもマニアックな人たちが多いので、彼らの気持ちがよくわかるのです」

 女子の目がないので無理に男らしく振る舞う必要がない。自分の得意分野に自信を持ち、自己表現の幅が広がる。それぞれの道を堂々と極める友人を見て、多様性を認め、お互いのことを認め合う文化が育ちやすい。

 勉強以外に打ち込む「何か」が、鉄道やアマチュア無線、ゲーム、アニメ、アイドルということも多い。年頃の女子たちからは「キモい」と言われてしまいそうな分野である。しかし、男子校ではそんな心配をする必要はない。彼らは堂々と自分たちの興味や関心を追求することができる。


「男子校のほうが、マイノリティというか、マイナーな趣味の人間に優しい」というのは、たしかにそんな気がします。

共学って(といっても、共学の高校って、行ったことがないので推測です。すみません)、男子の場合は、どうしても「その趣味や特技は、女子にモテるか?」みたいな価値で判断されがちです。

スポーツが得意とか、カッコイイとか。

鉄道とかテレビゲームとか読書マニアなんていう「趣味」は、相手にされないどころか、「キモイ」なんて迫害されがちです。

それが部活やクラブ活動として認められている場合でも、「女子の視線があるなかでマイノリティとして自分の趣味を追求する」のは、なかなかつらい経験なのではないかと思います。

そういう趣味に対して、男子校は、たしかに優しいというか、「お前が好きなら、別にいいんじゃない」という「どうでもいいことを、どうでもいいままにしておいてくれる、おおらかさ」があったような気がするんですよ。


この本、男子校の関係者への取材や、男子校出身で成功している卒業生にインタビューしているので、「ああ、あんまり悪口は書けないんだな」と感じるところも少なからずあります。

男子校のすべてが「男らしさ」や「男子だけの気楽さ」で、つくられているわけでもないし。

そもそも、ここで紹介されている男子校は、みんな「名門校」であって、「実質的には男子がほとんどのヤンキー高校」みたいなのは「発走除外」となっています。

もっとも、「うちの子をヤンキー高校に入れようと思うんだけど、どうだろうか……共学のほうがいいのかしら……」と思い悩む親がそんなにいるとは思えないので、これはこれでしょうがないのかもしれません。

この本はあくまでも、「偏差値の高い大学への進学を考えている男の子の親が参考にすべき本」だと割り切って読んだほうがよさそうです。


ちなみに、これを読んでいると、「男子校や共学かよりも、入学している生徒の性質(もともと勉強ができて、親も教育熱心である)のほうが、影響が大きいのではないか?」という疑問が出てくるのですが、著者は、1998年に英国教育標準オフィスが800の男女共学および男子校・女子校で行った調査の結果では、「社会経済的背景と成績との相関関係は見られず、共学か別学かということのほうが相関関係は強かった」というのを紹介されています。


 ここまで男女共学と別学の研究結果や別学化による成功事例を紹介してきたが、これらの事例を見るうえで忘れてはならないことがある。

 男女別学では、「ただ単に男女の生徒を別の教室に押し込んでいるというわけではない」ということだ。成功事例において、担当教師の多くは男女それぞれに有効な教授法の専門のトレーニングを受けている。つまり、男女それぞれに有効な教授法というものが確立されているのだ。心理学者マイケル・グリアンが1996年に創設したグリアン協会では、これまでに4万人以上の教師の研修を行っており、その中には男女別学で教えるための専門プログラムもある。

 先に紹介したNASSPEの代表であり小児科医のレナード・サックス氏は、男女それぞれに対する関わり方で一番異なるポイントとして、「女子は励まして自信を持たせてあげる。男子は現実を見せて自分が思っているほどに自分が賢くないことを自覚させ、もっと上手にできるようにけしかけることだ」と指摘している。

 また、サックス氏は男女の脳の構造や機能の違いから、男女それぞれに応じた教え方があることを訴えている。彼の主張によれば、そもそも男性と女性とではものの見え方も聞こえ方も違うというのだ。


こういう「脳科学的な検討」が、どの程度真実なのか僕にはわかりかねます。

ただ、この本の中に出てくる名門男子校の先生たちの多くは、「やはり、男子だけの集団には、それに応じた教え方がある」と仰っており、「教える側としては、男女共学よりも、やりやすい面がある」そうです。

たしかに、より均質な集団のほうが、それに合わせた指導はしやすいのは間違いないでしょう。


僕自身は、「やっぱり男子校が良い!」とは言い切れません。

進学校だったので、「とにかく勉強ができないと、ここに来た意味がない」というプレッシャーはありましたし、僕みたいに「すぐ裸になりたがる、マッチョな世界」が好きになれない人間には、「勘弁してくれ……」という状況も少なからずあったんですけどね。

それでも、「男子校でモテない」っていうのは、「共学でモテない」よりも、はるかに気楽ではあると思います。

僕の場合、たぶん、共学でも全然モテなかったと思われますので、高校時代にそのコンプレックスの直撃を受けなかったのは、すごくプラスになっているはず。

大学に入ったら、「ああ、みんな高校でこんなにいろいろ『経験』してきていたのか……」と驚きましたし、しばらくは女子に話しかけられただけで緊張する生活になってしまいましたが……

まあ、何年かすれば、多少のコンプレックスは残っていても、それなりに適応はできるようになったので、「致命的」なものではなかったと思われます。

いまでも、「高校を舞台にしたラブコメ」は読むと「あーあ」って気分になるし、恋愛小説一般も苦手なんですけどね。

ただ、共学に行っていたらマシになっていたか?と考えると、もっと「非モテ」をこじらせていたかもしれません。

「男子だから男子校」とか「異性コミュニケーションが大事だから共学」などと短絡的に考えるのではなく、親は、わが子の適性を見極めて、本人とも十分話し合って進路を決めるべきだ。

 それでは、どんなタイプの男子が男子校向きなのだろうか。

 小学校時代から女子に対して苦手意識を持っている内気なタイプの子は男子校向きといえるかもしれない。内気で女子から人気のないタイプの男子が共学に行くと、女子に圧倒されて自信を失ってしまったり、成長の機会に恵まれない可能性がある。

 さらに、前出の中央大学・山田教授は、「モテない子が共学に行くと、惨めな思いをしてさらに異性に苦手意識を持ちかねない」と指摘している。異性との自然な交流を通してコミュニケーションスキルを磨けるはずが、女子に対する苦手意識を強めてさらに草食化することもある。その結果、同性である男子に対しても劣等感を抱いてしまう可能性もある。

 中高生のうちは、女子が男子を見るポイントはルックスやおしゃべりの楽しさなど表面的な部分に偏りがちになる。人間性を見極めて、などということはなかなか難しい。だから一部のモテる男子に人気が集中する。人間的な魅力はあっても、派手さのない内気な男子には分が悪い。


著者は、「だから、中高生のうちはあえて『勝負』を避けて、男子校で自分をしっかり磨き、女子も大人の異性選びをするようになる『大学デビュー』を目指すという手もある」と述べておられます。

なるほど……僕の場合は、結局モテないままではありましたが、それでも、高校時代から勝負しなかった、あるいはできなかったのは、結果的にはプラスになったような気がします。

「ただでさえ女子が苦手なのに、男子校なんかに行ったら、もっと苦手になってしまうのでは……」と、つい考えてしまうのですが、むしろ、「苦手なのに、中高生時代から、無理に勝負に行くほうが危険」なのかもしれないなあ……


男子校出身であり、男の子の父親である僕にとっては、なんというか、懐かしく、すごく参考になる新書でした。

ちょっと男子校を賛美しすぎな気はしますけど、「男子校もアリかもしれないな」とは思える一冊ではありますよ。

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