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階猛議員から民主党を離党しなかった理由を聞く

7月2日、「消費税増税法案に反対した衆議院議員を中心に52人の国会議員が民主党を離党」と報じられた後、「二人の議員は離党せず、民主党残留、離党議員は50人」となった。その二人の中に、小沢氏の地元岩手選出の階猛議員がいた。

小沢グループの多数の議員が民主党を離党し、新党結成に動いた矢先、小沢氏にとって、まさに自ら育てた「親衛隊」とも言える議員に離反が出たことは、グループにとっても打撃となり、階氏は「裏切り者」という激しい非難にさらされている。

私は、2009年秋の民主党への政権交代後、総務省顧問・年金業務監視委員会委員長等として、当時、同省政務官だった階氏と、多くの案件で共に仕事をした。階氏は、長銀の銀行マン出身で弁護士資格も持つ。真面目で誠実な人柄、バランス感覚に優れている。

私は、その後も顧問等として総務省の行政に関わり、何人もの政務官と共に仕事をしてきたが、歴代の政務官の中にあっても、仕事に対する熱意・姿勢、実務能力に関して高く評価できる人材だと思ってきた。

「政策」より「政局」中心の政治家のように思われがちの小沢氏が、地元岩手、お膝元で、階氏のような政治家を育てたというのは、意外だった。階氏という政治家の存在は、私にとっての小沢氏という政治家に対するイメージを少なからず変えるものでもあった。

その階氏が、民主党離党・新党立ち上げの土壇場で小沢グループから離反し、世の中からこれ程まで激しく非難される状況に追い込まれている。一体、どういうことなのか。

私は、今回、小沢氏と共に民主党を離脱しなかった理由やその経過について階氏に直接聞いてみることにした。

 

――どうして、離党を思いとどまったのか

「小沢グループ内で、消費増税に関する三党合意法案に反対しても自ら離党はせず、民主党を政権交代当時の姿に戻すための活動を続けるべきだと言い続けてきた。我々の主張を実現する最大のチャンスである代表選挙も9月にある。我々が目指してきた、政権交代可能な二大政党政治が危うくなっている今だからこそ、小沢さんには党に残って活躍してもらいたいと、本人にも直接会って必死に説得を続けてきた。結局、離党派に押し切られてしまったが、私自身は、離党せず、民主党を本来の姿に戻し、健全な二大政党政治の確立を目指そうと思った」

――それなら、どうして離党届を預けたのか

「離党届を預けなければ、小沢グループの中心メンバーから外れ、小沢さんに意見を聞いてもらいにくくなると考えたからだ。離党届は預けたが、実際に届を出す前に必ず意志確認することを文書でも申し入れた。その上で、離党せずに小沢グループへの賛同者を党内で増やしていこうと小沢さんを最後まで説得し続けたがダメだった」

――離党しなくても民主党執行部側から除籍処分を受けていたのでは

「三党合意法案の党内了承手続きに小沢グループ以外の多くの議員が異議を唱えていたので、三党合意法案に反対しても、除籍処分まではないだろうと見ていた。民主党が法案の賛否にかかる造反者を除籍処分にした例も、今までなかったはずだ」

――離党・新党結成派の人達の見方と決定的に違う点はどこか

「近々の解散総選挙を必至とみるかどうかだと思う。近日中に解散総選挙に突入するのであれば、新党で戦った方が有利かもしれないが、私は、少なくとも年内はないと考えている。現在審議中の「一票の格差」解消のための法案を成立させ、区割りを見直し、新選挙区で総選挙を行えるようになるまで、軽く半年はかかるからだ。一票の価値が一番低く違憲状態が最もひどいのが野田総理の選挙区であり、この問題を解決しないまま野田総理が解散権を行使することはありえない」

――小沢氏と袂を分かち、民主党に残って今後の政治活動の展望はあるのか

「確かに展望が明るいとは言えない。しかし、消費増税法案に賛成した議員を含め、自民、公明両党との違いが分かりにくくなってきた現在の民主党のあり方に危機感を持っている議員は多い。私は、危機感を共有する若手議員らと連携し、この難局を乗り越えるために積極的に行動していきたいと考えている」

 

階氏の言うことも、それなりに筋が通っている。結局のところ、増税法案反対の政治活動を続けていくことに関する方法論の違いが決定的だったようだ。「離党届を差し出しておいて『離党しない』というのはあり得ない」と厳しく批判されているが、階氏の説明によれば、一旦は離党届を預けたのも、「法案に反対して離党はせず」という方針で行くことを小沢グループ内で最後まで主張するためだったということだ。

最大の問題は、階氏の意見が小沢グループ内で通らないことが明らかになった時点で、グループの多数に従うか、離脱するかの選択を迫られた階氏が離脱する道を選んだことの是非だ。階氏とグループの多数とどちらの見方と戦略論が正しいかは、今後の政争の行方、政局の展開如何ということになろう。

階氏は、小沢グループの中では、「政策」中心の政治活動を行ってきた政治家であり、「税と社会保障の一体改革」法案にも、政策的観点から反対の立場をとり続けてきたのだと思う。それが、今回の事態を「政争」中心にとらえ、離党・新党結成で一気に勢力を拡大したいというグループ内の多数との方針の対立を招いたのであろう。

今後の階氏をめぐる状況は極めて厳しい。従来の小沢グループから離反し、民主党内でも孤立した状態では、従来からの「政策」中心の政治活動をするのも、それを実現するための最低限の権力基盤がない。しかも、「裏切り者」「ユダ」の汚名が容赦なく浴びせられる。

しかし、そのような厳しい状況は当然覚悟した上での行動であろう。階氏には、従来通り、執行部を批判する方向で、独自の「政策」中心の活動を続けることで信念を貫いてもらいたい。解散総選挙までの期間はそれ程長くはない。逆境の中にあっても、民主党内での今後の議論に関して、目に見える形で成果が挙げられるかどうか、民主党に残ったことの意義を示せるかどうかが、「裏切り者」の汚名を晴らせるかどうかの鍵になると言えよう。

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